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彼女はくノ一! 第五話 (149)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(149)

「……いや、だからな……」
 数時間後、髪の毛を乱した羽生譲が、息もたえだえ、といった態でいった。
「……君たち、本気で喧嘩すると、それこそカッコいいこーや君呼んでこなけりゃ収拾つかないし、真理さんの留守中に家、大破したらいいわけきかんし……それ以上に、仲裁するこっち方のが命懸けだから、その、もちょっと冷静になってくれい……」
 羽生譲も、居間の様子も……それに、他の四人も、「ずたぼろ」という形容が相応しい状態だった。
 以前のように楓と孫子の二人だけだったら、体力が尽きるまで際限なくどつきあっていたのだろうが……今回からは、テンとガクも入り交じっての四つ巴戦になっている。誰かが有利なポジションを取れば、誰かが牽制する……といった具合に、狭い居間内での戦いになった。せいぜい、襖が全壊した程度の被害ですんでいるのは、それでも四人がパワーをセーブするだけの理性を保っていたからだろう。テレビや窓ガラスには、被害がなかった。
 途中まで、居間の内部で逃げ惑いながら、争いを止めようとしていた香也は、いつの間にか姿が見えなくなっている。
 おそらく、自分の手には負えない、と判断して、自室に逃げ込んだのだろう。羽生も、留守にしている真理への義理がなければ、勝手にやらせているところだった。
 四人は、炬燵の周囲でパジャマと髪を乱しながらへたり込んで、荒い息をついている。
『……みんな……普段はおとなしい、いい子なのにな……』
 そう、羽生譲は思う。
「……提案……」
 羽生譲は、のろのろと片手を上げた。
「……結局、なんの解決にもなっていないけど……もう、真夜中だよ……。
 明日……いや、もう、今日か……今日も、学校があるわけだし、みんな汗かいたから……とりあえず、今夜は、このままみんなでお風呂にはいって、朝まで休もう……。
 いや、結局は、こーちゃんの気持ち次第なわけだし……今、ここで相争っても、なんの解決もならないかと……」
 実は、一言で要約すると「もうちょい、様子見しよう」としか、いってない。
 しかし、羽生譲以外の四人も、顔を見合わせて、今の自分たちがひどいありさまであること確認した後、不承不承、頷き合う。
 そして、のろのろと立ち上がり、風呂場に向かった。
 最後の一人が立ち上がり、歩きだしたのを確認してから、羽生譲も、それに続く。
 ……まったく……なんてぇ子たちだ……。
 と、羽生譲は思った。
 こういう子たちを前にして、自分のペースを崩さない真理や香也は、つくづく偉大だ……とも。
 もっとも、香也に関しては……その、マイペースすぎるところが、諍いの原因にもなっているのだが……。
 多分、羽生譲は、この家の住人の中で、一番普通でまともな人間だった。

「……おはようございます」
「あ。楓おねーちゃん、おはよー……。
 もう、いつでも食べられるよー……」
「あ。はい。
 朝はいつも作ってもらって……」
「気にしない、気にしない……。
 ボクら、どうせ朝早いし、おねーちゃんたちと違って、学校いかなくていいいし……」
「……それよりも、そろそろおにーちゃん起しにいかないと……また、孫子ねーちゃんがなにかするかも……。
 孫子おねーちゃん、隙をみつけると、すぐにおにーちゃんにベタベタするから……」
「あ。はい! そうですね! 今、見てきます!」
 翌日、朝食の時間になっても起床することができなかった羽生譲をよそに、他の住人たちは、いつもの通りの朝を迎えていた。普段と違うところがあるとすれば、全員の目の下に、濃いクマができていることくらいだ。
 日常というものは、かくも……強靭、なのである。

