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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(57)

第六章 「血と技」(57)

 竜齊とのビデオチャットを終え、さて、メールの続きを……と思ったところに、今度はインターフォンのチャイムが鳴った。今度は誰だ? と思いながらスコープを覘いてみると、シルヴィ・姉崎が立っていた。一時は家族同然にしていた間柄でもあり、荒野はすぐにドアを開け、招き入れる。
「……で、今日は、なんなの? 用があるんでしょ?」
 コーヒーを入れ直しながら、荒野は単刀直入に尋ねる。
 変な遠慮が必要な関係ではないし、荒野の他に誰もいないタイミングで来訪してきたのが偶然とも思えない。
「……そう。
 昨夜、みんなで話していた一件のことなんだけど……」
 シルヴィは意味ありげに微笑みながら、切り出す。
「……姉の情報網、使いたくはない?」
「対価は?」
 即座に、荒野は返す。
「コウの、ベイビー」
 シルヴィも、即答だった。
「姉も欲しがっているし、ヴィ自身も、欲しい……」
 そんなことだろうな……と、荒野は思う。
 以前にもそんなことをいっていたし……荒野の血、と、加納本家とのコネクション強化……前者は、うまく子供に荒野の特性が引き継がれる、という保証はなかったが……姉の中に、荒野の子がいる……というコネクションの方は、確実で……かつ、姉にとって、魅力的な筈だった。
 姉は、そうして少しづつ世界と交合し、力を蓄えてきた血族だった。
「……考えておく」
 荒野は、素っ気なく、当座の結論を伝える。
「なんで躊躇うの?
 コウにとっては、ほとんどリスクがない取引よ……。
 ベイビーは、姉が責任を持って育てるし……」
「解っている」
 荒野は頷いた。
「ヴィのことは、嫌いじゃないけど……。
 この年齢で子持ちになりたくないし、自分の子供を担保代わりにしたくないんだ……」
 その実、茅のことを考えて、踏み切れないでいた。
 あるいは、荒野と茅との関係など、一族にはすでに周知なのかも知れないが……。
「あの子のこと気にしている?
 別にヴィは気にしないわ。ヴィったち、所詮、イチゾクだし……」
「……おれが、気にするんだよ……」
 荒野は低い声で、しかし、きっぱりと断言する。
「おれ……まだまだそういうの、気にする年頃だんだ……」
 その荒野の返答を聞くと、シルヴィは声を上げて笑った。
「コウ……本当に……イッパンジンになれると思っている?
 羊の群れに混じっても……狼が、羊になりきれるわけではない……」
「わかっているよ……わかっている……つもりだ……」
 荒野は、弱々しく首を振った。
「でも……やれるところまで、やってみたいんだ……。
 あー……。
 それが……若さってもんだろ?」
 荒野が冗談めかしてそうつけ加えると、シルヴィは、荒野に優しく微笑む。
「……all right!
 それが、コウの、答えってわけね……」
 そして、肩をすくめながら、さらにいった。
「……コウの気持ちは、分かった。
 でも……あの子……カヤにも、この取引のことを、話してくれないかしら……」
「……茅に?」
 荒野は、片方の眉を吊り上げて、問い返す。
「……大丈夫。
 ヴィがこういう取引を持ちかけてきた、っていうことだけ、伝えてくれればいいから……。
 案外……。
 コウとは、違う結論を出すかもよ……」
「……あいつ……嫉妬深いんだぜ、意外に……」
 荒野は、しみじみとした口調でいうと、シルヴィは、また笑った。
「……知っている。
 でも、これは普通の浮気とは少し違うし……。
 カヤ、頭がいいから、この取引の旨味もちゃんと飲み込める……。
 コウは、ヴィにこういうことをいわれた、と、伝えるだけでいいの……。
 それとも……いつくるか、本当に来るかどうかも分からない相手を、いつまでも、何年も、待ち続けるつもり?」
「やつら……襲撃者に、心当たりがあるのか!」
 荒野の顔つきが、厳しくなった。
「コンタクトを取れるのか! 居場所がわかるのか!」
「……さぁ……」
 シルヴィは、曖昧に笑って、荒野の追求をかわす。
「今日は、そのことを伝えたかっただけ……。
 ヴィは、もう、オイトマするわ……」
 結局、シルヴィは、コーヒーメーカーが新しいコーヒーをいれる前に、いいたいことだけをいって、さっさとマンションを出た。

 残された荒野は……大量のコーヒーをちびちびと啜りながら、様々なことを考え直してみる。

 つまるところ……ガス弾を使い、佐久間現象を操った勢力……というのは、本当に、荒野が想定している通りの者たち……なのだろうか?
 と。

 荒野たちが「姫の仮説」と呼んでいたものも……いざ、真相が明かされてみると、的を射ている部分と、大きく予測から外れていた部分が、ない交ぜになっていた……。
 この襲撃者についても……荒野たちが、何か大きな見落しを……している可能性は、ないだろうか……。
『それを判断するのには……まだ……判断材料が……少なすぎる……か……』
 昨夜、提示された情報を……そのまま、鵜呑みにしてはいけない。
 裏をとるまでは、余分な先入観を持たないように、しなければならない……と、荒野は自戒する。
 現状……荒野自身が、リーダーのようなポジションに立ってしまっている。
 荒野が判断ミスを犯せば、その他の人間に、多大な悪影響を与える……。
『……人に、指示を与える立場……というのも……』
 これはこれで……まるっきり、楽ではないよなぁ……と、荒野は、心中でぼやいた。

[つづき]
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