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彼女はくノ一! 第五話 (106)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(106)

「話を戻しますが……ぼくらが明日の説明会でアピールする層は、さっきいっていたうちの、二番目と三番目のグループになります……」
 有働勇作の言葉に、荒野は頷く。
 荒野たちの顔と名前はそれなりに知っているが、今までの時点で、あまり接触がなかった人たちに……というのは、納得ができる。
「……まあ……そういうのがどこまで効果あるのかわからないけど……やるだけ、やってみるか……」
 今の時点で荒野が考慮しなければならないのは、大きく分けて二点。一つは地元住民の反感を買わないようにすること。もう一つは、一族関係からの干渉を抑止すること。
 後者に関しては、涼治の仲介によって、荒野たちは佐久間の長と会食する予定になっている。そこには「他のゲスト」も居合わせるということだから、六主家の中枢に近い、影響力の大きい人物も何人か集まって来るのだろう。
 そこでの交渉次第では、今後の干渉をかなりセーブできる……筈だ……と、荒野は思っている。
「……ええ。
 ぼくも、楽観はしていませんが……やれるだけのことは、しておきたいと思います……」
 有働も、荒野にそう頷いた。
 有働は悲観していっているのではない。
「最善は尽くすが、結果は実際にやってみなければわからない」という慎重さを、持っているだけだ。
 以前、有働は「差別感情は、人間が人間であるかぎり、なくならない」といっていた。有働がどこでそういう発想を培ってきたのか荒野には不明だったが……そういう認識をもっているからこそ、有働は、今後増大すると予測される、有形無形の荒野たちへのプレッシャーを、軽減しようとしている……。
「有働君とかカッコいい荒野君は、シリアスに考え過ぎなんだよぉ……。
 今時、そんなシリアス一辺倒なのは、はやらないぞ!」
 玉木珠美は、笑い声を上げながら、荒野たちの不安を軽く一蹴する。
「……斎藤ちゃんもいってたけど、カッコいい荒野君、隠れファン多いし……ソンシちゃんや茅ちゃん、楓ちゃんも含めて、どちらかっていうと、好感度大なんだから……案ずるより産むが易し、さ!
 秘密のひとつや二つあったほうが、キャラもたつし……」
「……なんだよ、キャラって……」
 荒野は、情けない声をだしてぼやいた。
「加納先輩……このルックスで、謎の転校生、その実、ニンジャの子孫……。
 キャラ的には、無敵状態ですよね……」
 斎藤遥も、玉木に追従する。
「だから、キャラ的に無敵状態って、一体どういう状態だよ!」
 何故だか漠然とした不安に襲われた荒野が、小さく叫ぶ。
「まま……カッコいいこーや君……」
 羽生譲がそういって、荒野の肩をピタピタ叩く。
「今の世の中、どんな形であれ、受けないよりは受けた方がいいんだから……」
「なあ、おにーさん……カッコいいじゃないか、ニンジャ……」
 飯島舞花も箸を動かしながら無責任に言い放つ。
「だから……そう気軽に人のこと、ニンジャニンジャっていうなよ……」
 人前で気軽にそう連呼されると、その語感から連想する通俗的なイメージを押し付けられているようで、なんだか馬鹿にされているような気がしてくる……。
 いや、確実に、からかってはいるのだろうが……。

