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彼女はくノ一! 第五話 (115)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(115)

 楓がそんなことを考えている間に、荒野への質疑応答が終わり、徳川篤朗が乱入してきて商店街の出来事を出際良く説明していく。玉木や有働は黒板にタイムテーブルを書いたりプロジェクターで再生する映像や音声を操作したり、と、補助的な役割に徹している。
 だいたいの所は、楓自身も、昨夜のうちに聞かされていた情報がほとんどだったのだが、今回はある程度予備知識を持っていた所に、その場に居合わせた人々の証言とかビデオ映像とかを使って復習してくれたようなもので、今までわかりにくかった細部も、改めて楓の脳裏に刻み込まれることになった。
 それと当時に、荒野やテン、ガクが悪戦苦闘している最中に、自分は香也たちとあーんなことやこーんなことをやっていたことになるわけでの、そのギャップに少々の疚しさも感じる。
 楓にとって、香也との関係はかなり大きなウェイトを占める関心事であるわけだが……楓が、今のように香也とともに居続ける事が出来なくては、元も子もないのだった……。

 楓は、視聴覚室の後ろの方で立ち見している才賀孫子をちらりと見た。
 教壇の後方に座らせられている楓からは、生徒たちの反応がよく見える。教員である大清水先生と岩崎先生も最前列で一連の説明を聞いていたが、収支苦虫を噛みつぶしたような表情の大清水先生はともかく、岩崎先生の方は、他の生徒たちと大差ない反応をしていた。
 岩崎先生も、生徒たちも……一言でいうと……呆気に、とられている。生徒たちの方は、多少、荒野に対して羨望の目を向ける者もいないでもないが……大半は、今しがた、荒野や玉木、有働、徳川によってもたらされた情報を消化しきれておらず、どのように反応したらよいのか、戸惑った表情をしていた。
 そんな中で、才賀孫子だけが……うっすらと、微笑みを浮かべていた。
 倫理的な余裕が、自然に表面に表れている……とも見えるし、今の状況を面白がっているようにも、見えた。
『あの人は……』
 自分とは、違う……と、楓は思う。
 孫子には、ここが駄目でも帰る場所があるが……楓には、もう後がないのだった。
 失敗が許させるか立場か、否か……という差は、大きい……。

 才賀孫子はほくそ笑んでいる。
 楓が勘ぐったように、「余裕があるから」ではなく、純粋に現在の状況を、面白がっている。孫子は、いざとなれば「消耗品」として蕩尽されることもあり得る人員として教育された楓とは違い、将来、才賀衆という組織の中でかなり上位を占めことも想定した教育をなされており、従って、楓よりは、広範な視野で物事を見ることに慣れている。
 荒野は……追いつめられている。
 襲撃者たち……について、荒野は、時折、「一族キラー」という言い方をすることがあるが……今、こうして、長年、一族が秘匿してきた情報の一端を、多人数に開示している荒野のやり方、こそ……従来の一族の在り方を、根底から否定しているのではないだろうか……。
 そのようなエキセントリックな方法を選択しなければ、この場所に残れない……ということは、理解できるのだが……正体を隠したまま姿を消すことより、正体を晒してこの場に残る、あるいは、情報をあえて開示して、周辺の者に理解や協力を求める……という選択は……すでにして、「忍」、のものではない……。
 そのような発想を「是」とする荒野は……どこまで自覚的にしているのか、までは、孫子には判断しかねるのだが……すでに、一族の基準からすれば、異端的な存在となっている、といえた。
 仮に、現在行っている説明会なりボランティア活動なりが、荒野たちの思惑通りに奏功したとしても……正体を晒しながら、一般人に混じって平和な日常を渇望する……というのは、どう考えても、一族の生き方ではないのだ。
 見方によっては……荒野自身が、従来の一族の在り方に反する者、として処罰の対象になることも、あり得るのではないだろうか……。
 仮に、現在、荒野が行っている「一般人社会への、公然とした融和」を、現在の一族が荒野とならって「是」とするのなら……それはそれで、従来の在り方を変革する、ということになる……。
 これもまた、角度を変えてみれば……「一族キラー」である、とは、いえないだろろうか?
 そして、今夜……荒野と自分たちは、現在、一族を統べる者たちとの会見を控えている。
 孫子は、荒野とは違って、六主家のおもだった者たちと知見があるわけではないが……。
 そうした古参たちに対し、荒野は現在の状況を、どのように説明するのか……また、このようの荒野の言動を、現在の一族主流は、どのように思っているのか……。
 一族の事に関しては、孫子は、たまたまこの場に居合わせただけの部外者に過ぎないのだが……直接の利害関係がない身、だからこそ、この先、荒野の選択が、荒野自身にとって、そして、一族全体にとって……どのような意味を持ってくるのか……というマクロな部分に、純粋な興味を抱くことができた。
 そして……孫子は、これからのことを想像して、うっすらと微笑む。

 茅は、楓、孫子、荒野、それに、他の生徒たちを、教壇の上から等分に眺めている。荒野たちもそうだが、他の生徒たちの反応は、なかなかに興味深い……と、思う。
 未だ、人間の思考を予測することができない茅にとっては、大抵の人間は面白いのだが……このような不測の事態に直面した人間の反応ほど、複雑で予測不能で……面白いものは、ない。
 なにしろ、茅が公然と外出するようになったのは、年末からで、まだ三ヶ月も経っていない。基本的な原則さえ理解すれば、容易に結果が予想できる物理法則とは違い、ただそれだけの時間では、人間の反応を予測することは不可能だった。
 人間の反応は……あまりにも、個体差がありすぎる。
 茅は、目立たないように、荒野の後ろに座りながら、鋭敏な感覚で、知覚できる範囲内にいる全ての人間の感情を探る。
 発汗、体臭、呼吸の速度、顔色、心拍数……などを分析すれば、感情が動くこと、自体は、外からでもだいたい分かる。
 一固体に意識を集中しさえすれば、佐久間現象の中を「読んだ」ように、あまり抽象的な思考でなければ、ある程度までは「読む」ことが可能だったが……これは、意識の集中以外に、現在、茅が持つ情報処理能力をかなりの時間、消費しなければできないことだから、よほど必要がなければ、やりたくはない。
 他者の思考を「読んだ」り、あるいは、強制的に、感覚を遮断したりすることは、茅にとって、かなり「疲れる」ことなので、日常的に軽々しく行おうとは、思わない。
 現在の所、茅は、自分のそうした能力を、どうしても必要な時か……あるいは、荒野に必要とされた時にしか、使用したくはないと思っている。

[つづき]
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