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彼女はくノ一! 第五話 (150)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(150)

 羽生譲にとって遅い朝食、ガクにとっては早めの昼食を一緒に摂ったところで、二人で庭にでて、整備中の自転車をみる。
 羽生はせいぜい錆を落とした程度……と、予測していたが、ガクは二台の自転車を分解し、庭に敷いたビニールシートの上にパーツを広げていた。ハンドルやサドルなど、錆だらけだった部分も完全に錆を落とされており、バラしたパーツの一つ一つに番号を振った紙を貼り付けてある。
「これ……ガクちゃん一人でやったのか……」
 午前中だけで……あの短時間で、ここまで出来るものか……と、羽生は半ば呆れた。
「うん。
 車庫にあった道具とかサンドペーパーとか、かなり使っちゃたけど、いいよね……」
「……そ、それくらい、構わないと思うけど……」
 羽生は、こくこくと頷く。
「で、ガクちゃん。
 取っ替えなけりゃならない部分ってのは……」
「この、リスト。
 車輪は、スポークがかなり腐ってたから、全取っ替えした方が安全。同じく安全に関わるブレーキも、全部替える。
 それ以外は、そのまま使えるんじゃないかと……」
「……ガクちゃん、前にも自転車整備したこと、あるの?」
「ないよ。島には、こんなの無かったもん。
 でも、こういうのがあるってことは知ってたし、実物見ていじってみれば、パーツの機能や要求される性能は、分かるし……」
「……で、とっかえるパーツのリストも……」
「うん。これ」
 ガクは、ポケットから出したメモ用紙を、羽生に見せる。
 羽生がガクのメモを見ると、そこには、パーツ名とサイズが、かなり詳細にリストアップされていた。

 歩いていくらもかからない所にある自転車屋さんに二人で出向いていって、ガクのメモを渡したら、自転車屋さんは一度奥に引っ込んで、すぐにリストのパーツを揃えてくれた。
 羽生ではなく、ガクが自転車の修理をしている、と話すと、「えらいねー」といいながら、気持ち程度の値引きもしてくれた。
「……あと、古い自転車直した場合は、警察に目をつけられやすいし、防犯番号も生きているかどうか確認しておいたほうがいいから……」
 といって、修理が仕上がったら、一度店に持ってくるといい……とも、いってくれた。
「……てか、ガクちゃん、整備とか修理の仕事に就けるぞ、将来……」
 ガクと二人で自転車のパーツを抱えて帰る道すがら、羽生はそう呟く。
「テンちゃんなんかもアレだけど、ガクちゃんも結構、頭良かったんだな……」
 自転車を解体整備した際の、手際がいい……ということだけでは、ない。
 初めて触れる「自転車」について、形状から部品の役割について推測、理解する、というのは、それなりに論理的な思考を伴わなくては、不可能なわけで……。
 ましてや、分解したものをみて、どれを交換するべきか判断する、などということは、マニュアルがなければ何も出来ない大人、よりは、はるかに頭がいい……と、羽生は、思う。

 考えてみれば、楓にしろ三人組にしろ、あの若年にも関わらず、自分の考えというものをしっかりもっている。生い立ちが特殊で突飛な言動をすることもあるが、方向性は違うにせよ……それぞれ、頭は、決して悪くはない……と、一緒に寝起きしている羽生は思う。
 ……彼女らの特異性は、能力の不足ではなく、過剰に、由来する……。
 荒野が警戒しているのも……明らかに、自分以上の能力を持った人間が、隣人なりクラスメイトの中にいる……という状況を、荒野たちのいう「一般人社会」が、果たして鷹揚に受け入れられるのかどうか、判断できない……という危惧を、持っているから、だろう。
 荒野が出自と能力の一端を公然としたことで試されているのは、むしろ、周囲の人間たちの方で……明白に、自分より優れた存在を、敵視しないでいられる人間が……いつまで主流、多数派で、いられるのか……。
『……あー……』
 そう考えると……確かに、「重い」わな、こりゃ……と、羽生も、思う。
 一族、とかいう人たちが、未だに荒野のように正体を明らかにしていない、ということは……つまり、正体を明かした上での、一族以外の人たちのと共存の試みが、今までは成功していなかった……ということで……。
『今の、カッコいいこーや君は……』
 その、最初の成功例になれるかどうかの……瀬戸際、ということなのか……。
『……みんながみんな、真理さんやこーちゃんのようにマイペースに接することができる……って、わけでは、ないもんな……』
 帰り道、羽生は、ぼんやりとそんなことを考え込んでいた。

 家に帰ると、早速庭に荷物を移し、ガクは一旦母屋に引っ込んで、すでに油まみれになっているスポーツウェアに着替えて戻ってくる。
「……しかし……あんだけ錆だらけだったのに、午前中だけで全部落としたんか……」
 研磨されてピカピカになっているハンドルなどをみながら、羽生譲は呟く。
「ボク、肉体労働は得意だから……その代わり、サンドペーパー、かなり使っちゃったけど……」
 そういってガクは、買ってきたばかりの錆止め塗料のスプレーを羽生に手渡す。
「表面かなり削ってちゃったから、これ、吹き付けておいて。
 離れた所からかければ、服も汚れないと思う……」
「……汚れて困るような服装でもないけど……」
 今日の羽生は、着古したジーンズにカッターシャツとダウンジャケット、というラフな服装である。少し寒いが、邪魔になるダウンジャケットを脱いで、縁側から母屋の中に放り込み、シャツの袖を捲って、羽生はスプレーを使う。
 その間にも、ガクは、新品の部品と磨いた部品を手際よく組み合わせ、時折羽生の手を借りたりしながら、かなり短時間で、二台の自転車を組み直した。
 最後に、チェーン周りに油を差し、ペダルを回してみせて、完成。
 羽生も、試しに庭の中を数メートルほど乗り回してみたが、長年放置していたとは思えないほど快適な乗り心地になっていた。外から見た時の古めかしさはどうしようもないが、普段の足として使用するのなら、これで必要十分だろう、と、羽生も思う。
「……さて、と……」
 羽生は、油だらけのガクの恰好をしげしげと見る。
「……ガクちゃん、その服着替えて、手と顔、洗ってきな。
 完全に日が暮れる前に、さっきの自転車屋さんにいって、防犯登録し直してこよう。
 その服は、別の洗濯物に混ぜないで、洗面器に入れておいてな……」

[つづき]
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Comments

うんちく:鍍金・塗装面のサビ落としは、化学系サビ落としで鍍金や塗装面をあまり傷つけることなく落とすことが出来ます。ただし、とても硫黄臭いですけどね。
 指でぼろぼろ取れるほどに、ひどく浮き出したサビには、金属ブラシやペーパーでこそれおとす必要はあります。

  • 2006/09/19(Tue) 20:39 
  • URL 
  • かささぎ #-
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