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彼女はくノ一! 第五話 (130)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(130)

「……ガクだけ、ずるい……」
 ボソリ、と……今度はテンが呟いた。
「おにいちゃんは、共有財産だってにゅうたんがいってたのに……。
 いい! ボクも、見せる!」
 テンも、やおやに立ち上がり、香也の頭の向きを、強引に自分の方に変える。
 香也の首筋から「ゴキリ」という不吉な音がした。
「ほら! おにいちゃん! ちゃんとボクのもみて!」
 強引に首の向きを変えられた香也は、確かにテンの股間もみた。というか、目の前にあるので、いやがおうでも目に入る。
 テンはガクよりも陰毛が濃くて、陰唇まではみえなかったが……って、それどころではなく、首が……。
「……い……く、首が……」
 ようやく、香也は、そう呻いた。
「……だ、大丈夫だったか、今の……。
 なんかこーちゃんの首、すごい音、していたけど……」
 羽生譲の顔色も、心なしか青ざめている。
「……大丈夫、大丈夫……」
 テンは香也の肩に手をかけて体の向きをかえ、香也の背中に回る。
「……こうして……肩から下を固定して……」
 次に、香也の肩に左足を乗せ、臑で香也の胸部を固定する。
「……次に、おにーちゃんの頭骨を抱えて……」
 香也の背後に回ったテンは、後ろから香也の頭部を両腕で包み込むように抱きすくめる。香也の顎をしっかりと腕で押さえ込む態勢で、香也の頭頂部にテンのふくやみかけの乳房が押し付けられる感触がした。
「……こうする!」
 香也の頭部をしっかりと抱えたテンは、「せいやぁ!」という気合一閃、素早い動作で香也の首を持ち上げ、微妙な捻り方をする。
 擬音でいうと、
「ガガギゴゴグギッ!」
 といった感じの凄まじい音が、香也の脊椎から発生した。
 香也は、口から舌を出して白目をむいている。
 羽生は、目をまんまるにしてしばらく呆然としていた。
「……ぶ、無事か……こーちゃん……」
 しばしの間をおいて、羽生譲がおそるおそる、香也に声をかける。
「……んー……」
 その一言で硬直からとけた香也は、自分の肩に手をかけたり、上腕部をぐるぐる回したりしている。
「……音が凄かったんで、驚いたけど……。
 痛くなかったし、肩が軽くなった……」
「……でしょ、でしょ……」
 そういって、テンが香也の背中にぺたーっと張り付く。
 香也は、背中にテンの乳房と陰毛を感じて、少しどぎまぎした。
 香也の背中に張り付いたテンは、両足まで香也の腰に回して密着し、耳の後ろに息を吹きかけるようにして、囁く。
「……今、脊椎を上から引っ張って、軟骨を延ばして、その場で正常な位置に戻したんだ……。
 おにーちゃん、いつも長時間同じ姿勢で絵をかいてているでしょ? だからねー、脊椎が、微妙に歪みかかかってたのを、戻したの……」

 閑話休題。
 よゐこの皆さんは、危ないから絶対に真似しないでね。

 不意に背後から耳に息を吹きかけられ、香也は、背筋にぞくぞくぞくっとするような感覚を味わった。
「……す、すげーな……テンちゃん……」
 目を丸くしていた羽生譲は、今では目を点にしている。
「……背骨の位置とかは、外から触れば分かりやすいし、それと解剖図を見比べれば、正常な状態とそうでない状態との区別はつきやすいし……。
 ボク、力と記憶力は人並み以上にあるから、これくらいのことは簡単……」
 背後からぎゅうーと香也に抱きついたまま、テンはそんな解説をしながら、指先で香也の脇腹をまさぐる。
 香也は、くすぐったいのと気持ちいいのとがないまぜになったような感じを受け、身をよじる。
 しかし、手足を使って香也に密着しているテンは、当然のことながらその程度では振り払われない。

「……ず、ずるいぞ! テンばっか!」
 今度はガクがいきりたち、
「……ぼ、ボクだって!」
 と、正面から香也に抱きつこうとする。
 しかし、背後から回されたテンの手足が邪魔になって、香也の体に密着できない。
「……ず、ずるいぞ! テンばっか!」
 いいながらガクは、それでも香也の首にぶら下がり、賢明に体を擦り寄せようとする。

 少し離れたところにいる羽生も、テンやガクを止めようとはせず、
「……いやー、もてもてだなぁー、こーちゃん……」
 とかなんとかいいながら、呑気に見物に回っている。
 しかし、その呑気さも、長くはそう続かなかった。

「……ふん……。
 いいもんね……」
 とつじょ、ガクがにんまりと笑い、湯の中にいれた手で、先程から限界ギリギリまで怒張している香也のナニを、力任せつかみあげる。
「……おにーちゃんのこれは、ボクの!」
 ガクが香也の竿を握り締めた途端、香也は「うひゃっ!」という情けない声をあげた。
 ギリギリと締め付けるほど強くは握っていないが、それでも容易に振り払えないくらいには、ガクは香也自身をしっかりと握っている。
「……これ……こうやって、上下にさすると、気持ちいいんでしょ?
 おにいちゃんの、気持ち良くしてあげる……」
 そういいながら、ガクは、香也の竿を上下にさすりはじめた。
 香也をつかんだままガクの手が上下に動くのに連れて、香也の亀頭がガクの手にすれる。
 自慰の時とは違うその感触に、香也はなんともいえない気持ちになった。
 その台詞とガクの肩の動き、それに、香也の表情から、湯の下で行われていることを察した羽生は、流石に放置しておくわけにもいかない、と、思ったのか、
「……ちょっと、やめやめ!
 それ以上は、しゃれになんないって……」
 とかわめきながら、香也に取り付いたテンとガクを引きはがしにかかる。
 自分より小さな子に無理やり射精させられたら……以後、香也はある種のトラウマを抱えるのではないか……と、羽生は懸念した。

 テンとガクの二人は、意外に素直に香也から身を離す。
 二人が離れると、香也ははぁはぁあえぎながら三人から離れ、三人に背をむけてタイル張りの湯船の縁にしがみついた。
 香也にしてみれば、本当ならすたこらさと逃げたいところだが、湯船から出れば完全に勃起した自分のものを三人の目に晒すことになる。今更、とはいえ、子供にじゃれつかれて感じてしまった……証拠を一目に晒すのは、恥ずかしかった。
「……ほれみろ……。
 こーちゃん、すっかりおびえちゃったじゃんかよう……」
 そうした香也の様子をみて、羽生譲が憮然とした口調で、二人にいう。
「……だってぇ……」
「おにーちゃんと、仲良くしたかったから……」
 羽生に諌められ、テンとガクは一応、しょぼーんとなった。
 しかし、その直後、ガクが爆弾を投下する。
「……それに、おにーちゃんだって……。
 楓おねーちゃんと、孫子おねーちゃんと……三人一緒にえっちしているんだから……ボクたちとしてくれても、いいじゃん……」
 ガクがそういった後、加納家の浴室の空気は数十秒ほど凍りついた……。

「……なにぃー!!!」
 静寂の後、浴室内に羽生譲の驚愕の声が谺する。

[つづき]
目次

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