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彼女はくノ一! 第五話 (118)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(118)

 香也の両脇からテンとガクの柔らかい体が押し付けられている形だった。これだけ密着していると、楓や孫子とは違って、まだ脂肪層が薄いんだなぁ……ということまで、分かってしまうであった。
 あと、二人とも、ブラをしていない……いや、硬いパットの入っていないスポーツブラくらいは、着けているのかもしれないが、ふくらみかけの、あるかないかの膨らみの形まで分かってしまうのだった。
 今、二人の体と香也の体は密着しているので、ぐんにゃりとつぶれてしまっている。ガクのクッションの方が、テンのそれより中身が入っている感じだ。
 そうした、まだ全然女性の体になりきっていない二人に挟まれて抱きつかれていると、特に幼児趣味のない香也もなんとなくそんな気分になってしまう……のだった。
 現実の感触に加え、「二対一」というシュチュエーションから、昨日の昼間の楓や孫子とのあれこれまで連想してしまい、香也は必死になって自制心を総動員し、体が反応するのを抑えようとした。
 今、立ってしまったら、これだけ密着しているのでテンとガクにはすぐにそれと知れる。そして、この場には、楓も孫子も、茅も荒野も、執事さんだか羊さんだかが率いて来たミシン軍団もいるのであった。
 今、この場で……テンとガクに、
「あー。お兄ちゃん、立っているー!」
 とか、大声で無邪気に指摘されたら、なんかまた結構ややこしいことになりそうな気が、ひしひしとした。
 香也はムンクの「叫び」を細部まで克明に思い出そうとすることで、自分自身がいきり立つのを必死で抑えようとした。

「……なにやっているですか?」
 香也を救ったのは、突如現れた楓の一声だった。
 見れば、ドレス姿の楓が、仁王立ちになって香也の方を上から睨んでいる。
 迫力はあったが……不思議に、愛嬌も感じさせる表情だった。
 しかし、テンとガクは楓の登場に別の印象を持っているようで、瞬時に香也から体を離し、正座をしてビッと背筋を伸した。
 二人が離れたことで、香也は、ほっとしたような残念に思うような、不思議な心境になる。
「香也様はご病気なのです。風邪がうつるから、あまりくっつかない方がいいのです」
 楓が続けると、ガクとテンはガクガク頷きながら、
「「はい! わかりましたぁ!」」
 と声を重ねた。
 香也が周囲を見渡すと、少しはなれたところで羽生譲と荒野が苦笑いをしながらこっちをみており、孫子は、いつの間にか持って来た大きなゴルフバッグのジッパーを開かけたところで、何故か手を止めていた。孫子もすでに黒のドレスを着ていたので、衣装とゴルフバッグはミスマッチだ……と、ゴルフバッグの中に何が入っているのか知らない香也は、ふとそう思った。

