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彼女はくノ一! 第五話 (107)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(107)

 打ち合わせを兼ねた夕食がなんだか分からないうちに宴会になだれ込んだあたりで、風邪をひいていた香也はにぎやかな居間を出て自室に戻った。どうせ寝るだけ、ではあるが、ひきはじめの症状が軽いうちに直しておきたい。今日の午前中で、香也は様々なモチーフを拾っており、早く回復して、それを紙に定着しておきたかった。
『……ゴミ、かぁ……』
 打ち捨てられ、誰にも顧みられなくなった生活必需品が堆積すると……そことはない、迫力を産む……ということを、楓に傘を差しかけられてスケッチをした香也は、今日、初めて知った。
『あの時に……感じたことは……』
 写真やビデオでは、表現できないだろう……とも、思う。
 香也は寝る前に、午前中に書いたスケッチを見ておこうと思い立ち、今日、使用していたスケッチブックを手にとって、布団の中に足を突っ込み、ぱらぱらとページをめくる。
『こう……じゃあ、ないんだよなぁ……』
 自分のスケッチをみて、そんな印象を持つ。
 あの時は、雨が降ってきたし、時間もおしていたし……たまたま目についたところをざっざと描いてみせただけで……。
 このスケッチを元にして、絵を描いても……香也自身を満足させる完成品には、どうもなりそうもない……。
『もっと……』
 香也はスケッチブックを枕元にほうり出し、布団に寝そべって、目を閉じる。
 描く対象をしっかり見据えて、何でそんなゴミの山に、自分がひっかかりを覚えるのか……よくよく、考えてみなければならない。
『……そのためには……』
 早く元気になって、有働さんに、もっといろいろな場所を教えてもらわなければならない……。そして、自分の足で存分に歩き回って……それから、キャンパスに、向かおう。
 香也の場合……実際に指を動かして描いてみないことには、思考がまとまらない……という面がある。

 香也は一度起き上がって電灯を消し、布団の中に潜り込んだ。昼間から寝ているから、眠気は全然なかったが……それでも、目を瞑って、休養に努めた。

「明日の説明会で使用する資料を整理する」
 といって、まず最初に玉木と有働が腰を上げた。
 すると、斎藤遥かも、
「あ。わたしも……あんまり遅くなるとやばいから……。
 今日はどうも御馳走様でした。楽しかったです。また明日……」
 と、腰をあげ、一礼する。
 斎藤遥は、一度商店街の近くまで玉木を送った後、有働が家まで送って行くことになった。有働の家と斎藤の家は、近所、というわけではなかっらが、ここからだと方向的には一緒らしい。

 三人が帰ったのを期に、後片付けの雰囲気になり、今日は準備を手伝わなかった楓と孫子、茅の三人が、食器を集め、台所に持っていく。
 飯島舞花と栗田精一、柏あんなと堺雅史も、それに、三島百合香も、前後して帰って行った。

「この子たち……熟睡しているね……」
 羽生譲が、炬燵に入って毛布を被ったまま、寄り添うようにして寝息を立てている徳川浅黄と黒猫をみて、いった。
「おい、トクツーくん……。
 起こすのも可愛そうだから、このまま泊めても、うちの方はかまわないけど……」
「……荒野。浅黄、うちに……」
 すかさず、荒野に何事か訴えようとする茅の言葉を、荒野は制した。
「いつもなら問題ないんだけど……今日は、招かれざる客がいるからなぁ……。
 あいつと浅黄ちゃんを一緒に泊めるのは……ちょっと、あれだろ……」
「……なんだ、カッコいいこーや君ところ、お客さん連れてきているのか……。一緒に連れてきたらよかったのに……」
「いやいや。お客さん、なんて上等な者ではありません。
 それに、最低限の餌は置いてきてますので、お気になさらず……。
 っていうか、こっちに連れてきたらまたなにかやらかさないか心配だったから、向こうに置いてきた訳で……」
「なんだかよく分からないけど……躾のできてないペットでも、預かっているんか?」
「似たようなもんですね……。
 で、茅。
 浅黄ちゃんと一緒にいたかったら、今日はこっちに泊まらせてもらうんだな……」
 と、荒野は、炬燵を指す。
「羽生さん、別に構いませんよね……」
「ああ……別に、いいけど……。
 ってことは、カッコいいこーや君は、向こうに帰るのか?」
「ええ。
 今夜一晩、躾のできてない獰猛なのを預かっているもんで……あまり長いこと、目を離す訳にはないんです……」
 そういって、荒野も茅を置いて帰って行く。
 茅は、台所にいる楓に聞いて、自分用の布団を取りにいった。
 徳川篤朗も、白衣のポケットから取り出した猫缶を取り出して羽生譲に手渡し、
「明日の午前中には、浅黄を取りにくるのだ……」
 といって帰って行く。

 ……なんだか個性的な子ばかり集まったなあ……と、羽生譲は思った。
 今夜は、真理とノリがいない。それに加えて、ガクとテンも、病院に泊まるという。代わりに、茅と徳川浅黄、それに、名前を知らない黒猫が、居間で丸くなっている……。
『さっきの話では、なんか、いろいろあったみたいだけど……みんな、いつもとあんま、様子が変わらなかったな……』
 と、羽生譲は思い、それから、
『いいや……みんな、必死で、なんでもないような振りをしている……だけ、か……』
 と、慌てて思い直す。
 荒野にしろ茅にしろ、あるいは、楓にしろ孫子にしろ……そんなに、鈍い子たちではない……。
 今日の出来事が、これまでの日常を問答無用で破砕するのに十分なものであったことを、十分に理解した上で……
 その上で、必死に……いつもの自分たち、を、演じているのだろう……。
『こうなると……こーちゃん……風邪をひいていて、よかったな……』
 程度の差はあるが……楓や孫子はいうに及ばず、荒野や、それに、茅も……香也のことを、それぞれのやり方で、気にかけている……と、羽生譲はみている。
 多分……香也が、ここでの平穏な日常、を、象徴しているようなところが、あるからだろう。
 今日、風邪で熱があるせいか、夕食の時も、香也はぼーっとしていた。香也はいつもぼーっとしているといえばそうなのだが、そのいつも以上に、ぼーっとしていた。
 香也だって、ああ見えて、けっして鈍い訳ではない。たまたま風邪で頭の働きが鈍くなっている時に、ああいった話をきいたから、あまり反応しなかったが……正常な時に、いきなり同じ話を聞かされたら……はたして、今日と同じく、平然としていられたかどうか……。
『こーちゃんも……』
 なんか……最近……前とは違って、他人に、興味を示すように、なってきているし……。

『ま……どのみち……』
 荒野たちが微妙な、綱渡りのような状況に置かれていることは、羽生譲も理解しているつもりだ。しかし、香也も……傍から見た時の危なっかしさ、という点でいえば、どっこいどっこいだ……と、羽生譲は思う。
『……なるようにしか、ならないか……』
 彼らに対して羽生譲ができることは、ほとんどない。せいぜい、見守って……いい結果になるように、と祈る程度のことくらいしか、できない。

[つづき]
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