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彼女はくノ一! 第五話 (148)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(148)

「……と、いうわけで、第一回、これからこーちゃんをどうしようかな? 家族会議をはじめたいと思います……」
 そういう羽生譲の顔は、どこか虚だった。
 あるいは、「……なんでこんなことになったんだろう……」と思っているのが、ありありと表情にでていた。
「わたしとしても、あんま大きな顔をして仕切れるような立場では無いんだけど……なんか、このまま放置しておくと、どんどん事態がこじれそうなんでな……。
 真理さんから留守を預かっている関係でも、座視するわけにもいかんだろう、と、こうしてやりたくもない会議を開いている訳ですが……。
 ……おーい……。
 肝心のこーちゃん。
 ちゃんと聞こえているかー?
 なんか、心ここにあらず、といった感じだぞ……」
「……んー……」
 香也は、いつも以上にぼーっとしていた。
 あるいは、「ここはどこ、わたしは誰?」的な心理状態にあった。
「……こーちゃんが、終始受け身だったのは理解している。っつーか、受け身だったから、ここまで拗れた、ともいえる。
 こーちゃんの性格はよくしっているつもりだけど……ここいらで、びっしり、相手を一人に絞っちゃえば、遺恨は残るかもしれないけど……それでも無用のトラブルは減るよ……」
 羽生は、とりあえず、そういい渡した。
「……あんまし、こういうのもなんなんだけど……。
 この中で、誰か一人に絞って付き合ちゃえば?
 そしたら、他のはおとなしくなる。ならざるを、えない。
 付き合ってみて駄目だったら、次に移ればいいわけだし……」
「……んー……でも……」
 香也は、それでも、躊躇った。
「……その、便利だから、とか、丸く収めるため、とりあえず……っていうのは……なんか、違うと思う……」
「…………だよなぁ……」
 香也のそうした反応を半ば予期していた羽生は、がっくりと項垂れた。
「……というか、こーちゃん……。
 この中でも、あるいは、家の外の人でも……今の時点で、女の人と付き合いたいって思ったこと、ある?」
 香也は、ぶんぶんと首を横に振る。
「……ぼく……女性は、嫌いじゃないけど……。
 その、付き合うとかそういうのは……まだまだ早すぎると思う……」
 羽生は、香也の言葉に頷いた。
 これも、予想通りの反応だ。
「……さて、お嬢さん方……。
 こーちゃんは、こう申しておりますが……」
 そういって、羽生は、「お嬢さん方」の方に向き直る。
 すなわち、楓、孫子、テン、ガクの四人に。
 四人とも、ひどく真剣な顔をしている。
「……って、か、くノ一ちゃんとソンシちゃんは前々からあれだったけど……テンちゃんガクちゃんまでこーちゃん狙いなわけか?
 今朝のアレまでそんな気配もなかったような気もするけど……」
 羽生は二人に確認する。「今朝のアレ」とは、風呂場での一件だ。
 羽生は、特殊な育ち方をした二人が、そもそも通常の意味での「恋愛感情」というものを、理解しているのかどうかも、あやしい……と、みている。
 楓と孫子の場合は、以前から公然とそういう態度をしていたから、まだわかるのだが……。
「……生物学的な発情と恋愛感情がどう違うのか、イマイチよくわからないんだけど……おにーちゃんとそういうことしたい、と時々切実に思うのは、確か……」
 テンが、あくびれもせずに、そういう。
「……おにーちゃん……付き合わなくてもいいから……今度、そういうことしようよ……」
 ……うわぁ……普段は子供の顔をしているのに、こういう時だけ女の顔になるよ、この子は……と、どきまぎしながら、羽生は思った。
 ちらりと視線を走らせて確認すると、楓と孫子は怒気を通り越して、殺気を放っている。
「……はいはーい!」
 ガクが、元気よく片手を上げる。
「……ボク、おにーちゃん好きでぇす!
 えっちなことか、よくわかんないけど……おにーちゃんがしたいのなら、しちゃってもいいと思いまぁす!」
 こっちはこっちで、あっけらかんと何も理解していないようだった。
「……あ、あのなぁ……ガクちゃん……さっきから、おねーさんたちが殺気だっているから……そういう不穏な言動は謹むように……」
 羽生は、片手で顔を覆いながら、げんなりとした口調でいう。
 ……なんで自分が、こんなに居心地の悪い思いをしなければならないのか……。
 というか……香也は、普段……こういう雰囲気の中で、それでものほほんとしながら暮らしていたのか……。
『……思った以上に大物だな……。
 こーちゃん……』
「……えー。
 だってぇ……」
 ガクが、ここぞとばかりに声を張り上げる。
「……おにーちゃん、自分で処理している時ははいいけど……そうでない時は、体が、可哀想な匂いに変わるんだもん……。
 風邪で寝込んでいたからか……今朝は、とりわけ可哀想な匂いが強くて……」
 ガクの発言が理解されるにしたがって、その場の空気が凍りついた。
