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彼女はくノ一! 第五話 (145)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(145)

 徳川の工場と狩野家との距離は、「徒歩で行くと時間がかかりすぎる。本数が少ないバスは、時間が合うかどうか分からない。多人数で利用するのなら、バスよりもタクシーの方が、一人あたりの料金は割安になる」といった頃合いだった。だから、タクシーを呼ぶことに、あまり抵抗は起きない。タクシーを読んでも、料金を頭割りにすれば、楓たちでもあまり負担に感じないですむ小銭で済んだ。
「……でも、頻繁に何度も往復するようとなると……」
 楓は、呟く。
 楓たちにしてみれば、実は、どうということもない距離なのだが……これ以上、一目を集めるような真似は、謹んでおきたい……。
 いわれるように、自転車が何台かあったほうが、便利なのだった。
「……不法投棄ゴミの中のものも、処理業者に引き渡して終わり、というよりは、再利用できるものは、どんどん修理して、リサイクルするべきかもしれないですわね……」
 孫子も、頷く。
 修理して使える者は、修理する……。その後、バザーやネットオークションなどで、格安で売り出し、資金源の一助にする……。
 不法ゴミの一時集積所、として、用地と建物を確保し、必要な人手は、できるだけボランティアの人員で賄う……。
 その建物は、孫子や楓の射撃場や習練場も、兼ねる。大きめの倉庫を確保し、別のフロアに関係者以外が入ることができない場所を作ればいいことだ。
 そのように都合のいい不動産が近隣にあるかどうかは、まだ分からないが……孫子は、そうした場所を確保するために必要な資金を自分で調達することが可能だった。
 タクシーの中で、孫子は、そうした構想をみんなに話した。
「……資金は才賀にまかせるけど……そういうことをするには、ある程度まとまった人数、特定の修理技術を持った人が、必要になるの……」
 茅が、難点を指摘する。
「……そんなもの、外から教師役を雇って、希望者に覚えさせればいいのです……」
 孫子は、そういって胸を張った。
「……今のペースで行くと、ボランティアの希望者は、まだまだ増えます。人数だけではなく、さまざま経験を持った年齢層の人たちが来るはずですわ。
 ……そうした人たちに、教えをこう、というのも、手ではないですか?」
「それは……経験を引き継ぐための、場を作る……ということなの……」
 茅は、頷いた。
「……もうすぐ……団塊の世代の人たちが、定年に入る……。
 そうした人たちの中には、さまざまな技術を持ったまま、仕事から離れた人もいて……」
「ええ。
 材料は、そこいらに転がってるゴミみたいなもの。
 講師は、時間と技術を持ち、健康な方々。生徒は、技術の習得を希望する、若い方々……」
「場所や設備、それに、人材の紹介やスケジュールの調整は、こちらで行う……いけそうなの」
 ……孫子と茅は、目をぱちくりさせて見守っている楓をよそにして、かなり詳しい部分まで構想を詰めはじめた。

 狩野家に着くと、楓はすぐに居間を抜けて台所に入った。制服姿の樋口明日樹も、香也や荒野とともに炬燵に入っていて、どうやら、学校帰りに引き留められたらしい。
 台所では、三島百合香がサラダに使うドレッシングを作っていた。すり鉢で胡麻をすり、それをボールに空けている。
「……なんだ、楓か……。
 ルーは荒野が用意したからな。こっちはこの程度しかやることがなくてな……」
 楓が近づいたのに気づくと、三島は顔だけをこっちにむけて、そういった。
「……この程度、で……ドレッシングを、一から作らないでください……」
 楓の常識では、ドレッシングなんか、市販の物を使えば十分……なのであった。
「なんだ? こんなもんは、こんなもんだろ。
 材料ボールにほうり込んで、掻き混ぜるだけであがり、だ……」
 そういいながら、三島は、すった胡麻をいれたボールの中にお酢やサラダオイルなどをぶち込み、しゃかしゃかと掻き混ぜはじめる。
「……ほれ、手伝うつもりがあるのなら、野菜切るなり皿を用意するなりしろって……」
 そういわれて、楓は、あわってサラダに使う野菜を切りはじめた。
 一度、ゴルフバッグを自室に置いてきた孫子も台所にはいってきて、皿にご飯を盛って、ルーの入っている寸胴鍋をみていた飯島舞花に回す。舞花はご飯を盛った皿にルーをかけて、それをテンとガク、茅が居間に持っていく。
 荒野が作ったカレーは、豪華な材料を使っていた訳ではないし、なんの変哲もない平凡な、日常的な料理でしかなかったが、その日の食事は、かなり和やかなものになった。
 荒野が、飯島舞花や樋口明日樹から、それまで秘密にしていた事柄をつつかれる……という場面もあったが、それは、秘密にしていたことに対する非難というよりは、「やっぱり、裏があったのか……」という確認、それに、「これから、大丈夫なのか?」という心配からくるものだった。
 これまで、それなりに付き合いがある明日樹や舞花は、荒野や楓たちの人柄をそれなりに理解もしており、裏の顔が判明した現在も、「まさか!」と驚くよりは「……やはり……」と納得する部分が多かったらしい。
 とりあえず、この二人に関しては、荒野や自分が一般人とはいえない存在であっても、特に態度をかえる様子がみられなかったので、とりあえず、楓は安心した。
 三島は、ドレッシングの中に砕いた胡桃をいれたり、サラダの上に薄くスライスをして、油で揚げたニンニクを乗せていたり、で、それまで料理のことにあまり関心を持たなかった楓をひそかに落ち込ませた。

 雑談をしながらの食事を終え、さりげなく席を立とうとする香也の両腕を、打ち合わせをしていたわけでもないのに、楓と孫子がほぼ同時に捕らえる。
 香也が風邪をひいていた期間、中断していた勉強を、再開する……という意図は、言葉にしなくても、楓と孫子とで通じ合っていた。
 香也は……教えたことは覚えるから、決して記憶力が劣る訳ではないのだが……それでも、まるで熱意がないため、学校の成績はさんざんだった。毎晩の勉強が奏効して、三学期に入ってからは、多少持ち直してきたが……それでも、試験をやれば、平均点に届かない学科も多い。今までにサボっていた範囲が大きすぎて、なかなか追いつけない状態だった。
 みると、玉木も、飯島舞花と樋口明日樹に捕まっていた。
 結局、羽生譲と三島百合香を除いた全員で、急遽勉強会をすることになり、荒野と舞花は自分の勉強道具を取りに、一旦、隣のマンションに帰った。

[つづき]
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