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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(32)

第六章 「血と技」(32)

 徳川篤朗は、昨日の出来事についての補足説明を終えると、有働と玉木の方に振り返り、
「……で、ボランティアの方に関しては、どこまで話したのだ?」
 と尋ねた。
 有働と玉木は顔を見合わせた後、
「……が、概略は、だいたい……」
 と、有働がぼそぼそと小声で答える。
「ボランティア活動そのものが、そもそも加納たちに人気を集めることを目的として発案された事は、もう説明したのか?」
 徳川が、重ねて尋ね、玉木と有働は揃って首を横に振った。
 徳川は腕を組んで、「うーむ……」と呻る。
「……そこが、肝心な所ではないか……」
 しばらくして組んだ腕を解いた徳川は、ボリボリと頭をかきながら、今度は荒野のほうに振り返った。
「もう一度確認しておくが……。
 加納。
 お前らは、出来れば、ここに留まりたいと思っているのだな?」
「……あ。ああ……」
 荒野は、徳川がなにをいいたいのか図りかね、それでも頷いた。
「ここにいる生徒ども。聞いた通りなのだ。
 我々、ぼくと玉木と有働は、ちょいとしたきっかけで、ここにいる生徒どもより一足先に、加納たちの正体を知ったのだ。
 そして、この土地で平穏に暮らしたい、という加納たちを助けるつもりで、玉木と有働が、ボランティア活動をすることで、地元で、加納たちの評判と知名度を上げることを思いついた。
 いいや。もっと正確に言うのなら、将来、こうして加納の正体がバレバレになった時に、加納が姿を消さなくてもいいような土壌を作るために、加納たちがこの土地にとって有益な存在となる方法を、考えた結果、ボランティア活動という隠れ蓑を思いついた、というべきか……。
 いずれにしろ、玉木や有働からでて来そうな発想ではあるのだ……」
 徳川は、一人でうんうんと頷いている。
「……で、そのボランティアの方が軌道に乗って、加納たちの顔が売れる前に、敵の不意打ちを食らって……今日、こうして加納が正体を自分の口から語っている……。
 とまあ、こういう次第なのだな……。
 玉木。
 放送部では、加納の正体やらをあらかじめ知っていたのは、何人くらいになるのだ?」
「あらかじめ知っていたのは……二人。もう少しボランティアの方が進めば……いずれ、徐々に話していったとは思うけど……。
 わたしと有働君だけ。だから、昨日、商店街で銀ピカたちのビデオを回していた子たちも、かなり驚いたと思う……」
 玉木の言葉に、近くにいた放送部員たちが真顔でうんうんと頷いている。
「では、その、詳しい裏情報を知らされないまま協力していた放送部員たちは……こうして事情を知った今、どう思っているのだ?」
 徳川は、机の上に設置されていたマイクを掴んで、手近にいた放送部員の一人に手渡した。
「ど、どうって……」
「昨日は……結果として、事情を知らされないまま、加納やら、銀ピカやらに協力してきた訳だが……それは、間違っていたと思うか、無益だったと思うのか……と、聞きたいのだ。
 自分がやってきたことは……玉木たちのいいなりになって手伝ってきたことは、間違いだと思うか?」
「間違い……では、ないと思う。
 あのチビ二人も加納も……悪いことは、していない訳だし……。
 むしろ、みんなを助けてくれたわけだし……」
「……そういう見解が聞きたかったのだ」
 徳川は、その放送部員から、マイクをもぎ取る。
「この中に、パソコン部員はいるか?
 たしかパソコン部にも、ボランティア活動に使うためのシステムを組んでいるのがいたと思うが……」
「……あ。
 はい! わたし、パソコン部……」
 生徒たちの中に埋もれていた斉藤遥が、徳川の声に元気よく手を挙げて答える。放送部員に話しが振られたあたりから、この展開を予期していたようだ。
「……個人的には、プログラム関係よりも放送部とのパイプ役、してたんだけど……。
 でも、こうして事情が分かった今でも、ボランティア活動も加納先輩たちを支援することも、全然、問題ないと思います……」
「……そういう事なのだな……」
 徳川は、斉藤遙の返答に満足そうに頷く。
「……ということで、玉木。
 ここまで説明した上で、ボランティア活動に協力するつもりのない生徒には、お引き取り願った方がいいと思うのだが……。
 加納には加納の目的と目論見があり、玉木や有働には別の目的があるのかも知れないが……そういった内情と、ボランティア活動自体の功罪は、話しが別なのだ。
 加納がこの活動をきっかけに、地元に自分の存在をアピールしたければそうすればいい。玉木が加納たちの存在を利用して商店街に客を呼ぶのも悪くはない。
 その活動によって、助かる人がいる……という成果の方が、個々人の動機よりも重要な筈なのだ。
 有働! 現在の問題点は?」
「……まだ立ち上げたばかりなので、いろいろあり過ぎるくらいですが……」
 有働は、何故か直立不動になって、答える。
「……一番大きな問題は……お金です!
 人手その他の問題は、自力でなんとかなりそうですが……」
「資金、か……」
 徳川は、数秒考えた。
「才賀!」
「寄付するつもりは、ありません」
 才賀孫子が、徳川の答えを先取りする。
「お金を出すのは簡単ですが……そんなものは、使えばすぐに消えてしまうので……一時的な解決は可能でも、際限がありませんわ……」
「……同感、なのだ……」
 徳川は、孫子の返答に、満足そうに頷く。
「だから……NPOを作るから、才賀の名義を貸せ、といったら……交渉は可能なのか聞きたいのだ……」
「そのNPOの、内実によりますわね……」
 今度は、孫子が満足そうに頷いた。
「有働と玉木、それに、この徳川が作るのだから、半端なシステムにはならないのだ……。
 ……さて、ここからは、本格的な組織作りの話し合いになる。
 興味のない者には退屈な話しになると思うので、興味本位で来てみただけの連中は、早々に退出することを推奨するのだ……」

[つづき]
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