2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

彼女はくノ一! 第五話 (101)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(101)

 楓と孫子が香也の看病の準備を慌ただしく開始したのとほぼ同時刻。

 一旦、商店街に駆けつけたものの、結局やることがなかった生徒たちは、そのまま直に自宅に帰る者と、一旦学校に戻る者とに二分された。前者は、商店街から学校に戻るとかなり遠回りの帰宅になる生徒が多く、後者は、方向的に、学校に寄ってもさして影響がない生徒が多い。
 柏あんなと堺雅史は、後者の、「一度学校に帰る」ことを選択した組で、理由は、やはり、家へ帰る途中に学校があったからだった。
「ぼく……なんか、いろいろありすぎて、頭が……整理、つかないよ……」
 学校へ帰る途上、堺雅史が柏あんなに語りかける。
「同感……だけど……」
 柏あんなは、釈然としない表情で堺雅史に答えた。
「やっぱ、なんか……変な感じ……」
 いろいろと……納得できないらしい。
 納得できない……と、いうよりも……。
『校庭での……加納先輩……』
 人間離れしていた……と、思う。
 長年、空手をやってきた柏あんなは、それだけ、「普通の人間の身体で可能な動き」という限界について、他の同級生たちより、リアルに感じることができる。また、あのスピードとパワーを持つ存在に襲いかかられた時の破壊力についても……かなりの実感を持って、想像することができた。
 背筋に悪寒を感じた柏あんなは、身震いする。
『……怖い……』
 素直に、そう思う。
 以前、同人誌作りの手伝いにいった時……それは、荒野たちとの初めて対面した時、でもあるのだが……柏あんなの姉、柏千鶴は、「その場にいる人の中で、荒野が一番強い」ということを冗談紛れにいっていたことがあったが……その時は、話半分に聞き流していた。
 あの時の千鶴の見立てが、今になって実感を伴ってくる……。
 あの時、千鶴は、「武道に熟練している人たちの、五倍くらい」と荒野の強さを見立てていたが……それどころでは、ないような気がする……。
「嘘をついていた……身元を隠していたことには、しょうがないと思うけど……」
 柏あんなは、震える声で、堺雅史にいう。
 あんなとて、初対面から「おれ、ニンジャの子孫なんです」と自己紹介されたとしたら、かなり対応に困る。だから、そのあたりのことについて嘘をついていたのは、仕方がないことだ……と、柏あんなも、理解している。
「でも……あんなの……人間業じゃ……ない……」
 一度震えはじると、震えは大きくなる一方で、柏あんなは、ガクガクと歯を合わせる。
「それは、否定しないけど……あれを見た後では、否定できないけど……」
 堺雅史は、柏あんなの、傘をさしているほうの手を、握った。
「でも、加納さん……こちらの、ぼくたちのような、平凡な生活をしようとしていたし……それを、素直に楽しんでいたと、思う……。
 本当は、あの人も……。
 今の生活を、誰にも、邪魔されたくはなかったんじゃないかな……」
「わかってる……わかってるの……でも……」
 柏あんなは、弱々しく呟く。
「でも……恐い……」

 出たときの半分くらいの人数が、実習室に帰ってきた。
 黒板には茅が説明をする時に書いた字がまだ消されずに残っていた。大清水先生は、職員室に帰ってのか、姿は見えない。後ろの方に縛られて転がっているままの人たちがいなければ、あのようなことがあったとは思えない……いつもと同じ、実習室だった。
 結局、茅の説明も開始してからいくらもしないうちに中断された恰好で、詳しいことは聞いていない。ニンジャの中には反目し合いながらも緩やかに共存する六つの血族集団があり、荒野はその中の一つ「加納」の、次世代の指導者と目されている……本人の自覚はともかく、周囲には、そのようにに認識されている……というところまでは、柏あんなにも、辛うじて理解できた。
 校庭に来たのも、あの、「さくまげんしょう」とか名乗って実習室に乗り込んできた子も……その、六つの血族集団とやらの関係者で……荒野と、敵対する立場のものなのだろうか……。
 なんだが、マンガやラノベのノリを地でいくような話しだ……と、思いつく。
 柏あんなは突然、笑いの発作に襲われ、その場で盛大に吹き出してしまうところを、あやうく自制する。
 冗談みたいだろうが、なんだろうが……今日、荒野が、校庭で演じたのは、あんな自身がこの目で見た現実だ。
「……おい、これ、見ろよ……」
「なんだ? さっきいった、電気屋さんの事務所じゃないか、これ……」
 生徒たちが、つけっぱなしになっていてパソコンの画面を指さして、そんな風にざわめいている。
 柏あんなと堺雅史は、顔を見合わせてから、人垣の後ろから画面を見つめた。

