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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(36)

第六章 「血と技」(36)

『しかし……野呂の長まできているのか……』
 野呂からも、誰かは様子を見に来るもの……とは予測していたが、いきなりトップが顔をみせたのは、荒野にしても予想外だった。
 二宮はトップとナンバー2がそろい踏みしているわけだが……実務関係の実質的な責任者は中臣の方で、荒神は、荒野が関わっている事、それに単純な好奇心で様子を見に来ただけだろう……。
『ってことは……他の六主家も……』
「……はぁーい!」
 荒野の予測を裏付けるように、シルヴィ・姉が片手を上げて近寄ってくる。
「似合うわー、その恰好も……」
 シルヴィもまた、立場上、ここにいてもおかしくはない……どころか、この会食の場にいない方が、むしろ、おかしい……。
 シルヴィは、姉が荒野たちの動向を探るために貼り付けている、目であり耳、……なのである。
 ともあれ、荒野の加納と合わせ、これで、六主家のうち、四つの者が揃ったことになる……。
『……後は……』
 秦野と、佐久間、か……。
 どちらも、今回の件には、深く関与している。
『六主家が全員集合、か……。
 何年ぶり、なんだろうな……』
 下の者が現場レベルで合流したり共同で仕事をすることは珍しくはないが……今回のように、重鎮が一堂に会しての、実質的な首脳会談、となると……。
 それこそ、荒野が産まれる前の、「歴史」以外に実例がない筈だった……。
 少なくとも、「公式」には……ない筈だった。

 佐久間現象の体を抱えた舎人が先導する形で、荒野たちは奥へと案内される。外から見たときはさほど大きな建物には見えなかったが、こうして歩いていると、広く感じる。いや、調度や内装が重厚な印象を受けるものだったので、なおさら広く感じたのかも知れない。
 建物の規模はともかく、このホテルの内装からは、歴史と風格を感じさせた。少なくとも、一族の主だった者を集めても見劣りしないくらいの……。

「……この奥で……残りの皆さんは、お待ちだそうだ……。
 ホストの佐久間の長、加納の長老……それに、残りのゲストが……」
 そういって舎人は分厚い両開きの扉を開け、荒野たちを招き入れる。舎人自身は、扉の影に隠れた。
 確かに、この面子だと……先ほど舎人自身が自嘲気味にいったように……舎人が、「一番下っ端」になってしまうのだろう……。

 中の広間には、純白のクロスが掛けられた細長いテーブルがあり、その上には皿とシルバーが用意されていた。
 テーブルの奥の方で、涼治と和服姿の女性……三十代くらい、に、見えた……が、立ち話をしている。
 テーブルの奥側の席に、左右三人づつ、秦野の男たちと女たちが、座っている。遠目からでも、性別以外の彼らの見分けはつけられなかった。
『……って、ことは……』
 涼治と立ち話をしていた和服の女性が、ゆっくりとこちらに向かってくる。
 そして、荒野の前で立ち止まり、深々と頭を下げる。
「……遠路はるばる、ご苦労さまどすえ。
 この度はわてとこの若いモンがご迷惑をおかけしたようで、まことに遺憾に思うでわ。
 詳しいお話しはお食事をしもって行うことにして、まずはゆるりと寛いでおくんなはれ……」
 佐久間の長は……佐久間静寂と名乗った。