 その日、ファミレスのバイトがオフだった羽生が、昼前にようやくのろのろと起きてくると、居間は、破れた襖なども含めて、きれいに、元通りに片付いていた。
『……こういうところは、しっかりしているんだよな……』
 半ば呆れながら、炬燵に入る。
 炬燵の上には、こんもりと真ん中が膨らんだ新聞紙が置いてあり、その上に、「起きたら、食べて。台所におみそ汁もあります」と書いたメモ用紙が置いてあった。
 新聞紙をまくって下を覗くと、ラップに包んだ焼き魚と香の物、それに伏せた茶碗と箸、などが一式用意されている。
 温めれば、いつでもそのまま食事ができるようになっていた。
『……みんな……いい子、なんだけどな……』
 羽生は、寝癖がついたままの髪をぼりぼり掻きながら、灰皿と煙草を取り出して、煙草を咥え、火をつける。
『いい子、なんだけど……いろいろと、難しいよなぁ……。
 特に、こーちゃん……』
 現状のまま、誰をひいきする、ということもなく……というのは、それはそれで、賢明な選択かもしれない……と、羽生は思いはじめている。
 香也が、あの中の、あるいは、この家の住人ではない、特定の誰かを選んだとしたら……それはそれで、また波乱がありそうな気も、する……。
『でも……ま……』
 こういうのは、気持ちの問題だからな……と、羽生は思い直す。
 なるようにしか、ならないだろう……とも……。
『……ってぇ、か……ろくな恋愛経験もないわたしが……心配しても、どうにもならんか……』
 羽生は、ごろん、と煙草を咥えたまま畳の上に寝そべって、天井の上に、紫煙を吐いた。

「……あ。にゅうたん、起きんだ……」
 羽生が一服しながらのろのろしていると、玄関の方からとたとた足音を響かせて、居間に、ガクが入ってきた。
 ガクは、スポーツウェア姿で、服とか顔のそこここに汚れがついていた。
「ガクちゃん……どったの、その格好……。
 それと、顔のここんところに、汚れがついているよ……」
 えいしょ、と上体を起した羽生が、自分のほっぺたを指でさすと、ガクはそのあたりを手でこする。
「……あ。かえって、汚れが広がった……。
 一度、風呂場に行って、手と顔を、よく洗ってきな……」
 ガクは、素直にその言葉に従い、とたとたと足音を響かせて、居間を出て行く。いつも一緒にいるテンの姿が見えない……ということは、今日は、どうも別行動のようだ……と、羽生は予想した。
 やがて、手と顔をきれいにして居間に戻ってきたガクに尋ねると、やはりテンは、単身で徳川の工場に出向いている、という。
「……なんかね、あっちはあっちで、いろいろ忙しいみたい……」
「……そっかぁ……まあ、やることがあるってのは、いいことだな……何事も、経験だ……」
 羽生は、とりあえず、当たりさわりのない返答をする。羽生は、荒野ほど、ガクたちの行動を把握しているわけではないので、テンが徳川の工場で具体的にどういうことをやっているのか……までは知らない。
「で……ガクちゃんは、お留守かぁ……」
「留守番も、だけど……ボク、庭に置いてある自転車、今、修理しているんだ……」
「ああ。あの、野ざらしになってたやつか……」
 そういや、そんなのもあったな……と、羽生はぼんやりとそう思い出す。
「あれ、前にうちに住み込んでいた人達が置いていったのだけど……使えるの? あれ?」
「とりあえずは、錆を落としてみたところだけど……あと、チェーン周りに油差して、ブレーキのワイヤーとかタイヤとかとっかえれば、なんとかなるんじゃないかな、って……」
「……新しいのを買った方が、早いんじゃないか、それ……」
 話を聞く限り……ほとんど、オーバーホールに近い。
「そうかもしれないけど……できるだけ、あるものを使いたいし……それに、ボク、テンと違って、傷が直りきるまでは、この程度しかやれること、ないし……」
「……そっか……」
 傷が直るまでの時間つぶし、といわれれば、頷くよりほかない。また、物を大切にするのも、いいことだ……と、羽生は思った。
「……じゃあ、ご飯食べたら、一緒に部品、買いに行こうか?
 どうせこっちも、今日は休みだし……」

[つづき]
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