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彼女はくノ一! 第五話 (102)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(102)

 銀ピカの子供たちの乱闘と、暴走したその片割れを取り押さえるシーンは別の角度からみた映像が、繰り返し、流されていた。どれも遠くから望遠で撮影した物らしく、画質が粗い。
 そうしたシーンと平行して、電気屋さんの事務室の風景も音声つきで流れている。話しの内容から判断して、こちらは、リアルタイムの中継のようだ。
 加納荒野を取り囲んで、その他の人たちが、このままどこかに姿を消しそうな荒野を引き留めている……というのが、彼らの会話の概略だった。
 会話はいつしか脱線して、ヒーローの定義とか今後のパワーアップ装備のコンセプトとかを審議する内容に変わっている。はしゃいでいるのは玉木と徳川の二人だが、意外なことに加納茅も、時として強硬な主張をぽん、と、いったりする。
 どうやら、あれでヒーロー物には、一言家あるらしい……。
 その輪の中に入れない有働は、困ったような顔をして、彼らをみている。
 荒野は断線が本格化したのをみると、部屋の隅にいってどこかに電話をかけはじめた。それから荒野は、その場にいたみんなに「帰って休む」といいだし、徳川がタクシーを呼んだ。商店街から荒野のマンションまでは、遠すぎるという距離ではないが、相変わらず強い雨がふっていることと、それに、現在の荒野が、まるで似合わない、やぼったくてぶかぶかの、灰色のスウェットスーツを着ていることを、哀れんだのだろう……。
 タクシーはすぐに到着し、荒野は裏口から姿を消した。

「……どうもっす……」
 見覚えのある、少年たちが、遠慮がちに頭を下げながら、実習室にはいってきた。
「ここいらに寝っ転がっているやつら、回収しに来ました……」
 校庭で荒野にやりこめられ、その後、大清水先生によって、実習室の後ろに正座をさせられていた連中だった。
 流石に多少の学習能力はあるらしく、全員、靴を履いておらず、足元は靴下だった。
「……あれ、あれあれ?
 やだなぁ……。
 これ、撮影していたんですか?」
 少年たちは、パソコンの画面に映し出されている映像に気づき、騒ぎはじめる。
「うわー……やばいな、これは……。
 目撃者がでるのはしかたがないとは思っていたけど……まさか、こんなにしっかり撮影されているとは……。
 ね、この映像、ネットに流れているんですか?」
 少年たちの一人が、頭を掻きながら、手近にいた生徒に、そう声をかける。
「……えーと、どうだろ……」
「徳川に聞いてみれば? 誰か、あいつの番号かメアドもってないか?」
「……ちょい待ち!」
 斎藤遥が騒ぎはじめた生徒たちを制止して、マイクのスイッチを入れる。
「……あー、こちら実習室。
 徳川さん、聞こえてますか?」
『……聞こえているのだ』
 映像の中の徳川も、マイクの前に座り込む。
『こちらの様子は、そちらでもちゃんと把握できたかね?』
「ばっちりです。
 ……って、ことは、ぶちゃけこれ、徳川さんの仕込みですか? やっぱり。
 加納先輩が、周囲を巻き込むのを恐れていつ姿を消してもおかしくない状況だということは、把握しました……」
『ぶっちゃけ、ぼくの仕込みなのだ。
 百聞は一見にしかず。商店街での出来事と、加納の思惑を説明する手間が、これで省けたのだ』
「で、加納先輩はこっちに中継されていたことを、知らない、と……。
 あ。そこに茅さんが残っているけど……こういう話し、大丈夫ですか?」
『大丈夫なの』
 画面の中で、茅が、徳川の背後に移動して来た。
『ここにいる人達は、全員、荒野を引き留めようとしているの……』
「あ。あと、徳川さん。
 こっちにいるニンジャの皆様が、この映像のこと気にしていますけど……。
 ネットに流しているのかどうかって……」
『まだ、実習室のIPアドレスにだけ、開放している状態なのだ』
「まだ……って、ことは、いずれ流すってことですか?
 それ、やばいっすよ……」
 斎藤遥の後ろから、それまで控えていた一族の少年が前に進み出し、大きな声でいう。
『……一族の者、とやらかね……。
 やばかったらどうする? この場にいる全員の口封じをした上、その他の目撃者も一人一人をしらみつぶしに探しだし、さらにその上、この映像データまで破壊するかね? 今回、場所が場所だから、目撃者はかなり多いと思うが……。
 今更対応しようとしても、遅いのだ、手遅れなのだ、不可能なのだ! 特に、最後のが!
 この徳川の作ったシステムは、そうそうクラッキングできるないようにしてあるのだ!』
『……茅や楓も、システムの構築には手を貸しているの』
『そうなのだ。この三人が構築したシステムは……堅固だぞぉ……。
 そうそう破れはしないのだ!』
「い……いや、そういうことではなくて、ですね……」
 無意味に偉そうな徳川の態度に、思わず引き気味になる少年。
『心配には及ばないのだ。
 ネットで流す時は、「怪傑! シルバーガールズ!」の一シーンとして使用するだけなのだ!』
「それ、ネーミングセンス、最低っすよ!
 じゃ、なくてですね……」
『いいか、よく考えるのだ……。
 場所が場所、駅前商店街の近辺で、あんなことがあったのだ。目撃者は、かなり出ている。
 あれは、商店街企画の、プロモーションビデオの撮影だった、という規制事実を後付けででっちあげてしまう方が、まだしも、説明しやすいのだ……。
 また、そういうノリなら、どんな突飛な映像が組み込まれても、合成とかCGだと思うだけなのだ。
 それに、今後何かあったときも、撮影です、とごまかしやすくなるのだ……』
「……そ、そういうもんすか?」
『……ちょうどいい。
 あの二人と立ち回れる便利なエキセトラだ必要なところだったのだ。そこにつっ立っている何人か、連絡先をおいて行くのだ。
 なに、全身黒タイツ着て「いー!」と叫んであの二人にいいようにどつかれていればいいだけなので、演技経験は全く必要ないのだ……』
「おれら、戦闘員役っすか!」
 ろくに面識もない人間にこうしたことを頼める徳川篤朗の精神構造は、その少年には理解しがたかった。
「いいようにこき使ってやるから、光栄に思え」とでもいわんばかりの、徳川の口吻だ。
 別の少年が肩を叩いて、「まともに相手をするな」というように首を振る。
「えー。連絡先は、お教えできません。映像の件に関しては、加納荒野に一任します。じゃあ、おれらは、こいつら回収して、撤退しますので……」
 結局、一番無難な、荒野に判断を預ける、という意思表示をしただけで、少年たちは気絶したままの仲間たちを回収して、実習室から出て行った。

