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彼女はくノ一! 第五話 (142)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(142)

 茅がいれてくれたお茶を喫した後、まずは楓が各種武器類の実演をして見せることになった。
「ガクに教える」というのが当初の目的だったが、玉木をはじめとする放送部員や徳川篤朗と浅黄、それに、才賀孫子やテンまでもが、物珍しいさでぞろぞろとついてくる。
 楓が、皆とカメラに取り囲まれて、解説しながら実演する、という格好だった。
「……ええと……」
 楓は、これほど大勢の前で自分の技を披露したことがない。戸惑ってはいたが、身に染み付いた技を説明したりみせたりすることに、迷いはなかった。
 この場にいる一人一人が、大事な仲間である……という意識が、楓にはある。
「……まずは、手裏剣、ですね……。
 存在自体は、時代劇でおなじみだと思います。
 投擲する刃物全般を指す名称ですが、いろいろな種類があり、また、同じ形状のものでも、想定する飛距離によって、重心が違うものが何種類もあったりします……」
 楓は実際には何種類かの手裏剣を一つ一つ取り出し、「これが近距離用、これが遠距離用」と説明しながらみんなに渡す。
 特に、徳川篤朗とテンが、興味深げにしげしげと眺めたり、刃紋を透かして見たりしていた。
「……時代劇なんかだと、忍専用の武器とされていますが、実際には多くの武芸者が手裏剣術をたしなんで来ました。
 武術のうち、剣術のみが重視されるようになるのは江戸以降のことで、それ以前は、組み討ちや棒術、槍術まで含めた体系として伝承されることが多く、手裏剣術も、その一角としてまとめて伝えられていました。
 特に、、単独で諸国を回遊する武芸者がいる時代には、手裏剣術は、食べ物を確保する手段、でもあったわけですね。山ごもりしたりする時、これができるのとできないとでは、食生活に雲泥の差がでます……」
 そんな解説をしながら、楓は手首のスナップだけを効かせて、何種類かの手裏剣を少し離れた廃材に向け、ひょいひょい、と放って見せた。
 まったく力を入ていないようにみえたのに、楓が放った手裏剣は、「カッ、カッ、カッ」と音をたて、ことごとく廃材に突き刺さる。
「……ええ。
 このように、習練次第では、いろいろな態勢から打てるようになります。
 あ。手裏剣は、本来、『投げる』というよりは『打つ』というのが正式な言い方だそうですが……それは、こういうモーションから来たいいかただと思います……」
 そういって楓は、こんどはゆっくりとした動作で、棒手裏剣を、正面の廃材に向けて、打つ……『打つ』という語感にふさわしい、肩から先の腕全体を大きく動かすモーションだった。
 少し、ダーツを投げる時の動作に似ている。
「……これが、やはり一番狙いが安定するフォームですね。基本形です。
 でも、実際には飛んだり跳ねたりしながら、動く敵にむけて使う訳だから、どんな態勢でも使えるようにならないといけません……」
 いいながら、楓は横向きになったり、背後に向けて肩越しに手裏剣を使ったりする。
 手裏剣が音をたてて廃材に突き刺さるたびに、拍手が起こる。
「……くないや棒手裏剣は、こんなところでしょうか?
 あとは、十字や八方、ですね。
 やはり時代劇などでおなじみの、こういう平べったいやつです。
 これは、左手で重ねてこの当たりに持っていいて……」
 楓は、重ねた八方手裏剣を左手で持ち、臍の前あたりに固定し……。
「……右手で、こう……」
 その左手の上に右手をひらめかせ、八方手裏剣を矢継ぎ早に投擲する。
「カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ……」という音を立てて、正面のほぼ同じ場所に、手裏剣が刺さる。
 狙いが接近し過ぎていて、先に刺さった手裏剣の上にさらに手裏剣が刺さり、ばらばらと弾かれた。
