2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(25)

第六章 「血と技」(25)

「佐久間現象は、自分の意志でおれたちを襲撃した」
「肯定なの」
「佐久間現象に、おれたちへの襲撃を命じた者がいる」
「肯定なの」
「その命令者は、複数」
「肯定なの」
「その命令者は、二人?」
「肯定なの」
「その命令者は、二人とも男?」
「否定なの」
「その命令者は、二人とも女?」
「否定なの」
「その命令者は、男女のペア?」
「肯定なの」
「その命令者は、年上に見えた」
「否定なの」
 不思議な、尋問だった。
 質問をするのは荒野、答えるのは茅。
 質問をされている筈の佐久間現象は、荒野たちに背を向けて、ソファの上で背を丸めている。表情を読み取らせまいと努めているようにも、ただ単にいじけているようにも見える。
 いずれにせよ、非協力的な態度を改善する気はなさそうだ……と見た荒野は、現象の態度には構わず、知りたいことを聞き出すことにした。茅がいる限り、現象の抵抗は無意味だ。
 しかし、この方法にも限界があって……。
「……うーん……出来れば、その命令者たちの外見ぐらい、把握しておきたいんだけど……。
 茅、現象の記憶から、映像とか読み取れないか?」
「試したことはないけど……原理的には……出来るかもしれないの……。
 ちょっと、やってみる……」
 荒野が確認すると、早速茅は、目を閉じて、黙想しはじめた。
 佐久間現象の背が、ビクン、と震える。
 現象の内部を、茅が見えない触手で探っているのを、感じているのだろう。
 微弱な……生体電流だが電磁波だか、それとも、現代の科学では検出不能な「何か」なのかは、荒野の知るところではなかったが……。
「……見えた。
 二人の、ローティーンの、男女……後で、似顔絵を描いてみる」
「……うん……任せる……」
 茅、絵なんて描けたのかな……と、疑問に思いながら、荒野は尋問を続ける。
「佐久間現象と直接接触したのは、その二人だけ」
「肯定なの」
「その二人とは、頻繁に接触していた」
「否定なの」
「その二人と最後にあったのは、つい最近だ」
「否定なの」
「その二人と直接顔を合わせたのは、ずっと前に一度だけ?」
「肯定なの」
「あとは、メールや電話で連絡を取っていた」
「肯定なの」
「学校を襲った奴らを集めたのは、佐久間現象だ」
「肯定なの」
 ……口先三寸でもなんとか集められた若い衆はともかく、二宮舎人は「正式な仕事だ」といっていた。
「二宮舎人を呼び出すため、佐久間上層部の連絡網を無断で使用した」
「肯定なの」
 現象は、佐久間上層部の人間になりすまして、二宮上層部に、偽の仕事を依頼した……。
『そりゃ……身柄の引き渡しも要求するし、お偉方も集まるよなあ……』
 真相が分かってくるにつれて、荒野は段々と呆れかえってきた。
 佐久間現象一人によって……佐久間上層部と二宮上層部は、完全に面目を潰された形だ。
 現象は、よっぽど厚顔で恐いもの知らずなのか……それとも、捨て鉢になっているのか、の……どちらかだろう……。
「秦野の女たちをここまで引っ張り出してきたのも、佐久間現象だ」
「肯定なの」
 佐久間、二宮に加え、秦野まで……。
 もっとも、秦野と学校を襲った若い連中は、舎人とは違って、現象の口車はあったにせよ、自分の意志で来たようだが……。
「……話しを、二人の命令者に戻す。
 その命令者の背後にいる者について、佐久間現象は、なにか心当たりがある」
「……否定、なの」
 それまで即答していた茅が、今回に限り、回答に遅延があった。
「茅……何故、いいよどんだ?」
「現象、少し考えていたの。考えて、それで、やはり心当たりはないと結論しているの」
 茅の躊躇いは、現象の思考の乱れを反映したためだ、という。
「なるほど……では、問い直す。
 佐久間現象は、二人の命令者の背後関係を、推測したことがある」
「肯定なの」
「佐久間現象は、二人の命令者とその背後について、自分なりの推論を持っている」
「肯定なの」
「佐久間現象に命令した二人は、一族キラーとして育てられた姫である、と、想定している」
「肯定なの」
「一族の存在を憎む佐久間現象は、喜んで二人に手を貸した」
「肯定なの」
「命令者二人に手を貸しているのは、二人を育てたやつらだ、と、想像している」
「肯定なの」
「佐久間現象は、命令者二人、並びに、その仲間の居場所を知っている」
「否定なの」
「佐久間現象は、命令者二人、並びに、その仲間の居場所は知らないが、どこにいるかくらいは想像できる」
「肯定なの」
「佐久間現象は、命令者二人、並びに、その仲間は、すでに、遠くに去った、と、想像している」
「肯定なの」
「その想像には、根拠がある。
 例えば、佐久間現象は、事が終わったら、一度高飛びする、という情報をあらかじめ与えられていた」
「肯定なの」

 ……荒野の質問はそんな調子で小一時間ほど続き、飯島舞花から「晩ご飯の準備完了」というメールが来たところで、終了することにした。
「……こんなもんかな……」
 荒野が聞きたいことは一通り、聞くことが出来たが……。
「……他に、こいつに聞きたいこと、ある?」
 荒野はそういって、茅、楓、孫子の顔を、順々に見渡す。三人は、首を振った。
「……あのお……一つ、いいですか?」
 それまで遠巻きにして見ていた有働勇作が、遠慮がちに手を挙げた。
「ああ……いいよ、質問してみな……」
 荒野は、頷く。有働なら、変な質問をしないと思っていた。
「これだけのことをしかけて……怪我人や死人がでることは、予想していませんでしたか?」
「……質問は、イエスかノーで答えられる形にしたほうがいい」
「では……佐久間現象は、今回の襲撃によって、怪我人や、最悪、死人などの被害者が出ても構わない……と、思っていた」
「肯定なの」
「佐久間現象は、学校や商店街で、一族とは無関係の被害者が出ることを望んでいた」
「肯定なの」
 茅の答えを確認した有働勇作は、感慨深い表情を浮かべて、しきりに首を振った。
「……わかりました。
 佐久間現象……あなたは、最低なのです……」

[つづき]
目次

有名ブログランキング

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
newvel ranking HONなび


↓このblogはこんなランキングにも参加しています。 [そのじゅうに]
Link-Q.com SPICY アダルトアクセスアップ アダルト探検隊 アダルトファイルナビ AdultMax  えっちなブログ検索 いいものみ~つけた 影検索 窓を開けば

Comments

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