第六章 「血と技」(47)
全裸の荒野は、半裸の茅を正面から組み敷いた形で、激しく動き続ける。動き続けながら、茅の声を聞いている。
茅は……行為の最中に、よく、声を出すようになった……と、思う。
あんまり大きな声を出すので、芝居かと思うことも度々あったが、どうやら、自然にでてくるものらしい……と、今では、思っている。
普段、自分の表情を表に現すことが少ない茅は、行為の最中にだけは自分が感じていることを素直に現す……と、思いかけ、荒野はそれをうちけした。
いや……茅と荒野の二人だけの時は……大勢でいる時よりは、茅は、比較的表情をよく出す……と、思い直す。
『……そっか……』
と、荒野は、納得した。
自分は……茅のいろいろな顔が見たいから、こうして頑張っているのか……と。
茅は、ドレスが皺くちゃになるのにもかまわず、ベッドと荒野の間に挟まれて、身もだえしたり自分のドレスを掻き毟ったりしている。
今日の茅の乱れ方は、今までで一番凄いことになっていた。
回数を重ねて、感覚が鋭敏になってきた……ということもあるだろうが……普段、感情を抑制している反動が、こんなところにくるのではないか……と、荒野は、心配になってしまう。
茅も、普段からもっと喜怒哀楽を素直に現せばいいのに……。
そんなことを考えながら、本能に従って蠢いている間に、茅も荒野も、急速に絶頂に向かっていった。
二人とも何度も肌を重ねているので、相手の反応からどこまで昇り詰めているのか、ある程度推測できるようなってきている。
荒野が「終わり」に近づいているのを察知した茅は、荒野の両手を探り、掌を、強く握り締める。
悲鳴のような嬌声の合間に、自分も行きそうだ、といった意味のことを、何度も告げたあと、背筋をそらせ、硬直し、細かい痙攣をする。
荒野は、茅の中にあふれ出そうとする自分をすんでのところで抑え、引き抜き、勢いよく茅の上半身を汚す。
荒野の分身は、勢いよく飛び散って茅の顔にまで届いた。
「……荒野の……匂い……」
……しばらく身を硬直させた後、茅がぽつりとそういって、顔に付着した荒野の白濁液を自分の舌でなめ取る。
「……へんな味……。
荒野の……味……」
茅は、呟く。
「……そんなもん、口にするなよ……」
荒野は、そう苦笑いした。
「……荒野……茅の中に出してくれなかった……」
「気軽に中にだしちゃ、いけないものなの……」
「中に、暖かい荒野があふれてくる感触……好きなのに……」
「……そういうのは……もっと落ち着いて……」
子供を作っても大丈夫な環境を整えてからな……といいかけ、荒野は、あわてて別のいいかたをする。
「……おれたちが、大人になってからな……」
そんな荒野をみて、茅がくすりと笑った。
荒野は、茅に、考えていたことを見透かされたように感じ、ばつが悪い思いをする。
「茅……。
荒野より、大人……。
おねーさん……」
「……はいはい。おれはガキです……」
荒野は、苦笑いをさらに大きくした。
「……おとーと……。
おねーさんをバスルームに連れて行くの。抱っこ。お姫様抱っこ……」
「……はいはい。
その前に、よごれたお洋服、脱ぎましょうね……」
荒野は、自分からは動こうとしない茅の服を脱がし、
『……思いっきり、汚しちゃったな、これ……』
などと思う。
自分の精液を振りかけたドレスをクリーニングに出すことは抵抗があった。かといって、孫子がわざわざ人を呼んで誂えてくれたものだから、おいそれと捨てる訳にもいけない……。
『結局は……クリーニングに出すんだろうな……』
と、そんなことを思う。
願わくば……乾いた後、匂いなどがあまり残らないように……。
そんなことを考えながら、荒野は茅の体に纏わり付いていた衣服を総てむき、茅の体を両腕で抱えてバスルームに向かう。
もう遅い時間だったので、今夜はシャワーだけで済ませるつもりだった。
両腕に抱えた茅の感触は、以前よりもムッチリとしていて、荒野の皮膚と接触する部分は、押し返してくるような感触がある。
茅の体は……女性らしく、丸みを帯びはじめている……と、荒野は感じた。
「……茅……前より少し、肥えてきてないか?」
うっかりそんな聞き方をしたら、「むぅ」と頬を膨らませて、肩のあたりをいやというほど抓られた。
「……いや、そういう意味じゃなく……。
茅、女らしい体になってきたなぁ、と……」
バスルームに入った荒野は、茅を降ろしながら、先程の言葉をいい直す。
「……そういう荒野も……また少し、背が伸びたの……」
荒野も茅も……成長期のただ中であり、一般人とは微妙に違う加納の形質を受け継いではいても、まだまだ成長の余地が残されている時期だった。
「……おれたち……」
荒野は「無事、大人になれるかな?」といいかけ、あわてて言葉を止める。その不自然な空白を、シャワーのコックを捻る、という動作でごまかした。
「……どんな大人に、なるのかな?」
「……荒野はもっとたくましくなって、茅はもっと色っぽくなるの……」
茅がいきなり「色っぽく」などという似合わない単語を吐いたので、荒野は吹き出しかけ、あわてて顔を背けた。
そうした荒野の反応を敏感に感じ取った茅は、「むぅ」とむくれながらも、荒野の手首を取り、荒野の掌を自分の胸の上に置き、
「……ほら……。
胸も、大きくなっている……」
そう、いった。
確かに……茅の言葉を通り、茅の乳房は、以前よりは少し豊かになっているのかも知れない。押し付けられた掌を押し戻す感触が以前よりも強く、前よりも中身が詰まっているような感触があった。
しかし、そうした感触より……茅の乳首とあばらごしに、荒野は茅の心臓の鼓動を感じ……その鼓動の方が、荒野を興奮させる。
荒野の掌は、茅の生命の根源に近い場所に当てられていた。
「……荒野も、茅も……楓も、才賀も、絵描きも……テンも、ガクも、ノリも……みんなで、ちゃんと大人になるの……」
茅は、髪が濡れるのにもかまわず、シャワーを浴びながら、荒野の胸に抱きつく。
「そして……茅は、荒野の子を産むの。
いっぱいいっぱい産んで……二人で育てるの……」
どちらともなく、口唇を重ねた。
頭上からシャワーの飛沫を浴びながら、しばらく、包容しあい……。
「……いつになるか、分からないけど……」
荒野は、腕の中の茅に囁く。
「……絶対に、そうするよ……。
おれも、茅も……他のみんなも……全員、笑って過ごせる場所を……おれたちがつくるんだ……」
茅にはそういいながら、内心では荒野も、
『……障害や、不安要素は……今のところ、てんこ盛りだけどな……』
などと思っている。
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つづき]
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