第六章 「血と技」(45)
リムジンが狩野家前に到着したのは、かなり遅い時間になっていた。そのせいか、テンとガクは車の中で寝ており、出迎えた羽生譲が楓と孫子を手招きする。
テンとガクを背負った楓と孫子に別れを告げて、荒野と茅はマンションに帰った。
「……おねーさん、なの……」
マンションのエレベータに乗った途端、茅がぽつりといった。
「茅の方が……荒野よりも、おねーさんなの……」
いきなり何をいいだすのか、と、荒野は、茅の顔をまじまじと見つめる。
「だから……荒野が生まれた時、茅はもういた……。
茅、荒野よりも数カ月、おねーさんなの……」
……そういうことか、と、荒野が納得した時、エレベータが到着した。
荒野が外に出て、茅もそれに従う。
「荒野の方が……年下なの……」
しつこく、茅が続ける。
「はいはい……」
荒野は適当にいなしながら、玄関の鍵を開ける。
「……むぅ……」
荒野が一向に感銘を受けた様子がないので、茅は、久しぶりにむくれた。
「で……茅がおねーさんだと、今までと何が違うの?」
しかたなく、荒野も靴を脱ぎながら、茅に調子を合わせる。
「年上の方が、偉いの……」
茅は、胸をはる。
「おとーとは、おねーさんのいうことを聞くの……」
……段々、荒野にも、茅が何をいいたいのか、掴めてきた……。
「……つまり、茅は、おれになにかやって欲しいことがある、と……」
茅は、こくこくと頷く。
「……脱がせて……」
そういって、靴を履いたままの片足をあげる。
「……はいはい……」
荒野は素直に茅の前で身をかがめ、ドレスに合うように孫子が見繕った靴を脱がせる。
茅は、身をかがめた荒野の肩に両手を置いた。
「こういう踵が高いの、慣れていないから、疲れただろ?
はい。こっちの足……」
荒野が両足分の靴を脱がせると、茅は、荒野の首に両腕を回す。
「……おいおい……今度は、なんだよ……」
「このまま、ベッドまで、運ぶの……」
茅は、スカートの裾がはだけるのにも構わず、そのまま荒野の胴体に両足を回した。
「おねーさんのいうことを、聞くの……」
「……随分、甘えん坊のおねーさんだな……」
そういいながらも、荒野は、首に茅の体をぶら下げながら、ベッドが置いてある部屋に向かう。
ドレスの薄くて柔らかい布ごしに、密着してくる茅の弾力を感じた。
そういえば、この週末はなにかと忙しなくて、二人きりになる時間がほとんど取れなかった……。
「ひょっとして、茅……欲しいのか?」
荒野が、直截的に尋ねると、茅は荒野の耳たぶに歯を立てた。
「荒野だって……硬くなっているの……」
そういいってから、腰を動かして、自分の股間を荒野の硬直している部分にこすりつける。スカートがまくれ上がっているので、薄い茅の下着と荒野のタキシードの布地ごしに、局部をこすり合わせているような格好になった。
気のせいか、こすられた茅の部分も、熱を持っているように感じた。
「……なんか……茅。
先週あたりから、えっちっぽくなってきていないか?」
そういいながら、寝室として使用している部屋の扉を開ける。
荒野とて、悪い気はしないのだが……だからこそ、自制すべきところは自制しよう……という思いもあった。
ベッドの前まで到着すると、茅は、
「荒野……茅とえっちするの、嫌いなの?」
と、尋ねてきた。
「嫌いではないけど……」
荒野は、言葉を濁す。
「……適当に、歯止めをかけておかないと……溺れそうで、怖い……」
「それなら、茅と同じなの……」
そういい、茅は、荒野の口唇を強引に奪う。
いきなり茅が動いたのでバランスが崩れ、二人でもつれ合ってベッドの上に倒れ込む。
口づけしながら揉み合ううちに、茅が荒野の上にまたがっていた。
髪の毛がほつれ、頬を上気させた茅の顔を、荒野は見上げる。
不断、表情が読みにくい茅が、こうして分かりやすい表情をしているのが、強く印象に残った。
「……荒野の……ここ……」
上から荒野の顔を見下ろしながら、茅が手探りで荒野の股間をまさぐる。
「窮屈そう……」
いいながら、茅は、荒野のジッパーを降ろし、怒張したモノを取り出す。
「……おねーさんで、こんなにして……いけない子……」
「……どこで覚えてくるんだ……そんな台詞……」
あやうく吹き出しかけ、荒野はあわてて表情を引き締める。
「……ネット……」
「はいはい……」
案の定の返答に荒野が苦笑いを浮かべると、茅は「むう」とむくれた。
「……それで……」
荒野は、茅の腰のあたりに腕を回し、素早く態勢をかえる。
次の瞬間には、茅と荒野は、ベッドの上で添い寝している格好になった。
「おねーさんは……どうして欲しいのかな?」
「脱がせて……下だけ……」
茅は、潤んだ瞳で、荒野を見返す。
「下だけって……」
ドレスは、ワンピースだ。
「……これだけ、脱がせて……」
茅は、自分のスカートを大きくめくり、下半身を露にする。
荒野が下着に手をかけると、茅は腰を浮かせて下着を脱がせるのに協力してくれる。
「……それから?」
荒野が、重ねて尋ねる。
「茅の、ここに……荒野のそこ、うずめて……。
一気に、貫いて……」
荒野を感じたい、絆が欲しいの……と、茅は続けた。
荒野は、いわれた通り、性急、かつ、乱暴な動作で茅を貫く。茅は湿っていたが、前戯もなしに入れたためか、中はいつもよりきつく、狭く感じた。
いわれた通り、一気に根元までいれると、茅はのけぞって、「……かはっ!」と、気道から空気を漏らした。
「……大丈夫か? 茅……」
心配になった荒野が、声をかける。
「いいの……このまま、いつもより乱暴に……動いて……」
荒野の首にしがみつきながら、茅は、震える声でそういった。
「……荒野の感触……中にしみつけたいの……」
気のせいか……欲情、以外の感情も、かいま見えたような気がした。
「……茅……」
どうしたんだ……と、荒野は聞こうとしたが、茅は、意外なほど真剣な声で、
「……茅を……荒野のものにして!」
と、叫んで、荒野の言葉を遮った。
「人殺しの道具と、同じじゃないっていって!」
そういわれて……荒野はようやく合点がいった。
いろいろと憶測をたくましくしてた出自について、今日、明らかになり……変わりに、今度は、別の不安が頭をもたげるようになった……ということ、らしい……。
「……茅は……馬鹿だなあ……。
おれが、茅を……道具扱いするわけは、ないじゃあないか……」
今日の話は……昨日、ガス弾を使用した者が、何物かに兵器として育てられた、茅の同類だ……という推測を裏づけるものだった。
荒野の場合、その事実は単なる情報に過ぎないのだが……茅の場合は、それだけでは済まない。
最近、茅は、育ち続ける自分の能力に疑問を持ち、おびえている雰囲気も感じられた。
加えて……禍々しい動きをみせる、自分の鏡像……の、出現である。
動揺……するな……というほうが、無理だろう。
『……ひょっとして……』
テンやガクの方も、同じように脅えているのではないか……と、荒野は思った。
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つづき]
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