「……その前に……」
 荒野は、舎人が担いでいる現象を示した。
「この荷物の処置について、話させてくれませんか?」
 日常会話に不自由しない程度に日本語は理解しているつもりだったが、荒野にしてみれば、耳慣れない方言は数秒考えないと意味が理解できない時がある。それ以上に、微妙な、感情的なニュアンスが読み取れない。
 そのためにも、最初に話すべき事を話しておきたかった。
「……若い人はせっかちでっせー……」
 コロコロと可愛らしい笑い声をあげながら、静寂はそう応じる。
「……まあ、いいでっしゃろ。
 お話しを伺いまひょ……」
「うちの長老から聞いた話しでは、こいつの身柄が欲しいとのことですが……正直、こっちでもいつまでも手元に置いておいても邪魔になるだけなんで、このまま、お引き取り願って結構です。
 しかし、それとは別に……」
 荒野は、一気にそこまでいった。
 静寂が頷いて、先を即す。
「……それとは別に、佐久間にお願いしたい事があります。
 すでにお聞きになっているかも知れませんが、こちらで面倒を見ている子の中に、佐久間と同等と思える資質を持つ者がおります。
 これらの者に佐久間の技を仕込む人間を……こちらに、派遣していただきたい……」
 そこで荒野は言葉を切った。
 静寂は、黒目がちの大きな双眸で、荒野の顔をじっと見つめた。
 茅が現象を「読んだ」ように……今、静寂は、荒野を「読んでいる」のかも、知れない……と、荒野は思った。
「あんはんは……若くて……真っ直ぐな子やさかい……。
 そこのお荷物とは大違いどす……」
 静寂は宛然と微笑み、目を細めて荒野を見ながら、そう答えた。
「いいでっしゃろ。
 よくみるとそこの子どもたちも、素直そな可愛らし子ばっかり。
 人をつけても、そんな間違いは起こらへんと思うでわ。
 後で、適切な人選をしておきまひょ……」
 案に相違して、静寂があっさりとそういってくれたので、荒野は、肩の荷が下りたような気分になった。

 まだ、細々とした話し合いは必要だったが……今の荒野にとって、真っ先に解決しなければならない課題は、これであっさりと片付いたことになる。
「……かて、もう初歩的なことは、すでに学んでいる子がいてはるようやけど……」
 そういって、静寂は、茅に目をとめる。

注: 作中の京都弁については、
京ことば変換コンバータ まいどおおきに!Ⅱ
にお世話になりました。
でも……これで、正しいのかかなぁ……。
修正案などありましたら(特にネイティブの方)、気が向いたらコメント欄などにお書き込みください。

[つづき]
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Comments

長文で失礼します。

自分、大阪なんでネイティブとは云い難いですが、気になる部分を何点か。

>そこのお荷モンとは大違いどす……

いくらなんでも「お荷物」は普通に「お荷物」
のままでいいと思います。「物」の部分だけ機械的に変換されたんでしょう。

>「いいでっしゃろ。
 よくみるとそこの子どもたちも、素直そへんなかいらしい子ばっかり。
 人をつけても、そへんそへん間違いは起こらへんと思うでわ。

…なんだか耳慣れない言葉が多くて、あってんのか間違ってんのか、判断に苦しむ感じですが、少なくとも”そへん”の使い方は間違ってると思います。

>「よろしおす。
 よくみるとそこの子どもたちも、素直そうなかいらしい子ばっかり。
 人をつけても、そへん間違いは起こらへんと思うでわ。

後は、個人的に「こうした方がいいのでは?」と思う点。

>「……若い人はせっかちでっせー……」

→「……若い人はせっかちどすなぁー……」

>「……まあ、いいでっしゃろ。
 お話しを伺いまひょ……」

→「……まあ、よろしおす。

>「……かて、もう初歩的なことは、すでに学んでいる子がいるようやけど……」

→「……いうても、もう初歩的なことは、すでに学んでいる子がいてはるようやけど……」
 
…ぶっちゃけ、あのツールはシャレで遊びに使う程度のモンなんで、あまりちゃんとした小説に使うのはいかがなモノかと思います。雰囲気は出てると思いますが、「30代のセレブな女性」とかの条件を考慮した変換とかをしてくれる訳じゃないですし。
とはいえ、今更標準語に戻すのもアレですし、あんまりこだわらずに適当に書けばいいんではないでしょうか。

  • 2006/08/15(Tue) 12:04 
  • URL 
  • #-
  • [edit]

馴染みのない方言は難しい。

こちとら、箱根から西にはめったに出て行かない東夷なもんで、西のお言葉はよう勘がはたらきませんもので、ついつい在り物の機械をたよってしまうわけで……。
ご指摘いただいた箇所が、だいたい当方が違和感抱いたところ(例をあげると、「そへんそへん」とか)と一致しているので、そのへんは少し安心しました。
あの翻訳スクリプトも、若干、変な癖があるのと、あと、長文より短い文章を変換したときのほうが違和感が出来にくい、ということが分かってきたので、しばらく慎重に様子をみながらやっていこうと思います。
彼女の出番はそんなに多くないので、なんとか誤魔化せるかと。
とりあえず、ご協力、まいどおおきに。

  • 2006/08/15(Tue) 22:18 
  • URL 
  • 浦寧子 #-
  • [edit]

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