 それから、ほんの小一時間ほどで作業を終えたミシン軍団が白髪の執事、渋谷さん(香也も、名刺を貰って丁重に挨拶された。順也も真理も不在の今、渋谷の論理によると、香也がこの家の主人代行、ということになるらしい)に率いられ、来た時と同様、統制の取れた素早さで、あっというまに道具を搬出し、姿を消す。
 それから、荒野に率いられて、盛装した茅、楓、孫子、テン、ガクが出て行き、入れ替わりに、三島百合香と飯島舞花が居間に入って来た。
 三島はうどん玉の入ったビニール袋持参で、舞花は珍しく栗田を伴っていない。
 日曜の夜、ということで栗田は自宅に帰っているのだろう。
 その間、香也は、炬燵にあたりながら、盛装した荒野たちや、ミシンを使っていたお針子軍団、執事さんなどのスケッチをちゃっちゃと残ししていく。目新しいものをみるとこうして手を動かしてしまうのが香也であり、もともと症状の軽い風邪も、もう、かなり回復している。
 まだ少し熱っぽい気もするが、こうして炬燵にあたりながら鉛筆を動かしていても、別段体に負担がかかる感触もしなかった。
「……へぇ……。
 こんな格好してたんだ……直にみてみたかったな……」
 香也の前に湯呑みをお気ながら、舞花が香也のスケッチブックをのぞき込んで、そういう。
「……んー……」
 香也は、うなる。
「……なんか、偉い人に会いに行くって……」
「みんなで、おにーさん関係の偉い人にか……。
 そういや、昼間の説明会でもそんなことちらりといっていっけか……」
 自分の前にも湯呑みを置いて、舞花はそのまま炬燵に自分の足を押し込んだ。
「……そっちの方も、直にみてみたかったな……」
「……あいつらの関係者って、何気に濃いやつが多いからな……」
 台所の方から、三島百合香が会話に参加してくる。
「じいさんあたりはまだしもまともなんだが……帽子男だろ、荒神にシルヴィ……源吉のじいさん……それに、捕虜というかお荷物の現象……」
 三島が出会った順番に、指折り数えて行く。
「……確かに、なんというか……個性豊かな人が多いな……」
 やはり台所で動きながら、羽生譲も呟く。
「……一族の偉いさんが集まるっていってたけど……荒神、あれで一応二宮のトップだろ……あれを基準にして他のトップも推し量ると……」
「そういう癖の強い人たち相手に、駆け引きか……。
 カッコいいこーや君も、苦労しそうだなあ……今夜は……」
 年長者二人は、したり顔でそんなことを言い合いあっている。

 一方、荒野たちは、迎えに来たリムジン二台にに分乗して移動していた。
 荒野、茅、楓、それに針を刺されて意識を喪失している佐久間現象が先行する車両に、孫子、テン、ガクの三人が後続の車両に、といった分配である。
 運転席と後部座席はガラス板で仕切られ、後部の客席は向かい合わせになっている。運転手がドアを開て中に案内する際、「冷蔵庫にお飲み物が入っていますので、ご自由にお飲みください」とクーラーのある場所を示してくれた。荒野たちが成人していたら、葉巻でも勧めたのではないか、というほど、冗談めいた豪華さだ。
 そんな待遇を予期していなかった楓は、かえって居心地が悪かが、荒野や茅は平然としている。荒野はぐったりしている現象の体をシートの上に降ろして座らせ、自分もその上に座る。楓が向かい合ったシートの奥の方、現象の正面にすわり、茅がその隣り、荒野の正面に座る。中は足を伸ばしても向い側に座る人の足とぶつからないほど広々としていて、シートのクッションも、ほどよく効いていた。
 楓たちが乗ると、リムジンはすぐに発車したが、ほとんど振動を感じないので、楓は、しばらく発車したことに気づかなかった。車のサスが上等なのと、運転技術が優秀なのと……両方、なのだろう。
「……あのぉ……」
 楓は、ここに至って、ようやく今日の会合の重要さを実感してくる。
「今日、集まる人たちって……かなり、偉い人たち、なんですか……」
 思わず、荒野に上目使いで聞いてしまう。
「佐久間の長とうちのじじい以外に誰が来るのか聞かされていないけど……」
 荒野は、むしろ素っ気ない口調で答える。
「……この現象の件は、むしろ口実で……実質、茅やテン、ガクの、正式なお披露目みたいなものだから……それなりのクラスのが揃うんじゃないか?
 基本的に、一族の上の方のやつらって、好奇心旺盛で物見高いのが多いし……なにかきっかけがありさえすれば、わっと群がって来る……。
 今まで、監視だけですんだのは……多分、姫の存在に、箝口令がしかれていたからだと思う……。
 今回の襲撃で、一般人にも多数の目撃者をつくってしまって……それで、もはや知らぬ存ぜぬ、もできなくなってきたから、今後の方針も含めて、対策を練り直したい……といった所だろうな……」
 荒野の口調はひどく平坦なものだったが……楓には、とんでもなく重たい推測を、さらりと言われたように思った。

[つづき]
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