「では、次の問題……有働君から、学校でのことは一通り聞いたけど……。
 今後……君達、どうするの?」
「どうするって……おれは、できれば残りたいと思っているけど……こんな騒ぎが起こったんじゃ……」
「逆に、玉木に聞きたいけど……さっきのガスな。
 いろいろな幸運が重なって、今日はたまたま、たいした被害がでなかったけど……あれ、テロだぞ。
 今度のやつらは……無関係の人々を、平気で巻き込むっていうことで……。
 おれたちがこの土地から去れば、少なくとも、君たちには危害は及ばない……」
「……でも……。
 それは……根本的な解決には、ならないのです……」  
 荒野、茅、玉木、有働、徳川の五人が、椅子に座って話し合っている。
 中心になって話しているのは荒野で、後の連中が、時折口を挟む、といった形だった。

『……テロ……』
 商店街で起こっていた騒ぎについて予備知識のないあんなは、首を傾げた。
「……あんなちゃん、こっちこっち……」
 堺雅史が、別の画面を指さす。

 そこには……ゴスロリ・ファッションの女たちと非現実的な戦いを行っている、アニメかなにかから抜け出してきたような、銀ピカの装備を身に付けた子供たち……その子供たちの一人が、手にしていた棒で、空を指さす……そこから、煙を吐きながら落下してくる物体……その物体が落下した箇所から、もうもうと白い煙が充満する様子……一人だけ残された、銀ピカの子……必死の形相で飛び込んでいく、荒野……子供を抱えて煙から出て、そのまま煙を吐く物体を抱えて何処かに姿を消す荒野……が、映っていた。
 別の画面には、先ほど、銀色の子供たちと乱闘をしていた女たちが、煙の塊をパスしながら持ち去っていく様子とか……それに、どこかの屋上で、先ほど、荒野に救われていた子供が暴れていて、見覚えのある校庭を襲った人たちとか、銀ピカの片割れとか……初めて出てくる、赤覆面のニンジャ……それも、体のラインから見て、どうも女性らしい……などが、総出で取り押さえる様子が、映っている……。
 ヘルメットが脱げていたのではじめて顔が確認できたが……暴れていた子供は……あんなも面識がある、ガクという子で……だとすれば、もう一人の銀ピカは、ノリかテンだろう……。

「加納さん……校庭での騒ぎのすぐ後で……こんなこと、やってたんだ……」
 あんなのすぐ横で、堺雅史がそんな声を出す。
 感心している、というより、呆れた……といった、口調だった。
 それぞれの画面の隅に、時刻を現すデジタル数字が表示されていた。その時刻が正確であるとするのなら……堺雅史や柏あんなたちが商店街に向かっていた、時刻の出来事だった。
 つまり……こういうことが起こったら……茅は説明を中断し、慌てて出て行ったわけか……。

「分かっている……。
 でも、おれたちがここにいることで……無関係の人々に累が及ぶのは……どう考えても、間違っている……。
 なあ、玉木……例えば、今日みたいなことが……頻繁に、日常茶飯事にあったら……玉木たちも、困るんじゃないのか……」
「うん。困る。
 でも、今日のって……別に、カッコいい荒野君が、望んで起こしたことではないでしょ?
 一族の人たち、あんなに一生懸命、被害の拡大を阻止してくれたし……」
「……一族は、忍だ……。
 自分たちの存在が公になりそうになったら、それを阻止する為に動く……」

[つづき]
目次

有名ブログランキング

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
newvel ranking  HONなび


↓このblogはこんなランキングにも参加しています。 [そのじゅういち]
アダルトサーチエンジンA エログランキング一番街 サーチデアダルト アダルト屋.COM えっちblogランキング Sexy Queen ランキング ぬるぬるナビ アダルトサーチ E-SEARCH ADULT 女神information 早抜きサーチ

Comments

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