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彼女はくノ一! 第五話 (108)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(108)

 目覚ましの設定を解除して寝たのだが、翌日、日曜日であるのにも関わらず、香也はいつも通りの時刻に目覚めた。目覚めてすぐさま、自分がとんでもない苦境に陥っていることをしる……。
『……まずい……』
 自分の両脇に、暖かい固まりが二つ、寄り添っていた。
 何故か……パジャマ姿の楓と孫子が、自分に密着して、寝息を立てていた。
 幸い、三人とも服を着ているが……。
『こんな所、他人に見られたら……』
 いつぞやの、ガクとの一件の二の舞いである。
 当然、香也はそっと二人の間から抜け出ようとしたが……楓は香也の襟首を、孫子はパジャマの太もものあたりの布をしっかりと握って離さない。
『……本当に、寝ているのかな……』
 香也は二人の指を一本一本丁寧に離そうとするが……一旦、指を延ばすことができても、すぐに、元通りに香也のパジャマの布地を握る。
『……この間みたいに、抱きつかれるよりは、ましだけど……』
 二人を起こして離してもらうよう説得するのは可能だったが……どちらを先に起こしても、自分以外の人間が香也と一緒に寝ている……ということをあげつらって、騒ぎそうな気がする……。
 しかたがなく……香也は、そろりそろりとパジャマの上着を脱いだ。これで、襟首の部分を握っている楓からは、離脱。
 それから、意を決して、パジャマのズボンも脱ぐ。
 朝っぱらから何故に下着だけにならねばならんのか、という疑問はさておき、これで、孫子からも、離脱。
『……後は……』
 無事布団からの脱出に成功した香也は、そろりそろりと足音を潜ませて、廊下へと向かう。
 迅速に離脱するのみ……と、思った、ちょうどその時……。

「……Go! Go! ご奉仕!
 Hey! Hey! 変身!
 みんなのアイドル! メイドール!……」

 などという妙にハイテンションな音楽が居間から聞こえてきた。
「……なんだ、なんだ!」
 眠たそうな顔をした羽生譲が、どかどかと足音も荒く居間の方に向かう。通りがかりに、何故か下着姿で廊下に突っ立っている香也に気づき、怪訝な顔をして襖の向こうの香也の部屋を覗き込む。
 そして、香也の布団で寝ている楓と孫子をみつけ、納得のいった顔をして、ぽん、と柏手をうつ。
「……こーちゃん、こーちゃん……」
 羽生譲は香也を手招きして、その耳元に囁いた。
「……真理さんには、内緒にしておくからな……。
 うまくやれよ……」
 だからそれ、違います誤解してます……と、香也が弁明しようとした時、居間から大音量で流れてくる「奉仕戦隊メイドール3」のテーマソング、「戦え! ご奉仕! メイドール3!」によって目を覚ました楓と孫子が、目をこすりながら香也の布団から起き上がってきた。

 こうして、その日の朝、朝食の前に、香也はぐったりと疲れる経験をした。

「……あは。あははは……」
 台所で朝食を用意しながら、楓は笑った。楓はなにかごまかしたいことがあると、から笑いをする癖がある。楓のほかに、孫子と羽生譲もいる。
「……最初は、二人とも、汗をふいたりとか、普通に看病していたんですけど……」
「……そのうち……何故か、我慢大会か耐久レースのような具合になってきまして……」
 そう弁明する孫子の頬も、妙に赤い。
「あー……二人とも、普段、規則正しい生活してるから……」
「ええ……どちらが先にその場を離れるか、競いあうような具合になりまして……明け方まで頑張ったんですが……どちらともなく、添い寝、ということに……」
 恐らく……寝不足で、よく回らない頭で、どちらかが頓狂なことをいいだし……引っ込みが、つかなくなったのだろう。この二人の場合……どちらか片方やがやれば、もう片方も、やる。香也に関連する事柄になると、その対抗意識は、さらに倍増する傾向がある……。
「……事情は、分かったけど……」
 羽生譲はみそを溶きながら、頷いた。
「そんじゃあ、ゆうべは、なんもなかったんか……」
「ええ。ゆうべは……」
 孫子は、にっこりと笑った。
「ゆうべは」ではなく、「昨日は」と尋ねられたら、返答に詰まるところだったが……確かに「ゆうべは」添い寝していただけだ。
「まあ……いっか……」
 羽生譲は詮索を中断して、鍋の火をとめて鍋つかみを手にはめ、出来上がったみそ汁を鍋ごと居間に運ぶ。
「まずは、朝食。
 今日も一日頑張っていきましょー!」
 居間では、パジャマ姿の茅と浅黄が、メイドール3のエンディング・テーマソングに合わせて歌って踊っている所だった。
 香也は、なんともいえない疲労した顔で、炬燵の天板に突っ伏している。おそらくその疲労は……風邪に由来するものばかりでは、ないだろう。

「……で、皆様……今日のご予定は?」
 朝食の席で、羽生譲が同居人たちに尋ねた。昨日と同じく、真理が不在の間だけでも、年長者としてそれらしいことをしよう、というつもりなのだろう。
「ぼくは……まだ、本調子じゃないから、寝てる……」
 香也が、ぼそぼそと呟く。
「えっとぉ……とりあえず、ご飯食べたら、家のお片付けして……ガクちゃんのお見舞いに、行こうかと思います。入院先、ここからいくらもない所だそうですし……。
 昼過ぎからは、学校ですね……」
 とは、楓。孫子も、だいたい同じスケジュールになる。
「……ガクが動けるようなら……それから、みんなで服を買いに行くの」
 茅が、補足説明をする。
「服? なんの?」
 羽生は尋ね返した。
「今日の夜、一族の偉い人たちに、食事を招待されているの。
 足元を見られないように、正装してこい、って、荒野が孫子に、みんなの分の見立てを頼んだの……」
 それを聞いた香也は、
『今日は一日、ゆっくりできそうだ……』と、思った。

[つづき]
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