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彼女はくノ一! 第五話 (124)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(124)

 楓は……荒野のいったことを頭の中で反芻し……荒野が言う通りのことを実現するのが、いかに困難か……過去の経験かに鑑みて……しみじみと実感した。

 三人とは、他愛のない理由で何度か模擬戦じみたことをやりあっているが……その際、楓が、なんとか三人を押さえ込めたのは……三人の中に、「本気で戦う」という覚悟や実感がなかったため、楓とは、気迫が違った……という要因が、大きい。
 どんなに潜在的な能力が大きくても……心の底から必死にならなくては……威力は、半減する。もちろん、それ以外に経験の多寡、という要素もあったが……それ以上に、三人は全てが遊びの延長、という感じで……実戦に際する必死さや真摯さが、足りない……。
 逆にいうと……そうしたメンタルな要素さえ、改善されれば……楓が対抗できるか、どうか……とたんに、あやしくなる……。

 そして、今までの話を総合すると……想定される敵は……三人以上の素質と、それに、十分な戦意を持っている相手、らしい……。
 バックアップする組織の規模や詳細、それに、実動部隊の人数も、今の時点では、明らかになっていない……。
 今の時点で判明している、敵についての情報を尋ねようと楓が口を開きかけた時、ガクが荒野に、「楓に稽古をつけて欲しい」といってきた。
「そういうことで、いいな?
 楓……」
 荒野は即座に頷いて、楓に確認してくる。
「……え? あっ……はっ! はいっ!
 わたしで、よければ……」
「……こりゃ、いいや!」
 いきなり話をふられた楓は、椅子に座ったまま、反射的に返事をしてしまう。楓は、よほどのことがないかぎり、上の者のいうことには服従する。

