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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(38)

第六章 「血と技」(38)

「……なぁ、じじい……」
 食事がはじまってしばらくしてから、荒野は少し大きな声で、隣に座る涼治に語りかける。歓談の場、と主賓の静寂がいうのなら、多少フランクな言葉遣いでもかまわないだろう。
「茅、テン、ガク、ノリ……それに、ガス弾を使ったやらも……一族の遺伝子をもとにして合成された人間、ということで、いいんだな?
 先生は、デザイン・ヒューマンとかいってたけど……」
 それに……根本的な前提になる「姫の仮説」について検証せずにこのまま話しを進めるのは、効率が悪すぎる。
 先ほどの茅と佐久間静寂のやり取りをみても誰も目だった反応をしなかったところから見ても……「姫の仮説」は、この場にいる人々の中では、暗黙のうちに「前提事項」として織り込まれている……と、判断できた。
 そして……その「暗黙」を「公認」に変換するのに、今ほどいい機会はないのであった。
「……そう、だな……」
 涼治は、ゆっくりと首を振る。
「話しても、よろしいですかな?
 佐久間の……」
 佐久間静寂は、ゆっくりと首を縦にふる。
「……それでは、少し長い話になるが……わしの知る範囲内で、話させていただこう……」
 そう前置きをして、加納涼治は、語る。

 ……まず、先ほど、茅が佐久間にした話しだがな……。大筋、あれで正しいといえば、正しいのだが……事実とは少し事なる部分もある。
 遺伝子という概念が一般的となり、ヒトゲノムの解析がはじまったのは、そう古い話ではないが、われわれ一族の首脳陣は、かなり初期の段階から、ヒトによるヒトの生殖を制御する……という考えに、魅力を感じ、少なくはない資金と人材を投入して研究させた。
 つい今し方、茅が指摘した問題はな……特に佐久間のみ、の問題ではなく、一族の共通の課題でもあった。
 必要な形質を備えた子孫を、より多く残すこと……はな。
 確かに、長い年月、閉鎖的な近親交配を繰り返して来た佐久間に、死産が多かったのはたしかだが……他の六主家も、似たようなものだ。
 能力的に、一般人とあまり変わらない子供の比率が……段々と、多くなりはじめ……百年ほど前からとりはじめた統計によれば……このまま世代を重ねれば、われわれの形質は薄まり、もはや一族としては、成立できないようになるだろう……という予測も、でていた……。

 中でも深刻だったのは……加納と、佐久間だ。

 佐久間は、先程も茅がいったとおり、死産の割合が無視できないほど多くなり……。
 加納は、もともと長命ではあるが……その代わり、生まれてくる子が、加納としての形質を受け継ぐ割合が、ひどく少ない……。
 荒野……お前も、同年配の加納に、会ったことはないだろう?
 あれはな……他の六主家と交配を重ねた結果、長命種としての加納、の個体数自体は、激減しているからだ。混血を重ねても、生まれてくる子供に現れるのは、別の六主家の形質をもった子供たちか、あるいは、成長しても、一般人並の能力しか持たない者で……。
 加納の名にふさわしい能力を持つ者は、現在、世界中からかき集めて来ても、一万人を割っている。
 六主家の中で、一番、人工的な生殖技術を欲していたのは……加納、だよ……。

 そのようなわけで、初期の研究は、加納と佐久間が中心になって行われた。加納が設備や資金を用意し、佐久間が、その知力を生かして研究に従事する……と、計画初期は、そのような分担だった。
 しかし、そうした秘密は、長続きしない。
 他の六主家も、われわれが何をしているかに次第に気づきはじめ……公式非公式に、協力や支援をし、同時に、口を出しくるようにもなった。これもやはり、欲得を勘案した上での取引だ。研究の成果を流用させることが、支援の条件だったわけだ。
「この計画に一枚噛ませないと、研究の存在を一般人社会にリークするぞ」という脅迫も、暗に含んでいた支援だった。

 そんな形で、年月が経つうちに、計画は大規模、かつ、複雑なものになり……同時に……次第に、暴走しはじめた。

 当初こそ、低下した出生率を是正するための研究だった……が……その目的が、外部から流入する資金源による、際限ない要請で、迷走しはじめる……。

 基礎研究がおわり、成功率は高くないものの、実際に遺伝子を多少の手を加えることが可能になった段階で……それまで黙って資金をだしていたものたちが、いっせいに、勝手な要求をつきつけはじめた。
 ようは、自分たちに都合のよい性能をもった人間をデザインしろ……ということで……この成果と生まれて来たのが、茅たちということになるのだが……。

 その成果として、実際に特異な形質を備えた子供たちが生まれはじめる頃になると……それでも、まだまだごく一部の関係者以外、秘密だった筈の計画が……噂、という形で、次第に、他の一族の者に、知れ渡るようになる……。
 どうやら、実際の研究にたずさわた者が、故意にリークしたものらしい……と、後になって判明した。

 計画を歓迎するもの、否定するもの、無関心なもの……反応は、さまざまだった。
 ある者は、このままゆるやかに滅びるのがさだめなら……そのまま、なにもしない方がいい、といい……と、達観し、計画を冷笑した。
 また、ある者は、いい機会だから、一族としてアイデンティティを捨て、このまま一般人の中に溶け込んでしまおう、といい……そのまま、足抜けしけを実行した。
 その他の、ごく一部の者が……計画の存在自体に強い不快感を露わにした。
 そして、計画の噂が広まるにつれ……いつの間にか、そうした不平分子は組織だった動きを見せはじめ……しかも、他の考えを持つ一族に気づかれないように、研究所の襲撃を計画した……。

 一方、実際に計画に携わった研究者の大半は……外部の反応には、あまり関心を持たなかった。

 当時、研究の主体になっていたのは、その計画のために、佐久間から選抜され、英才教育をうけた十代から二十代の青年たちであり……彼らは、一族としての技を仕込まれる変わりに、必要な専門知識と実験に必要な機材を与えられ、長年研究所に隔離された環境で生活を続けていた。
 その結果、彼らは、外部……いや、研究以外の事には、あまり注意を払わないような精神性を育てていた。
 もちろん、護衛を含め、研究を支援するための人員も、若干名は配置されていたが……もともと、研究所は、人目を避けるため、他の人々が滅多に足を踏み入れることがない場所に作られていたため、計画の重要度と建築物の規模に比べ、お話にならないほど少数の戦力しか、配備されなていなかった。

 そして、研究がなんとか成果を見せはじめ……次々と遺伝子操作を施された子供が生まれはじめた頃……研究所は、襲撃された。

[つづき]
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