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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(68)

第六章 「血と技」(68)

 荒野たちが掃除に取り掛かってしばらくすると、徐々に人が増えはじめた。同報メールの告知に従って、集まったらしいが、自主勉強会についての情報は、さすがにまだ広まってなかったらしく、後から来た生徒のほとんどは、何のために倉庫代わりにされている教室を片付けなければならないのか、理解していない様子だった。
「……この辺の告知は、放送部の領分だな……」
「ですね……」
 荒野が指摘すると有働は頷いた。
「あと……今後、新しい企画を立ち上げる時には、その情報がなるべく早く行き渡るようにしないと……」
 まだ準備を開始したばかりの自主勉強会については、告知がなされていなくても当然、と、荒野は思うのだが……有働は、本気で対応策を考えはじめているようだった。
「……ま。今は、目の前のこの教室を、片付けなけりゃ……」
 荒野はそういって、棒立ちになった有働を即す。
「……ええと……。
 おっ、大樹も来たのか……それから……」
「やあ、おにいさん。
 なんだかわからないけど、水泳部の連中、連れて来たよ。
 部活の代わりだから、なるべく肉体労働押し付けてやってくれ……」
 ジャージ姿の飯島舞花が、柏あんなや栗田精一を含めて二十名ほどを引き連れて、合流してくる。
「……なんだか、思ったより……人が……」
 有働は、集まった生徒たちを見渡して、困ったような笑顔を見せた。
 何だかんだで、すでに五十名以上の生徒が集まっている。いくら中に備品が詰まっている、とはいっても、たった一つの教室を片付けと掃除をするのには、多すぎるくらいの人数だった。
 主に女子の方の仕事を割り振っていた孫子が、急速に増えて来た生徒に仕事を割り振るのがおっつかなくなって来ている……。
「……有働君。
 来てくれたのはいいが、何をやっていいのか分からない生徒たちが出て来ている。
 はやく指示を……場合によっては、別の仕事を割り振っても……」
 荒野が指摘すると、有働ははっとした表情になって、集まった生徒たちに仕事を割り振りはじめた。
「……おれ、ちょっとパソコン実習室にいって、募集終了のメール出してくれるように頼んでくる……」
 有働が動きはじめたのをみて、荒野はそう告げて、その場から去った。有働は集まった生徒たちに仕事を割り振りながら頷き、荒野目当てで集まった一部の女生徒たちは、露骨に不満そうな顔をした。

「……って、わけで、募集終了のお知らせ、発信して……」
 忙しく動いているパソコン部の一人に声をかけると、「はいはいー!」といって、即座に末端に取り付き、処理をしてくれた。
「……これで、募集終了のお知らせ、送信しました……」
「……今度から、こういう突発的な仕事も定員を設定して、参加できる人は、メールを返信してもらって、定員になり次第、募集終了のお知らせを送る……ってシステムにした方が、いいんじゃないかな?」
 荒野は、そう提案して見る。
「……ああ、それ、いいですね。
 今までのシステムは、長期で取り組む仕事を、何日かに分けて処理することを前提として組んであるんで、こういうスポットの仕事に関しては、まだまだ不備があるし……。
 他のみんなと相談して、その他にも工夫してみます……」
「……頼むよ。おれ、そっちは弱いから……」
 荒野が声をかけたのは、「顔は覚えている」程度の薄い繋がりしかない生徒だったが、荒野の要望に気持ち良く答えて、早速背を向けて、他のパソコン部の生徒達と相談をしはじめた。
「……あと、この中に、放送部員の子、いるかな?」
 荒野は少し大きい声でいって、実習室を見渡す。
 玉木あたりがいれば話しが早いのだが、この日はたまたま姿が見えなかった。
「……うっす。自分、放送部所属です」
 末端を前にして斎藤遥と話し込んでいた、これも、顔だけは知っている放送部員が、立ち上がる。よく、ビデオカメラを持って玉木や有働の後を追っている二年生だった。
「……今、ちょっと、有働君と話して来たんだけど、あっちで準備している自主勉強会の告知については、どの程度準備しているのかな?
 そっちの方で、なんか、手伝えること、ない? 今、人手、余っているけど……」
「……そうっすねぇ……ボランティアの準備が落ち着かないうちに立ち上げちゃったもんで、勉強会の方は、正直、ほとんど、手付かずです……」
「……文面、考えてくれれば、学校のサイトには、すぐにでも告知できますけど……」
 その放送部員の後ろから、斎藤遥が声をかけてくれる。
「うん。
 そっちも、準備ができたら、お願いする……」
 荒野は、斎藤遥に頷いてから、同じ実習室にいる茅に声をかけた。
「……茅、そういうことだから、そっちから告知用の人員、何人か割いてくれないかな?」
「……楓……。
 何人か連れて、そっちに回るの」
 茅は、かしゃかしゃとキーボードを叩きつつ、楓に話しを降る。
「今、茅は、茅にしかできないことをしているの」
「……それはいいですけど……」
 茅と同じように末端に取り付いていた楓が、立ち上がって戸惑ったような声をあげる。
「その……具体的に、どういうことをするんですか?
 それから、人手は、何人くらい必要なんでしょう?」
「……こういう時、放送部のセオリーでは、どうするんだ?
 ええと……」
 荒野は、立ったままの放送部員に確認する。
「梁間です。梁間、太助」
「……梁間、太助君、ね」
 荒野は梁間の顔と名前を記憶する。
「……そうっすね。
 音声放送と、ポスター……悪ノリする時は、チラシなんかも用意しますが……」
「……そのポスター、今、用意しました」
 佐久間沙織が、片手をあげる。
 荒野が話しているのを聞いて、即座にワープロソフトか何かを起動し、手を動かして作成したらしい。
「……後は、必要な枚数をプリントアウトして、掲示物の許可を取ってから貼り出すだけ……。
 放送の方は、明日の昼休みからにやってもらうことにして……そうね、ポスターの許可は、わたしが職員室にいって貰って来ましょう。そろそろ、こっちのデータも、先生方に見て貰いたいし……。
 人手が余っているのなら、加納君は、ポスター貼りの要員、掃除している人の中から引っ張って来て……。
 せいぜい、五、六人でいいと思うけど……」
 ……的確な判断力と、それに臨機応変な行動力は、やはり元生徒会長だな……と、荒野は思った。

[つづき]
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