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彼女はくノ一! 第五話 (146)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(146)

 夕食後、茅がいれてくれた紅茶を啜りながら、三時間ほどみんなで勉強をした。
 昨日、一昨日と香也の体調が思わしくなかったので勉強どころではなかった。その分を取り戻すため、という口実はあるにせよ、それだけの長時間拘束されることを香也が特に嫌がらなかった(ように、見えた)のが、楓には意外だったし、それに、孫子や、その他の面々も、楓の目からは、割合に楽しそうに見えた。
 もちろん、「勉強」であるから不必要な雑談をひっきりなしにしている訳ではない。が、荒野は玉木や茅と「学校で行う予定の勉強会」なるものについての打ち合わせをぽつぽつとしているし、玉木は、そうしたイベントの段取りをするときの水を得た魚然とした活き活きとした様子と、自分の勉強に向き合った時の悄然とした様子をめぐるましく往復するのが、みていて無性におかしかった。真面目な樋口明日樹は、しきりに一年先の受験のことを気にして神経質になっているし、飯島舞花は、周囲のやり取りに適当に相槌やつっこみをいれながら、自分の教科書やノートに向かい合う時は、意外に真剣な顔をしている。そのうち、話の流れで茅は、勉強会のためのカリキュラムを組む、といい出し、荒野たちの教科書を持って、テンとともに羽生の部屋に向かった。羽生の部屋にはスキャナーがあるから、必要な部分を取り込んで、そのデータを生かすのであろう。
 その席で話しているのを聞いた所では、樋口明日樹、玉木玉美、飯島舞花はそれなりに成績がよく、志望校はともに、県内でも一、二を争う進学校だ、という。その学校は佐久間沙織が入学する予定の学校でもあり、通学している生徒の偏差値が高いことと、その割に、自由な校風であることで知られている。つまり、三人とも、その学校を狙えるだけの成績を今の時点でキープしている、ということで、真面目な樋口、淡々と作業として学習に必要な工程を消化する舞花は、の二人はともかく、玉木までもがそれだけの成績を取っていた……という事実に、楓は軽い驚きを覚えた。
「……不得意ではないけど、苦手なんだよ……」
 不審な顔をしたのは楓だけではなかったのか、玉木は、炬燵にあたっている面々をぐるりと見渡して、そうつぶやいた。
 半ば、涙目になって、
「……なんで勉強って静かーに地味ーにじっーとしてやんなければならないんだ!」
 とか、ぼやいている。
「……安心しろ。どうあがいてもお前は、地味でも静かでもない……」
 孫子や舞花に古文の説明を聞いている合間に、荒野が玉木につっこんでいる。
「第一、嫌々やってそこそこの成績をキープしているお前がそんなこといっているのを、だな、一生懸命やってお前以下の成績しか取れないやつが聞いたら、気を悪くするぞ……」
「わたしの場合、成績がいいっていうより、テストの結果だけがいいって感じなんだけど……」
「そういや、玉木のヤマはよくあたるって話し聞いたことあるな……玉木の場合、頭がいいというより、要領がいいのか……」
 玉木とは違うクラスの舞花が、伝え聞いた情報を披露すると、玉木は、
「……そうそうう。授業中の先生の態度チェックしていれば、重要な箇所はだいたい分かるんだから、そこだけ覚えておけばそれなりの点数はとれるよ……」
 と頷いていた。
「……そんな小手先テクでも、点数が取れるのは凄いと思うけど……」
 樋口明日樹は、微妙な表情をしている。
「……そんな付け焼き刃で、本番の入試まで、いけるかな?」
「……それなんだよねー。
 定期試験が終わるとスパッと忘れちゃったりするし……」
 わははは、と、玉木は、他人事のように笑った。
「……そういや、おにーさんも来年は三年なんだよな。
 進学とかどうするんだ? 卒業したら、やっぱ、家業の方に戻るの?」
 舞花が、荒野の方に顔を向け、尋ねる。
 荒野は、以前、玉木にも同じようなことを聞かれていた。
「……おれが卒業するまで、この生活が続くようなら……とりあえず、進学……かな?
 学歴はどうでもいいけど、茅はまだ卒業しない訳だし……」
 荒野は、考えながらそう答えた後、
「でも、今は……正直、そこまで先のこと考えている余裕、ない……」
 と、付け加えた。
 確かに……今の荒野は、外部の変化に対応するだけでイッパイイッパイなのだろう……と、楓にも容易に想像できた。
「……あの……」
 楓が、おどおどと声をかける。
 楓自身は、毎日、孫子と一緒に香也の勉強をみることで、自分の復習にもなっているので、かなり助かっている部分もあるのだが……さまざまなトラブルと事後処理に加え、茅と二人で生活し、当然のことながら、家事も二人で分担しなければならない荒野は、ほとんど自分の時間は取れないのではないか……と、ここにきて、はじめて、楓は気づいた。
「……加納様は……今、本当にお忙しいんですよね?
 よかったら、定期的にお掃除とかお買い物とか、お手伝いに……」
「……いいの」
 楓がそういいかけると、突如、背後から茅の声がした。
 茅の気配を察することができなかった楓は、びくっと背中を震わせて、慌てて背後を振り返る。
「荒野にご奉仕するのは、茅。
 だから……楓は、いいの……」
 下から見上げた茅の表情は……どこか、思い詰めているような真剣みを感じさせた。
「……あつ……ああっ……。
 はっ、はいっ!」
 メイド服姿の茅に半ば気圧された形で、楓は、そう返事をせざるを得なかった。
 声が、裏返っていた。
「……なあ、おにーさん……」
 舞花が、荒野に問いかける。
「今更、こういうこと聞くのもなんだけど……。
 この間の説明会の話しでは、茅ちゃんたちはアレだっていうことだから……つまり、その、茅ちゃんとおにーさんは、実は血が繋がっていないんだろ?」
 舞花は、のんびりとした口調で、核心をついてくる。
「……お……おう……」
 正面から、そういわれると……荒野も、素直に答えるより他、ない……。
 日曜日の説明会に参加していなかった樋口明日樹は、玉木の耳元に口を寄せ、小声で「……アレってなに?」とか尋ねている。玉木の方も、「茅ちゃんとかテンちゃんとかは、実は……」と小声で、明日樹の耳元に囁くように、説明しはじめる。
「そっか……なら、何も問題はないな……。
 そうだよな。二人で、一緒に住んでいるんだから、そうなってもおかしくはないよな……」
 舞花は、うんうんと一人で頷いている。
「茅……荒野とらぶらぶなの……」
 茅が、炬燵に入っている荒野の背後に近づき、荒野の頭に両腕を回し、そのまま抱き締めた。
「……あ、あの、このことは……」
 荒野は、心持ち青い顔をしている。
「わかっている。
 表向き、兄弟ということになっているからな。もちろん、いい触らしたりはしない」
 舞花は、真剣な顔をして頷いた。
「……そんなこと、広める気があったら、とっくにしているって……」
 玉木は、澄ました顔をして、冷めかけた紅茶を啜った。
「……兄弟にしては、なんか仲が良すぎるっていうか……くっつきすぎっ……とは、思ってはいたけど……」
 明日樹は、そういってため息をついて、香也の方をちらりとみた。

 三島百合香と羽生譲の年長者二人は、酒盛りをしながらそうしたやり取りを、いかにも面白そうな顔をして眺めていた。

[つづき]
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