 やはり、拍手が起こる。
「……つまり、連発するのに便利なのように、偏平な形状をしているわけですね……。
 狙いは二の次で、弾幕をはる時なんかに、使います……」
「……弾幕、で思い出したが……」
 徳川篤朗が片手を上げて、楓に質問をした。
「……銃器は、使用しないのか?」
「使用する場合も、ありますが……。
 特に海外で活躍する人たちの中には、現代兵器を好んで使用する人たちもいます……」
 楓は、慎重に言葉を選びながら、答える。
「でも、日本だと、法律の問題もありますし……。
 それがなくっても、重さ、という要素があります。
 常に兵站がしっかりしていて、いくらでも弾薬が補充できる状況であれば、銃器がいいのですが……。
 わたしたちの仕事だと、単独での潜入が主ですから……一度に持ち歩ける荷物の重さも、おのずと限られて来るわけです。
 銃器プラス弾丸の重さ……を持つより、同じ重さの手裏剣を抱えた方が、弾数は多くなる……というのが、一族の一般的な考え方です……」
「……ねーねー、楓おねーちゃん……」
 好奇心に顔を輝かせたガクが、楓に摘め寄ってくる。
「もう、説明はいいから……ボクも、実際にやってみて、いい?」
「あ……はい……」
 楓が、おずおずと手裏剣をガクに差し出す。
 もともと、それが目的である。
「……ガク……」
 手裏剣を受け取ったガクに、テンがいった。
「まだ、力いっぱい動いちゃ駄目だよ。
 軽く、軽く……ね。
 傷口開くから……」
「……わ、わっているよ……」
 ガクは、口唇を尖らせながら、答える。
 そして、楓に基本のモーションの見本を見せてもらったり、何度か自分でもそれをやってみて、楓にチェックして貰ってから、実際に手裏剣を「打って」みた。
 ガクが放った手裏剣は、楓が放ったものが奇麗に刃先を前にして飛んで行ったのにくらべ、きりもみ状に回転しながら正面の廃材にぶちあたり、乾いた音を立てて、跳ね返った。
「さ……刺さらない……」
「最初は、そんなもんです。
 真っすぐ飛んだだけでも、たいしたもんですよ……」
 楓は、特に慰めるふうでもなく、ガクにそういった。
「……じゃあ、次はボク!」
 テンが元気よく片手をあげ、ガクの手から手裏剣を奪う。
「……やっ!」
 という掛け声と共に、テンが手裏剣を「打つ」と、今度は、「カッ!」と小気味良い音がして、廃材に突き刺さった。
「……本当に、初めてですか?」
 楓も、目を丸くしている。
「うん! 楓おねーちゃんのフォーム、盗んだ!」
 テンは、得意げに胸をはる。傍らで、ガクが、明らかにむっとした表情をしていた。
「……茅も、やるの……」
 今度は、メイド服姿の茅が、前に進み出る。
 テンの時と同じく、刃先がまっすぐ標的に向かっていったが、廃材には刺さらなかった。
「……むぅ……やはり、筋力が、不足しているの……」
 茅は頬を膨らませたが、楓は茫然としている。
「でも……。
 茅様も……フォームは、完璧です」
 金属の廃材に、刃先が突き刺さる……という方が、どちらかというと、異常なのだ。

 それで、ガクは、ますます不機嫌になった。
 ムキになって何度か挑戦したのだが……。
「……なんか、やればやるほど、フォームがひどくなってますけど……」
 楓が、おそるおそる、といった感じで、ガクに指摘する。
「……だって、だって!」
 涙目になったガクが、困惑した声で答えた。
「傷口開くから、力を込めちゃいけないって……。
 加減が、わからないんだもん!」
 それで、ムキになればなるほど、不安定な心理状態を反映して、ますますフォームが乱れる……。
 悪循環、だった。
「もう! いい!」
 ついに、憤慨したガクが、手裏剣をほうり出した。
「傷、直す! 根性で、直す! 一日、一刻でも早く、傷口をふさぐ!」
「……ま、まあ……」
 楓は、ガクから目をそらした。
「それまでは……理論面だけを学習しておいた方が、無難ですね……」

[つづき]
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