「中臣君!
 このぼくに、可愛い孫弟子ができたそうだよ!」
 少し向こうの席で、荒神が両手を叩いてはしゃいでいたが……楓は、あまり現実感がなかった。。

「……そうなると、専用の訓練所も必要か……。
 おい! 才賀! ……」
 荒野は訓練所とか、消耗品とかの手配について、次々と周囲の人たちと話し合いながら、決めて行く。どうやら、思いついたことを片っ端からしゃべっているらしい。
 ……いや、話ながら、考えをまとめている……らしい。
 と、楓は思い直す。
「……もちろん、この場にいる方々も、ご協力をいただけるんでしょうね?」
 ひとしきり思いついたことを話し終えると、荒野はそういって、他の出席者、六主家の重鎮たちを見回す。
「ご協力……は、いいけどよう……」
 真っ先に荒野に返答したのは、丸っこい顔と体つきのした老人、野呂竜斎である。
「荒野……先のことを固めるのもいいが……昨日の子細について、もう少し聞かなくてもいいのか?」
 この老人は、配膳される料理にはあまり手をつけず、ワイングラスばかりをくいくい傾けている。それでいて、酔って乱れた様子はみえない。
「……うちの若い者も……随分と、世話になっちまったようだが……」
 そういえば……学校を襲った中に、野呂らしい若者もいた。
「……加納と二宮本家の直系、それぞれを形質をバランスよく発現させ、その若さで、すでに海外では幾多の実績をあげている……。
 それでいて、国内にいる者にとっては、噂ばかりが先行して、その実態があまり知られていない……。
 荒野君は、若い世代の出世頭だからねぇ……。
 同じくらいの連中が興味を示すのも、わかる気がするよ……」
 荒神が、からかうような口調で、いう。
「……うちんところは、あまり下の者の動向をチェックしておらんからな……。加納ん所から事後に連絡をもらって、あわてて調べてみたら……。
 どうやら、いま話してた佐久間の小伜が、一人一人口説いてかき集めていたらしい……」
 そういってから、竜斎は、
「……まったく、最近の若いやつらは、勝てる相手とそうでない相手を区別する鼻もきかんのか……。
 どうせ襲うのら、確実に勝てる相手だけにしとけばいいのに……。
 佐久間の小伜も小伜だ。まっさきに、わしに声をかければ、もう少しこう、別のやりようがあったのに……」
 とか、ぶつくさ小声でいいはじめる。
「佐久間現象の口車にのったこと」より、「荒野一人に手ひどくやられたこと」の方を、責めるような口ぶりだった。
「……その、多人数で学校を襲撃した件ですが……」
 事実上、二宮を統括している中臣が、竜斎に続いて荒野に報告した。
「……うちの若い者も数人、混ざっていました……。
 連絡を受けてから調べ、そして事実関係が判明した……というあたりは、野呂の衆と同様です。
 監督不行き届きで、若にはご迷惑をおかけいたしました……」
 中臣はそういいって、荒野に頭を下げる。
 そんな中臣に、荒野は、
「……もう過ぎたことだから……」
 と答え、続けて、
「……で、舎人さんは、仕事で来たっていってたけど……。
 それと、現象を調べた時、二宮と佐久間の公式な連絡ルートに割り込んだ、というようなことも、いってたけど……」
 と、問い返す。
 追求するつもりはないが、手口については、確認しておきたかった。
 六主家相手に同じ手口が、通用するとは思えなかったが……手口を検証することで、相手の考えていることやポリシーみたいなものを、いくらかでも理解できるかもしれない。
「……現象から、そこまで聞かはりましたか……」
 佐久間静寂が、頷く。
「……そちらの方も、わてら佐久間の手落ち、いうことになりますなぁ。
 現象の父親が持っていた暗証コードを、現象が勝手に使用したようですわ。
 わてら佐久間が他の六主家のみなはんに連絡する時は、今では回線ごしでっしゃろ? 行き来する情報量が多すぎて、全てをチェックしきれないという所を、突かれた形どすなぁ……」
 こちらも、事後にログをチェックして、初めて死人が通信していることに気づいた……ということ、らしい。
 その暗証コードが無効になっていたら、別の手口を用意したのだろうな……と、楓は思った。
「……秦野さんの方は……」
 荒野は、今度は秦野の女たちに水を向けた。
「……わたくしたちは……」
「佐久間を名乗るお客さまが、はるばる集落まで来てくださって……」
「民間機をチャーターするから、日本まで観光に来ないか、って誘われて……」
「わたくしたち、滅多に外に出ることはないでしょ?」
「だから、つい、お誘いに応じてしまって……」
「「「……ねー……」」」
 と、秦野の女たちは声を揃えて頷き合う。
 楓が荒野をみると……額に、手のひらをあてて、目を閉じていた。
「……確認します。
 佐久間現象から観光旅行をプレゼントされたので、ほいほいついていった……、と、いうことなんですね……」
 それでも、荒野はけなげに先を続けた。
「あっ……あの……」
 楓は、片手をあげる。
「じゃ、じゃあ……テンやガクと、戦ったのは……」
「戦い?」
「模擬戦や演習を申し込まれたら、受けるのが六主家の礼儀なのでは?」
「それに……申し込んで来たのは、そこのお嬢さんなのですが……」
 三人の秦野の女は……びしっと、揃ってガクを指さした。
 その場にいた全員の視線が、ガクに集中する。
「……えっ! あっ……ええと……」
 ガクは、狼狽えまくった表情で、わたわたと弁明をしはじめた。
「だっ、だって!
 ……秦野のおねーさんたち、見るからにただ者じゃない気配してたったし、好戦的な、興奮した匂いしてたし!
 こう、アドレナリン、どっぱどっぱ、って感じで……」
「わたくしたち秦野の女は、滅多に集落からでることがありません……」
「集落を維持し、子を産み、育て、居を守ることが秦野の女の役割です……」
「一生、集落の中しか知らずに死んでいく女が、大半です……」
「それを……僥倖で、はるばる日本まで招待されて……」
「見るもの聞くもの、全て物珍しく……」
「そんな状況で、興奮するな、という方が……」
「「「……無理なのではありませんか!」」」
 三重奏で指弾されて、ガクは息を呑む。
 完全に、返答に詰まっていた。

[つづき]
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