「……そ、そ、そ……」
 羽生が、どもりながら、ガクに確認する。
「それは……ガクちゃんは……その……こーちゃんが……あー……溜まっている時と、そうでない時の体臭の違いが……」
「……うん。わかるよ!」
 ガクが、例によって、元気よく、頷く。
「男の人はねー……。長いことせーえき出してないと、体臭が濁ってくる……。女の人も、男性ほど極端には変わらないけど、それでも、しばらく性的なこーふんしていないと、体の匂いが変わってくる……。
 この家の中で、いい匂いになっているのは、羽生さんと孫子おねーちゃん……それに、おにーちゃんで、この三人は、毎日のように自分で気持ち良くなっているんだと思う。
 一緒に住んでいるんだから、二人とか三人で仲良く一緒に気持ち良くなればいいのに……」
「……あのなー……ガクちゃん……」
 こういうのと同居していると、プライバシーも何もあったものではないな……と、羽生は思った。
「まず……そういうことは、大ぴらにいってはいけないんだ。
 この社会では、そういうえっちな事は、おおぴらにいってはいけない、っていうことになっている……」
「……え?」
 いわれたガクは、キョトンとした顔をした。
「そ、そうなの……。
 島にいた時は、じっちゃん、結構おおぴらに……さて、欲情してきたから、ちょっと向こうでこいてだしてくるわ……とか、いって、すっきりした顔をして帰ってきたけど……」
 ……それは……ガクがいたから、なのではないか……と、羽生は想像する。
 ガク、テン、ノリ……の三人は、容姿的には、かなり恵まれている。その三人の女の子に囲まれて……他には誰もいない場所で三人を育て上げた「じっちゃん」という人は……。
『……こちらが想像もつかないところで、苦労していたんだな……』
 と、羽生は思った。
 日々、美しく成長していく三人の別嬪さんに囲まれて……しかも、そのうちの一人は、匂いで体調や感情も、ある程度は読み取れるときている……。
 それは……あっけらかんと自分の劣情を認めでもしなければ……いつか、暴発してしまいそうにも、なるだろう……。
 羽生は、名も顔も知らないじっちゃんという人に、いたく同情した。
「……いいか、ガクちゃん……」
 羽生は、訥々とした口調で、ガクに語りかける。
「……自分で気持ち良くする……オナニーは、別に悪いことではないけど……でも、それを、そういうことを、他人の前で大っぴらにいうのは、駄目だ。
 島ではどうだったかしらないけど、ここでは、通常の日本社会では……性的な事柄や、他人の性生活についておおぴらに触れ回ることは、タブーとされている。
 場合によっては、セクハラとかいって、裁判ざたになる……わかるな?
 裁判とか訴訟とか……」
「ええと……見たことはないけど……基本的なことは、前に習った……。
 たしか、公的な紛争調停機関、だったっけ?」
「……そう。
 つまり、場合によっては、犯罪あつかいされる。
 だから……ガクちゃんの鼻が、自動的に嗅ぎ付けちゃうことなのかもしれないけど……それを、他人にいちいち指摘したら、駄目だ……」
 羽生は、いつになく真剣な表情をしていた。
 ガクだけ……かも、しれないが……三人は、この社会にかんする知識を得る機会をあまり与えられないまま、こうして放り出されている……という、普段はあまり意識していなかった事実が、羽生の中で、急速に重い意味を持ちはじめている。
「……それと……ああ。
 せ、セックスというのは、だな。あ、あれ、体の欲求を解消するだけの、行為ではないから……。
 同居しているから、とか、利害が一致しているから、とか、その程度のことで、軽々しくやってしまっては、いけないんだ。ましてや、二人だけ、ではなく、多人数でやるの、というのは……あー……今の社会では、アブノーマル、特殊な趣味、と、されている。
 だから、その……。
 ああっ。
 あー……そういうのは、お互いの気持ち、というが最優先であって……」
 せどろもどろに説明しながら、羽生は頬を真っ赤にしていた。
 ……処女にこんなこと、説明させるなよ……。
 これ、なんて羞恥プレイ?
「……えー?」
 おとなしく羽生の説明を聞いていたガクが、怪訝な顔をして異を唱えた。
「……でも……。
 ボクが入院している間に、おにーちゃんと、楓おねーちゃんと、孫子おねーちゃん……。三人で、かなり長時間、楽しんでたよ……。玄関先に、三人が興奮した時の体臭がべっとりとついているし……その時に、おにーちゃん……何発か、数え切れないくらい、射精しているけど……。
 そういうのも、いけないことなの?」
「……なにぃー!」
 羽生は、半身を乗り出して、叫ぶ。
「その……こーちゃんが、初物のソンシちゃんとやっちゃった、ってのは聞いてたけど……。
 それって……楓ちゃんも……一緒だったの?
 ……ってか……一体、なんだって、そんなことに……」

 ……という訳で、「第一回、これからこーちゃんをどうしようかな? 家族会議」は見事に紛糾し、その日の夜半まで行われた。

[つづき]
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