第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(119)
一方、別の車両には、才賀孫子、テン、ガクの三人が乗っていた。
「孫子おねーちゃん……」
車に乗り込むなり、ガクが孫子に話しかける。
「ボクらがいない間に……おにーちゃんと、えっちなことしたでしょ?
さっき抱きついた時、おにーちゃんから、えっちな匂い……孫子おねーちゃんと楓おねーちゃんの匂い……残っていた……」
テン、ガク、ノリの三人が「おにーちゃん」といえば、それは香也の事だ。
「……もしそうだったとしても、あなた方には関係のないことです。
それに……今朝方、看病に疲れて楓と二人で、香也様と添い寝したので……体臭が移っていただけではありませんの?」
孫子は、平然とそう返す。
「違う!」
ガクが、短く鋭い口調で、孫子の言葉を否定した。
「体臭だけではなく……えっちな気分になる時の匂いとか……おにーちゃんのえっちな汁の匂い……それに、血の臭いなんかも、混じっていた……」
「……ガクがそういうんなら、本当だろうね……。
ガクの鼻は本物だし、匂いというのは、結構長い時間、残るもんなんだ……。
だから、否定しても無駄だよ……」
それまで二人のやりとりを傍観していたテンが、ここで初めて口を開く。
「つまり……昨日から今日にかけて、ボクらが不在だった隙に……孫子おねーちゃんと楓おねーちゃんは、一緒になっておにーちゃんとえっちなことしたんだ……。
しかも、どちらか……あるいは、両方、はじめてで、出血もした……」
テンは、真面目な顔をして、そんなことをいう。
「誤魔化しても無駄なら、否定しませんけど……」
孫子は、軽くため息をついた。
「いずれにせよ……わたくしたちの関係については、わたくしたち自身の問題であり……あなた方にとやかく言われるべき事柄ではありません……」
孫子は、決然とした顔をして、そう言い切る。
さほど強い口調ではなかったが……「口出し無用」という意志は、十分に伝えていた。
「……ふーん……」
孫子の答えを聞いて、ガクは、思案顔になり……そして、こういった。
「じゃあ……仮に、これから、ボクらのうち誰かが……あるいは、全員が……おにーちゃんとえっちなことをしても、それはボクらとおにーちゃんの問題であって……孫子おねーちゃんは、口出し出来ない、ってことだよね……」
「ロジック的には……そうなるね……」
テンも、頷く。
孫子のこめかみに、じわり、と、汗が浮かんだ。
「……で、でも……」
孫子は動揺を隠すように努めたが、完全には成功していなかった。
「……あなた方は、まだ子どもですし……そういうことには早……」
「早過ぎる、ということは、ないよ」
テンが、孫子の言葉を遮るように、自分の言葉を重ねる。
「三人とも、もう生理あるし……三人とも、医学的には、もう十分、性行為は可能だから……」
「……もちろん、無理矢理、ってことはしないけどさ……。
力ずくでいったら、ボクらの誰でも、おにーちゃんなんか簡単に押し倒せるんだから……」
ガクも、テンに追従するように、頷く。
「でも……アプローチかけて……それで、おにーちゃんがその気になったら、その時は……おにーちゃんとボクらの問題で、孫子おねーちゃんは、口出ししないだよね?」
「そうそう。
孫子おねーちゃん、さっき、確かにそういったよね……」
テンとガクは、そんなことを言い合いながら頷きあっている。
孫子は……ろくな反論も出来ずに、絶句することしかできなかった。
思い返してみれば……孫子自身は、あの時……楓への対抗意識に駆られたばかりに、薬物を使って香也との関係を迫っている。
香也の意志を……あまり、尊重している……とは、いえない……。
少なくとも、孫子は……今まで、香也から甘い言葉を囁かれた経験はないわけで……。
つまり、客観的に見て……これから、何事か画策しようとしているテンとガクに向かって、強いことをいえる立場ではないのであった……。
孫子が絶句しているうちに、テンとガクは携帯を取り出して、素早い動作でメールを打ち出した。
「……ボクたち、秦野の人たちほどではないけど、一心同体だから……」
「重要な事は、連絡し合うことになっているの……」
「昨日からのことも、ちゃんとノリに伝えているし……」
「今の孫子おねーちゃんとの取り決めも、今、ノリに送信したから……」
そんなことを言い合いながら、二人はメールを打ち終え、「メール送信」のボタンを押して、孫子に向き直る。
「「にゅうたんが、おにーちゃんは共有財産だっていってた意味が、今、わかったよ……」」
テンとガクの声が、重なった。
「「……おにーちゃんさえその気になれば……みんなでえっちなことしても、いいんんだ……」」
孫子は……狭い環境と人間関係の中で育った三人が、対人関係に対して通常の常識を持たないことを失念していた。ましてや……男女関係に至っては……。
もちろん、机上の空論的な知識はそれなりに持っている筈だったが……いかんせん、それは、経験を伴わない知識であり……したがって、教えられたモラルに関しても、三人は、あまりリアリティを感じていないようだ……。
いや。
孫子自身の過去の行動が……一般的なモラルは、あまり気にかけなくてもいい……という前例と言質を、三人の目前に差し出し、与えてしまった……という気も、しないでもない……。
孫子は、「育ち」に起因する三人の特殊性を、これまで失念、ないしは、軽視していたことを、痛感した。
『……香也様……』
油断のならないことになってしまった……と、孫子は、内心で歯がみした。
このような事になって……一番被害を受けるであろうと予測されるのは……香也、なのであった。
三人がこの先、香也に対してどのようなアプローチをしかけてくるのか……。
むざむざ、自分で敵を作ってしまったようなものだった……。
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