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彼女はくノ一! 第五話 (121)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(121)

 荒神たち、二宮の面々とそれに目に涙を浮かべながら「……これ、立派な老人虐待よ、君……」と頭のてっぺんを手さすって中臣の方を意味ありげに見ている野呂竜斎。
 さらに、顔見知りのシルヴィ・姉崎までもが、
「……はぁーい!」
 と片手を上げてかけよってくる。
 シルヴィはひとしきり荒野と会話した後、孫子の方に近づき、荒野の方からは見えないように位置で親指を上にむけ、ウインクした。
「ソンシ……昨日は、Good Job!」
 孫子は最初、シルヴィがなんのことに関して言っているのか理解できなかった。
「……昨日、は……」
 問い返そうとして……昨日の出来事を思い返し……シルヴィが「何に」対して「いい仕事」である、と、いいたいのかに思い当たり……途端にうつむいて赤面する。
 側にいた楓も、孫子とほぼ同時に「そのこと」に思い当たり、同様にうなじまで真っ赤になった。
 茅や三人の立場を考慮すれば容易に想像うきそうなものだが……彼女らの身近にいて、相応の戦闘能力を保有されている楓と孫子は、一族の関し対象になっているらしい……と、この時点でようやく、楓は思い当たった。
『……まいったなぁ……』
 監視する方も、別にピーピング趣味で監視しているわけではなく……楓や孫子の性生活は、結果として知ってしまう……ということなのだろうが……いずれにせよ、気持ちのいいものではない。

「ねーねー、テン……これ、どういうこと……」
「だからね、ガク……」
 すぐ側では、テンとガクがこそこそ囁きあっている。
「……あー……なるほど……。
 様子見している人達は、どこにいるのか、常時確認する必要があるし……」
「そういうこと。
 ボクらがこの先どう動くのか、というのは、一族の人たちにとっては、重要な関心事なんだ……」
 こそこそ囁きあっているようでいて、実は結構、声が大きい。
『……そ、そんな大声で……』
 ふれまわるような真似、しないで欲しい……と、楓は思った。楓は「羞恥プレイ」という概念を知らなかったが、感覚としてはそれに近いものがある。
 例によって、状況をよく飲み込めていないガクに対して、テンが丁寧に解説している、という形だった。

 真っ赤になってうつむいている楓と孫子、その二人をものほしそーな目でみつめている竜斎、その竜斎をジト目で牽制している中臣……以外の人々は、面白そうな顔をして、一連のやり取りを眺めていた。
 基本的に、一族のものは、総じて好奇心が強い。
 周囲の視線が自分たちに集中していることに気づいた楓は、思わず、「うぉっ!」と小さく叫び、慌てて荒野の後を追う。

 荒野と茅は、いつの間にか二人で先行していて、楓たちとは、少し距離が空いていた。
 楓が速足で二人の後を追うと、他の者たちも、ぞろぞろとそれに続く。
 荒野が大きな扉の中に入りかけた所で、楓はなんとか追いついた。
 扉の中はちょいとした広間になっており、長いテーブルにクロスと皿、それにシルバー類がすでに用意されていた。
 少し離れた場所で涼治と立ち話をしていた和服の女性が、荒野の姿を認め、荒野の方に近づいてくる。
 その和服の女性は、「さくましじま」と名乗った。
 現在の、佐久間の長、だそうだ。
『……しじま、って……』
 例によって、どういう字を当てるのか、楓には見当がつかなかった。
『……支島とか、四縞とか?』
 いずれにせよ、珍しい名なので、覚えやすいことはたしかだ。
 それに、同じ六主家の長でも、いきなり人の胸を揉みしだいた竜斎よりは、よほど貫禄がある。
『……そういえば、師匠も……』
 荒神も、二宮の長であることを、楓は思い出した。
 日常的に稽古をつけてもらっている荒神は、楓にとって身近な存在であること、それに、地位よりも体術の凄さのほうの印象が強いので、ついつい荒神の肩書を忘れそうになるが……。
『師匠……実は、凄い偉い人だったんだ……』
 改めて、楓はそう思った。
 ここにいたって楓は、六主家の長、それも体術では他の六主家を圧倒している二宮の頂点に、直接稽古をつけてもらっている……ということが、いかにだいそれたことであるのかを、実感する。
 つまり……それまでは、あまり、そういうことを考えたことがなかった。
『……でも……』
 楓は並んで立っている荒神と中臣をちらりとみた。
 中臣はメンズ・スーツをきっちりと着こなしていて、目付きも鋭い。
 荒神は、量販店で売られているような、ぱっとしないスーツを来て、やぼったい黒縁眼鏡をかけている。つまり、楓がよく知っている、「浩司先生」モードで、ぽやぽやーっとした締りのないほほ笑みを浮かべている。
『……外見的には……』
 中臣さんの方が、よっぽど偉そうだよな……と、楓は思った。

 楓がそんな事を考えている間に、荒野と「しじま」という佐久間の長との会談は進行して行く。
 荒野が現象の身柄引き渡しを明言し、続いて、茅やテンに佐久間の技を教えられる人材を派遣してくれるよう、佐久間の長に要請する。
 佐久間の長は、あっさりと荒野の要請を呑み、すぐに人選にかかるとさえ、いってくれた。
『……あれ?』
 楓は、佐久間の長が、当然のように、荒野に協力的な態度をとっているのをみて、激しい違和感を抱いた。
『佐久間って……確か……目撃者も滅多に残さないような……』
 閉鎖的な、秘密主義の人たちではなかったっけ……と、楓は首を捻る。当然、その技も、門外不出の筈で……。
 と、そこまで考えた所で、楓はようやく、ある可能性に思いあたった。
『……つまり、加納様の戦力を増強することが……佐久間にとっても、メリットがある……。
 と、いうより……』
 荒野と佐久間……いや、この場にいる人々には……共通の敵、が、いるのだった。

 昨日の襲撃を仕組んだ者への対応策として、
『正式な、佐久間の技が……必要となる』
 つまり、佐久間は……楓たちにとっては依然正体不明である、襲撃者にとってなにがしかの情報を掴んでいる……。
『……おそらく……』
 佐久間の技を身につけないまま向かっていったら……対抗できない相手、なのだ。
 つまり……昨日の襲撃者も、すでに佐久間の技をマスターしていて……佐久間は、荒野たちの戦力を強化して、その襲撃者に、ぶつけようとしている。
 そのために……茅とテンに、門外不出の技を、教えようとしている……。
『……そして、加納様は……』
 そこまで読んで……佐久間に、頼み事をしたのだろう……。
 今回の荒野の「頼み事」は、「将来予想される襲撃者との対決」の際、荒野の勢力が、最前線に立つ……ということと引き換えの、バーター取引であり……。
 その程度のことくらいは、この場にいる人間なら、わざわざ口にするまでもなく、暗黙のうちに了解している事項……なのだろう。

 それまで楓は、「上の者の判断に従っていればいい」という立場であり、物事を深く考える、ということを、意図的に避けて来た。
 それが最近、いろいろな出来事があり、自分で見聞して来たことの「意味」を、こうして考えるようになっている……。
 その結果……。
『なんて……物が、見えていなかったんだろう……』
 と、忸怩たる思いを噛みしめる。

[つづき]
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