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彼女はくノ一! 第五話 (123)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(123)

 涼治の説明が一区切りつくと、今度は佐久間静寂と荒野の会話で、佐久間現象の出自についてふれられた。現象は、その時に生き残った妊婦が産んだ子供で……その妊婦の夫は、佐久間側の計画責任者であり……佐久間の長の血筋……静寂の、兄だ……という。
 その妊婦は、救出された後、どさぐさ紛れに奔出し……単身で現象を産み、育てた。
 幼い現象へ、佐久間の技を仕込み、一族への呪詛を吹き込みながら……。
「……現象の方も……何度か、矯正を試みたんですがなぁ……。
 ……正直、往生しましたわ。
 何人も病院送りにされた後、ようよう観念して、念を入れて記憶を封じ、身体の方も人並み以下の能力しか発揮できんようにして、養子を探していた一般人のご家庭に里子にだしました……」
 そして、静寂は続けて……現象を手引きたのも、その時の生き残りが育てた者がいる、と指摘する。
「……あのまま、その封印を解かれなかった方が、あの子のためにはなんぼか良かったんとちゃうか?
 それを……わざわざ出向いていって封印を解き、あの子を焚きつけたんがいましてなぁ……」
「その……現象の封印を解いたやつらに、心当たりは……」
「あるといえばある。ないといえばない。
 証拠はあらへんけど、動機と方法を持っている者には心当たりはおます、いうところですか……。
 加納のボンも……なにがしか、思うところがあるんとちゅあいまっか?」
「……ありますね……確かに……。
 あるといえば。
 先程のお話しに出てきた中で、生き残った大人は……大体、佐久間の研究者や、妊婦だったわけですね?」
「奇遇どすなあ。
 わても同じ人たちのことを、思い浮かべましたわ……。
 確かに襲撃によって、研究資料の大半は失われましたけど……生き残った佐久間の頭の中に丸まる残っておったわけですな……。
 彼女らには、自分らをひどい目に合わせた一族に対する恨みつらみがある。研究を再開するために必要な、情報や知識、ノウハウもある。
 そんなおなごはんが、対一族用の人材をどこぞで育成しておいったら、えらいことになりますぁ……」
 軽い口調だったが……その仮定を採用すれば……いろいろなことが、説明つくのだった。
 ガス弾を使用した者が、一族を遥かに上回る身体能力を持っていたこと、一族のルールを無視し、一般人の視線から逃れようとはせず、それどころか、あえて大きな被害がでる方法を採用していること……それに、佐久間現象さえ、使い捨ての道具としてみなしていること……。
 事態は、想像以上に深刻だ……と、楓は思った。
 一族以上の身体能力と佐久間の技を合わせ持ち……どんな汚い真似でも躊躇せずに行い……一族の存在そのものに対して、ひどく恨んを抱いている集団……。
『……荒野が佐久間の技を教えてくれるように頼んだ時……』
 静寂が快諾したのも……こうして仮想敵の正体を知ってしまえば、良く理解できる……。
 仮想敵に対抗できる人材は……一族の中でも、荒野の抱える、姫たち……くらいなものだろう……。
 後は……多大な犠牲がでることを覚悟した上で……大勢で取り押さえるか……。
 しかし、その方法も……相手の消息を確実に補足し、入念に準備しなければ……実行、できない……
「……まいったなぁ……」
 だが、荒野の声は……あまり、重いものではなかった。
「……親の因果は子に報い……なんて、今時流行らないよ……。
 おれ、今までそういう泥沼の現場に、仕事として何度か係わってきたんだけどさ……そういう世代を越えて受け継がれる骨絡みの恨みって、結局、何もうまないんだよね……。
 親父たちの世代でいろいろあったのは理解できたけど……それ、茅やガク、テン、ノリ……おれたちの世代までた引き継がれなければならない……って、義理は、どこにもないわけでしょう?」
 荒野は、わざと軽い口調で話している……と、楓には感じられた。
 それから、荒野は表情を引き締めて、続ける。
「……でも……それでも、実害がある以上、放置しておくわけにもいかない……。
 第一、放置しておいたら、おれたちの生活が脅かされる……。
 まったく、はた迷惑な話しだよ……」
「……頑張りたまえ、荒野君……。
 君のところでくい止められなければ……ぼくの方にお鉢が回ってくる……。
 ぼくには、女子供を殺して悦に入る趣味はないからね……」
 荒神が、明らかにこの事態を面白がっている表情で、いった。
 卓越した戦闘能力を持つ荒神の、主な仕事は……一族のの規範から逸脱したり、掟を破ったりした者の抹殺である……という噂を、楓も聞いたことがある。
 代々の二宮の長が「最終兵器」として存在しているから、一族の者も滅多に暴走することができない……。
 荒神という桁外れの能力を持つ抑止力が存在するから……一族も、最低限の規律を保っていられるのだ、と……。
 その噂は……おそらく、本当のことなのだろう……。普段、荒神の実力を肌で感じる機会の多い楓にしてみれば……すんなりと納得できる風評だった。
 そして……荒神ならば、さきほど佐久間静寂が仮定した仮想敵であっても……問答無用で蹴散らしてしまえるように、思えた……。
 しかし、その時は……。
「……荒神がでると、ペンペン草一本残らないじゃないか……。
 それに、万が一、うち漏らしがでたら……また、新しい禍根を残すことになる……そうしたら、堂々巡りだ……」
 荒野がいうとおり……仮想敵を一掃するのが目的なら……荒神を投入し、敵の関係者を片っ端から殺戮して回るのが、一番手っ取り早い……。
 だが、それは新しい敵を作る……という可能性も、孕んだもので……。
「……そういう報復の連鎖、は、大人たちだけでやってくれ。
 おれは……その、生き残った大人たちも、そんな大人たちに復習の道具として生み出された子供たちも……等しく、被害者であると思っている。
 そして、被害者を、加害者にしてはいけない……とも……。
 なあ、じじい……その人たちの捜索は、ちゃんとやっているんだろうな……」
「無論だ。昨日の件があってから、人員も増強した」
「量よりも質に問題があるんじゃねーか?
 例えば、内通者がいて、こっちの情報がただ漏れになっている、とか……」
「その辺の補修も、進行中だ。研究施設を襲った連中も……まだ、全容が掴めていないからな……」
「そう……だな……。
 一番の原因を作ったそいつらに……取り込まれて、利用されている……いや、お互いに利用し合っている……という、可能性は、あるな……」
「敵の敵は味方。あるいは、敵は内部にこそ、あり……。
 わしらの世界では、珍しくもないことだ……。
 可能性は否定できんし、その線も前提とした上で、内偵も進行させておく……」
「そっちの方は……じじいのが年期入っているから、任せる。
 こっちは……相手が姿を現した時に、相手をすればいいんだな?」
「相手を……できるのかね?」
「できなくても、やるさ」
 荒野は肩をすくめた。
「おれに、茅を笑わせて見ろ……って、そういったのは、じじいだろ?
 大人の方はそっちに任せるけど……子供の方は、とっ捕まえて……迷惑をかけられた分、いやというほど尻でも叩いてやるさ。
 そして……更生するまでそばにおいて、まともな社会生活に、無理やり、適合させる。
 そうでもしなけりゃ……落ち着いて、平和な学園生活を、送れやしない……。
 テン、ガク……それに茅!
 そういうことで……いいな?」
 荒野は、とんでもなく難易度が高い方針を、さらっと述べてみせた。

[つづき]
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