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彼女はくノ一! 第五話 (100)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(100)

 スコープを覘いて、ガクが無事取り押さえられたことを確認した才賀孫子は、ライフルを分解してゴルフバッグの中に収納しはじめる。楓が何の合図もなしにいきなり乱入してきたのは気に食わないし、驚いきもしたが、ガクを保護する、という目的は達せられた形だ。
 また、ガクは、孫子のライフル弾程度は余裕で叩き落としてしまうことも以前に実証されているので、孫子がサポートに回るであろうことは、事前に予想されていたことでもあった。

 楓の介入が事態収拾の決定打となったこと、それに、他ならぬ自分自身が、結果として楓のサポート役を務めてしまったことは、心底気に食わなかったが、ほぼ新品同様となったライフルの使い心地が思ったよりも良好であったので、孫子はそれなりに満足していた。
 徳川のいった通り、重量バランスはほとんど変わっていないのに、全体に軽くなっている。実際の命中精度や耐久性などについては、もう少し手間暇をかけて試験してみないとなんともいえないが、今日、使用した感触としては、決して悪いものではない……。

 徳川篤朗、という存在は、孫子にとっても才賀にとっても、今後、重みを持つ可能性がある、と、孫子は評価する。
 今度、時間を作って徳川の工場とやらを見学して見よう……と、孫子は思った。ビデオをみたり話を聞いたりしたことはあったが、孫子自身は、まだ徳川の工場を見学していない。
 敷地はかなり広いようだから、場合によっては、資金融資をして工場内に射撃訓練のための設備を増設しても、いい……。

 そんなことを考えながら、孫子は分解したライフルをテキパキとゴルフバッグの中に収納し、狙撃場所に使用していた場所から撤退した。
 狙撃中に傘を使う訳にもいかなかったので、全身、雨に濡れていたが、通行人に怪しまれないために、帰り道は傘をさした。もともと、ここまで大降りの雨だと、足元はかなり濡れる。傘でうまく隠せば、このドレス姿でゴルフバッグを持ち歩いている不自然も、多少は糊塗できるだろう。
 そんな風に孫子は、帰路もできるだけ目立たないように工夫をこらしたつもりだったが、徒歩十分弱の家までの道程で、数えるほどしか人とすれ違わなかったし、また、そうしたたまたま行き会った人々も、雨を嫌ってか足早にすれ違うだけで、誰も孫子に注意を向けたようには見えなかった。

 帰宅した孫子は、傘を玄関にある傘立てにほうり込み、少し思案して、玄関でソックスとタイツを脱いで裸足になる。
 玄関先であんなことをして、多分、まだ誰も掃除をしていないと思うので、どのみち着替えたら一通りの掃除をするつもりだったが、そうであっても濡れたままの足で廊下を歩くのには、孫子には抵抗があった。
 玄関マットで丁寧に足を拭い、自室に向かう。
 自室で下着まで含めて着替えを行い、脱いだ衣服を風呂場まで持っていく。洗濯機は脱衣所にあり、そこに一度の洗い物を集積してから洗濯をする、という習慣ができていた。
 それから、そろそろ夕方にさしかかる時刻だったので、孫子は、冷蔵庫の在庫を確認するために台所に向かった。場合によっては、買い出しに行く必要があり、そうであれば、荷物持ちという名目で香也を引っ張り出そう……というのが、孫子の目論みである。

 そして孫子は、台所で、食べ物の残骸にまみれるようにして熟睡している香也を発見した。
 昼寝が悪いとは思わないが……この時期、こんなところで寝ていると、かなり高い確率で風邪を引く……。
 と、思った孫子は、すぐに香也を起こそうと、香也の体に手をかけ……手遅れであることを、悟った。
 香也の体は、高熱を発していた。

 ぐるぐる巻になった鎖から解放され、ガクの身柄はテンがかついで出て行った。楓も、すぐにその後を追う。二宮舎人に指摘された通り、白昼にそのまま町中を歩き続ける格好ではなかったので、一度家に帰るつもりだった。
 ただ、「顔を隠して」とわざわざ指定してきたのは茅であり、また、新たな問題が発生している可能性もあったので、楓は、家へ向かいながら、念のために茅に電話をかけた。
『……今のところ、楓の力が必要な局面はないの……』
 楓が「このまま帰宅してもかまわないか?」と確認すると、珍しく茅は少し考えてから返答した。
 茅は、なにか問いかければ、即答をする癖がある。たいていは、いっそ素っ気ないほどに短い、端的な言葉で答える……の、だが、この時ばかりは、何故か、答えが返ってくるまで、何秒かの間があった。
『その代わり……今夜か、明日あたり……詳しい話し合いが、あるかもしれないの……』
 茅は、そういった後、しばらくは、できるだけ自由に動ける時間を出来る限り増やすように、と、いった。
 ……なにか、楓がまだ知らないところで、いろいろな動きがあったようだ……と、楓は思った。しかし、この時点では、楓は、学校での出来事や、商店街へのガス弾の投擲などの情報を知らされていない。
 だから、茅が数秒、楓に何かを告げようとして、結局その時点では、何も伝えなかったことを……あまり、深刻に受け取らなかった。
 その代わり楓は、深刻、かつ真剣になる事態に、帰宅直後、遭遇することになる。

「……でー!」
 帰宅後、楓は、廊下で孫子と遭遇した。
 孫子は、ぐったりとした香也を両手で抱えている。
「ひ、人の留守中にまた何をしようとしますかこの女は!」
「風邪!」
 取り乱しかけた楓を、孫子が一喝する。
「台所に倒れていたのを、見つけたところです……。 静かになさい、このお馬鹿くノ一……」
 いわれてみれば……香也の頬は、朱に染まっている。呼吸音も、いつもよりうるさい……。
「……ふ、布団を……」
「その前に着替えて、ちゃんと体を拭いてきなさい。濡れた体のままで、病人に接する人がありますか……」
 楓は、こくこくと頷いて、飛ぶような勢いで、自室に戻って行く。
『……まったく……』
 孫子は軽く眉を顰めて、香也の体を香也の部屋に運び込む。
 一度、畳の上に香也の体を横たえ、布団を敷く。そして、香也のパジャマを出して、香也の服に手をかける。
『……い……いいのよ、ね……このまま寝かせるわけにも……』
 とか、心中で自己弁護しながら、香也の服を脱がせる。
 そして即座に、タオルを持ってこなかったことを後悔する。
 香也の体は……予想以上に、汗で濡れていた。
『……思った以上に……』
 体温が、高くなっているらしい……。
 香也の額に手をあてた孫子は、すぐにその手をひっこめる。
 熱い。
『……タオルと、体温計と、氷枕と……』
 香也は、予想以上に高温を発している。おそらく、インフルエンザ、だろうとは思うけど……。
『あと……後で、三島先生にでも……』
 あれでも、医師免許は持っているらしい。何かの足しにはなるだろう。

 そんなことを思っているうちに、着替えた楓が香也の部屋にやってくる。
 孫子と同じく、香也の容体が想像以上に悪いのにすぐ気づき、またあたふたしかけるのを孫子が鎮め、テキパキと指示を飛ばして、二人で分担して必要なものを用意する。

[つづき]
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