「……徳川さんとか玉木さんがからむと、どんなに深刻な問題も、冗談と化しますよね……」
 少年たちが出て行くと、斎藤遥が、ぽつりと感想を漏らすと、その場にいた全員が、うんうんとうなずいた。
『ん? ぼくは、極めて真面目に交渉したつもりなのだが……』
 画面の中の徳川は、斎藤遥の感想に対して、そうコメントする。
「はいはい……。
 で、途中で邪魔が入りましたけど……で、どうするんですか、加納先輩の件は……」
『どうもこいうもない。
 敵への対処は加納の領分だが……学校側の受け入れ態勢を整えるのは、ここにいる人間の仕事なのだ。
 生徒たちに、必要以上に反発されている、となると……加納は、おそらく、簡単に、ここから姿を消すのだ。
 まずは、何度か説明会を開いて、生徒たちに理解を求めたいと思っているのだが……』
『早ければ早いほどいいですね……。
 資料は、ぼくのほうの手持ちのものと、それに、今日の映像資料があれば、かなりいいプレゼンテーションができると思います……』
 今度は、有働勇作が徳川のマイクを奪う。
『急ですが……できれば明日か、明後日あたり……学校の、視聴覚室の使用許可を取ってほしいのですが……』
「聞いた? 誰か、職員室にいって、打診してきて……」
 斎藤遥が振り返ってそういうと、二、三人の男子生徒が廊下に出て行った。
「今、放送部員が許可を取りに行きました。
 首尾よく許可が取れたら……今度は、人集めですが……」
『茅と楓が、ボランティア活動用に組んだシステムがあるの……』
 茅が、有働の手の中にあるマイクに向かって、説明しはじめる。
『あれを使えば……登録してあるメールに、簡単に同報メールが送信できるの……』
「はい。
 では、そっちの手配は、こっちでやっておきます。 そちらは、説明会のプロモーションの準備を、お願いします……」
 そういって、斎藤遥はマイクのスイッチを切る。
「……ということで、協力してくれる人は、今後も手伝ってください……」
 斎藤遥は、背後に振り返って、深々とお辞儀した。
「それは、いいけど……」
 柏あんなが、斎藤遥に声をかける。二人は、クラスが違うこともあって、頻繁に会っているわけでもなかったが、顔と名前くらいは知っている……という程度には知り合いである。
「斎藤さん……その、恐くない?」
「恐い……っていうより……。
 うーん……なんだろ?
 全然、別物……だなぁ……。
 校庭での加納先輩……あのくらい掛け離れていると、なんか……わたしたちと、まともに比較するのも馬鹿らしいかなぁ……って……。
 あんなに強くて、その癖、変に腰が低いというか……みんなに恐がられることを、病的に恐がっている……人、ですよね。
 加納先輩って……」

[つづき]
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