「……そういや、こっちの狩野君は、このこと、知ってたの? 正体とかなんとか……」
 柏あんなは、加納荒野ではなく、狩野香也の方に話を振って来る。
「……んー……」
 香也はひとしきり唸ると、テォッシュの箱を引き寄せて盛大に鼻をかんだ。風邪を引いている以上、出るものは出る。
「……一応、聞いていることは聞いていたけど……。
 そんなに大したことだとは、思ってなかった……。
 正体がなんだろうと、加納君は加納君だし、楓ちゃんは楓ちゃんだし……」
「……あ。そ……」
 赤い鼻をしながらのほほんと答える香也を見て、柏あんなは、自分がひどくささいな事を上げつらって気にし過ぎているのではないか……と、馬鹿らしく思えてきた。
「あんなちゃん……狩野君のいう通り……気にし過ぎても、しょうがないよ……」
 あんなの隣に座る堺雅史も、そう耳打ちする。
「悪い人たちではないってことだけは、確かなんだし……」
 柏あんなは、周囲を見渡した。
 真面目な話をしていたのは最初のうちだけで、今では宴たけなわ。有働勇作と荒野だけが、明日の説明会の段取りについて真面目に語り合っているが、玉木と斎藤遥、それに飯島舞花の三人は、
「この中で一番の萌えキャラは誰か?」
 などというしょーもない議論に熱中している。
 狩野香也は左右に楓と孫子をはべらせて、羞恥ではなく風邪のせいで赤い顔をしている。
 三島百合香と徳川篤朗は、鍋の味付けについてディープな意見を交わしている。
 茅は、横になった徳川浅黄の体にかける毛布を持ってきた所だった。浅黄の横には、太った黒猫が体を丸めて寝息を立てている。
 今、羽生譲がやおら立ち上がって、
「一番! 羽生譲、脱ぎます!」
 と宣言する。顔が赤いのは、酒が入っているせいだろう。
「……おー!」
 と歓声をあげ、拍手する者、止めようとする者、反応はまちまちだった。一緒になって拍手していた栗田精一が、飯島舞花に耳を引っ張られている。
 羽生譲が「たんたらたんたんっ、たんたーん……」とタブーのテーマを口づさみながら踊りだすと、
「二番! 三島百合香、脱ぎます!」
 と挙手しながら、三島までもが羽生と一緒に踊りはじめた。
 こちらは、羽生譲の時よりは、反応が薄い。
 小学生体型の三島が脱いでも、毒にも薬にもならないとその場にいる全員が分かっているので、誰も本気で止めようとはしていなかった。
「三番! 松島楓! 脱ぎます!」
 この一言は、女性陣にさまざまな波紋を呼んだ。みれば、楓の顔が赤い。いつの間にか、誰かにアルコールを盛られたらしかった。
 真っ先に動いたのは、才賀孫子、柏あんな、そして、加納茅だった。
 孫子とあんなが楓を羽交い締めにする間に、いつの間にか、楓の背後に回っていた茅が、楓の首に、どこからか取り出した針を突き立てる。
 すると楓のもがいていた楓の体から、いきなり力が抜けてぐったりとなった。
「……あの胸を、こんなに大勢の前でみせつけられてたまるもんですか……」
 楓を羽交い締めしている最中、孫子が小さな声でそうつぶやくのを、あんなは聞き逃さなかった。あんなは、孫子の一言に深く共感した。
 目を丸くして見物していた人々が、あっという間に楓を制した三人の手際のよさに感嘆し、拍手を送る。

「……楓ちゃん、大丈夫?」
 斎藤遥だけが、いきなり動かなくなった楓の身を案じている。
「針が刺さっている間だけ、自分の意志でうごけないの。針を抜けば、もとどおりになるの」
 加納茅は平然とそう答えて、炬燵の中に足をいれた。

「まあ、確かに……。
 本当に悪いことを考えているようには……見えないけど……」
 同じように堺雅史の隣の席に戻ってきた柏あんなは、何事もなかったように、そう呟いた。
「……あ、あんなちゃん……」
 堺雅史は「さっきの行動が、一番邪悪に見えます」とは、口が避けてもいえなかった。なにしろ柏あんなは、幼少時から空手を習っている。加えて、あんなの幼なじみでもある雅史は、あんながキレた時の怖さも、十分に承知していた。
 世の中、言わぬが花、ということもあるのだった。

[つづき]
目次

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Comments

>ソンシちゃんや茅ちゃん、楓得ちゃんも含めて、どちらかっていうと、高感度大なんだから……

楓、トク(徳川)ちゃんかと一瞬思いました。
高感度大って、スゲェ感度がいいみたいですね。茅はそんな話も出てましたが。

  • 2006/08/01(Tue) 21:38 
  • URL 
  • 楓得ちゃん #-
  • [edit]

Eの打ちすぎ

>楓得ちゃん
たぶん「kaedee」ちゃんとか打ったんだと思われ。修正しました。
>高感度大って、スゲェ感度がいいみたいですね。茅はそんな話も出てましたが。
わはは。
基本的に、感度がいい女の子しか出せないでしょう、エロ系は。
ともあれ、ご指摘ありがとうおございました。

  • 2006/08/03(Thu) 23:11 
  • URL 
  • 浦寧子 #-
  • [edit]

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