2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(70)

第六章 「血と技」(70)

 しばらくそうした他愛のない雑談を続け、それから、誰はともなく「もうそろそろ、帰る支度をしないと」といいはじめる。時計を見ると、最終下校時刻三十分前、だった。この場にいる全員がジャージ姿である、という関係もあり、着替える時間も計算に入れると、確かにぼちぼち解散した方がいい頃合いである。
 有働と荒野は頷きあって、
「皆さんのおかげで、予想以上に早く片付きました」
 とかなんとか、型どおりのお礼をいって回った後、「速やかに着替えて、下校の準備をしてください」と、残っていた生徒たちを誘導する。
 ぞろぞろと生徒たちが片付き終わった空き教室から出て行き、荒野も着替えとりに自分の教室に向かう。そこで制服をとってから、男子更衣室に行くつもりだった。放課後の遅い時間とはいえ、まだ部活の生徒も多数残っている。そうした、部室を与えられている運動部員はいいが、荒野のような運動部に所属していない生徒は、更衣室を利用するのがマナーだと思っていた。
 同じクラスの孫子と昨日の徳川の工場での様子を聞いたりをしながら、荒野は、自分の教室の引き戸を無造作に、がらりと開き、そこで、固まった。
 中で、三人ほどの女生徒たちが着替えていた。
「……ごめん!」
 いって、荒野は、着替えていたクラスメイトが反応する前に、素早く引き戸を閉める。
「……どうかしましたの?」
 孫子が、不思議そうな顔をして、荒野をみた。
「いや。誰か、中で着替えてた……」
 予想外のことで結構ドギマギしている荒野は、単語ブツ切れに答える。
 異性の裸体には免疫はあるが、学校で、それもクラスメイト相手にこのようなハプニングを起こす、ということに関しては、荒野は免疫を持たない。
「……そう……」
 孫子は納得した顔をして、荒野の脇をすり抜けて、教室の引き戸に手をかける。
「では、わたくしが、あなたの荷物をとってきますわ」
 荒野の態度から、中で女子の誰かが着替えていたのだろう、と、孫子はあたりをつける。孫子にしてみても、教室で着替えるの無防備だとは思うが……もうかなり遅い時間だし、更衣室まで移動するのを億劫に思う気持ちも、わかる。
「だから、あなたはここでしばらく、わたしが着替え終わるまで、他の男子が入らないように見張っていなさい……」
 荒野が返答をする前に、孫子は、教室の中に消えた。
 孫子が教室に入っていくと、教室の中から、「えー! 加納君だったの?今の……」とか「他の男子ならともかく、加納君なら別に入ってきても良かったのに……」とかいう声が聞こえた。
「はい、これ。わたくしがいいというまで、ちゃんと見張っていること」
 すぐに孫子が荒野の荷物と着替えを持ってでてきて、教室に背を向けて固まっていた荒野に、手渡し、すぐに教室に戻る。
 孫子と入れ違いに、顔見知りの三人のクラスメイトが出てきた。今日の、空き教室の片付けを手伝ってくれた生徒でもある。一通り仕事が終わった後、雑談には参加せず、さっさと教室に戻って着替えていたらしい。
 その女子三人組は、「じゃあねー、加納君」とか、「今度見る時は、声をかけてね。勝負下着してくるから」とか、「駄目だよ、カナ、そんなこというと、妹さんに呪い殺される」とか笑いざわめきながら、荒野の側を素通りして去っていく。
 ……おれ、男として見られていないんじゃねーのか……と、荒野は思った。
 へんに騒がれるの面倒だったが、ここまで気にされないのも、別の意味で面白くないのであった。

「どうかしました? あなた、随分面白い顔をしていましてよ……」
 三分もせずに着替えて出てきた孫子は、荒野の顔を見るなり、そういった。
「いや……痴漢扱いされなかったのは良かったにしても、全然騒がれないのも寂しいもんだな、と……」
 荒野は、素直に心情を語ると、孫子は深々とため息をついた。
「女にとって異性はは……気になる男と、どうでもいい男と、側にいるだけで虫酸が走るのと、三種類しかいません。
 第三項目に分類されていないだけ、マシではありませんこと?」
 と、荒野が答えにくい問いかけを行う。その後、
「あなたもこのまま教室で着替えますか? なんなら、他の女子が入り込まないように見張っていてもよろしくてよ……」
 と、いった。
 荒野は、「素直に、更衣室で着替えます」と、孫子に背を向けた。
 そんな荒野の背中に、孫子は、「わたしくは、一度パソコン実習室の方に寄ってみます!」と声をかけて来た。待ち合わせ、というわけではないが……この時間まで残っていれば、荒野は、茅たちと一緒に帰る、と踏んだのだろう。

 荒野が着替えてパソコン実習室にいくと、茅と楓は一足先に帰った後だった。
「……いやぁ。ついさっきまでいたんですけどね……。
 なんでも、今日は買い物をしてから帰るって……」
 堺雅史は、そういって頭を掻き、
「荒野さんには、晩ご飯の買い物しないでいい、茅さんからって伝言頼まれています……」
 とつけ加えた。
 その時間まで実習室に残っていた他の生徒たちも、そろそろ帰り支度をしているし、堺雅史の後ろには、着替えて帰り支度をした柏あんなが控えている。佐久間沙織はすでに帰宅したのか、実習室内には姿が見えなかった。
 そろそろ、最終下校時刻の予鈴が鳴る時間だった。
 いつもは、荷物が多くなるので、食材の買い出しは荒野の分担に鳴っているのだが……なんで、今日に限って……とも、思わないでもなかったが、
「……じゃあ、素直に帰るか……」
 ぼそり、と独り言を呟いて、廊下に出た。すぐ後に孫子もついてくる。
 パソコン部に残っていた生徒たちと一団になって玄関口で靴を履き替えていると、「やあ」と、飯島舞花に肩を叩かれた。当然、その側には栗田精一もいる。
 さっきまで一緒に教室の片付けをしていたのだから、ここで合流するのは不思議ではない。
「そっちは、部室で着替えたの?」
 そう訪ねたのは、男子更衣室で栗田の姿を見かけなかったからだ。
「部室っていうか、水泳部の場合は、冬でもプールの更衣室で着替えるんだけどね……」
 舞花が、そう答える。
 そんな立ち話をしているところに、香也と樋口明日樹の美術部組も合流してきた。
「……なんだか、登校時のの面子とほぼ同じになってきたな……」
「そういや、樋口さん。
 今日、大樹、放課後も残ってこっちの仕事、手伝ってくれたよ。一足早く帰ったようだけど……」
「ああ……携帯の方にメール来てたアレ?
 あれ、結構集まったの?」
「うん。メールで呼びかけただけで、結構きてくれた。五十人いってたかな……」
「……そんなに……」
「そう、つまらない仕事なのにね……」
「そのうち二十人くらいは、おにーさん目当てだったけどな……」
 わいのわいの語りながら、みんなで帰路につく。
 栗田精一は舞花のマンションに自転車を置いているし、帰る方向は一緒な訳だが……下校時にまでこの顔あわせで、というのも、珍しいパターンだった。



[つづき]
目次

有名ブログランキング

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
newvel ranking HONなび


DMMライブチャット (アダルト&ノンアダルト)

↓このblogはこんなランキングにも参加しています。 [そのに]
熱湯 ALL ADULT GUIDE Hサーチ アダルトガイド Link od Link 大人のナイトメディア「アダルトタイムズ」 アダルトサーチYasamsam アダルトトレイン ちょらりんく18禁 週刊!ブログランキングくつろぐ

DMMアダルト 同人販売

Comments

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