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彼女はくノ一! 第五話 (155)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(155)

「……あのぉ……」
 楓は、おどおどした声をだして、プレハブに入った。
「……ちょっと、いいですか? 例の、ゲームの件なんですけど……」
 中で筆を動かしていた香也は、顔をそちらに向けることもなく、「……んー……」と生返事をした。別に機嫌が悪いわけでもなく、たまたま手が離せないだけだ、と、今では楓にも察しがつくようになっている。
「……こっちが、修正の分なんですけど……」
 手も休めずに、香也はチラリチラリと横目で楓が広げたプリントアウトを覗き込みながら、微かに頷く。楓は、香也が頷くのを確認して、一枚一枚紙をめくりながら、先ほどネット上で確認した注意事項を口頭で香也の耳に入れる。
「ちょっと……そこの、スケッチブック、とって……」
 ようやく、一旦手を休めて、香也がいった。
 楓は、素早く持っていた紙の束を置き、棚に積んでいる新しいスケッチブックをとって、香也に手渡す。
 真剣に絵に取り組んでいる時の香也は、いつもより少し鋭利な印象になる……と、楓は思った。
 楓に手渡されたスケッチブックを開くと、香也は、筆を鉛筆に持ち替え、
「……これ、持っていて……」
 と、楓が持っていたプリントアウトの紙を、楓に掲げさせる。
 そして、それを見ながら、猛然と手を動かしはじめた。
 香也の手が踊り、あっという間に線が、絵の形になっていく。
 あっという間に、プリントアウトの紙で指定された通りに、修正された絵が出来上がった。
 一枚あたり五分もかけずに線画を仕上げ、香也は、スケッチブックの新しいページに、次々と書き直し指定された絵を描き上げていく。
『いつ、見ても……』
 魔法みたいだな、と、思う。
 香也の集中力もさることながら……この気迫、この速度は……なにか、人間離れした雰囲気になってる……。
 手の動きは無茶苦茶速いのだが、かといって描き上げる絵の方は、まるで荒れていない。書き直すを指定された箇所意外は、寸分違わず同じ、なのだと、楓には経験上、解っている。楓は以前、書き直す前の絵と、書き直した絵を重ね合わせて透かしてみた事があるが……修正した箇所意外、寸分違わずピタリと重なった。
 その時は……楓も、驚きを通り越して、呆れたものだ。
 以前、羽生が香也のことを「人間コピー機」と表現したことがあったが……少なくとも、一度自分で描いた物に関しては、香也は、時間を置いても、かなり正確に、まったく同じ絵が描けるらしい。
 一体、どういう「目」と「手」をしているのか……と、本気で思う。
 結局、香也は、書き直し指定をされた絵を全て描ききるのに、二十分とかけなかった。そして、
「……はい、これ……」
 と、平静な声で描き上げたばかりのスケッチブックを楓に手渡し、何事もなかったかのように自分の絵の方に戻っていく。
 香也にとって、羽生の同人誌とかゲームとか、「頼まれて描く絵」と、「自分が描きたいから描く絵」とは、取り組むときの「真剣さ」が、断然、違うな……と、楓は感じている。
 前者は、手は抜かないまでも、あくまで義務的に取り組む、後者は、それこそ、全身全霊を傾ける。
 楓は、真剣に絵を描いている時の香也の背中が好きだった。見ていると、吸い込まれそうになって、そのまま抱きつきたくなってしまう。
 ……もちろん、香也の邪魔はしたくないので、必死になって自制するわけだが……。
 その時も、楓は自制して、隅に立てかけてある折りたたみのパイプ椅子を組み立て、そこに座る。
 そして、いつものように、香也の背中を見る。

 保護者でもあり、伯父でもある鋼蔵から一方的に電話を切られた孫子は、怒りに打ち震えながらもしかるべき行動を取り始めた。
 まず、徳川篤朗に宛てて、「しかじかの理由で、提出した事業計画書は根本の部分から見直さなくてはならなくなった」という内容のメールをしたため、送信する。徳川への連絡は、本当に緊急の要件でなければ、メールで済ませるように、と、言い渡されている。徳川は、それだけ多忙な身でもあった。
 次に、自分で作成した計画書を検討し直す。
 初期段階から十分な準備をして望む……というパターンは事実上不可能になった。ので、最小限の資金ではじめ、利益がでたら即刻それをあらたな軍資金に回し、順次規模を拡大していく……というモデルに変換しなければならない。
 お金をかけずに、徳川の事業の利益率を上げる……という方向性と、それに、資本金を必要としない事業を新たに立ち上げる……。
 二つの方法を、孫子はすぐに思いついた。
 前者については、人を雇う前に、まず孫子自身で徳川の工場の経理状況を詳しく調べてみるつもりだった。そして、改善すべき所は、改善する。徳川の性格から考えて、あまり利益率を上げることには関心を持っていないように思えたから、少しテコ入れをすればそれなりに成果があがるのではないか……と、孫子には思えた。
 後者については……。
『なんにせよ……お金は、必要ですわね……』
 孫子は、鋼蔵から「現金化すること」こそ禁じられたものの、以前からやっていたネットトレーディングをここに来てからも継続して行い、利殖に励んでいた。鋼蔵の意志でその資産を使用することは禁じられたが、数字の上では、孫子はいまだに数十億単位の資産を持っていることになる。
 だから、このようなことがあると、ついつい、そっちの資産を切り崩して使えばいい、と思ってしまうのだが……。
 それらの資産を鋼蔵に凍結された今となっては……孫子は、年齢相応の、小遣い銭程度しか、自由に使用できる現金を持っていない……。
『……なければ……作るまで、ですわ……』
 孫子は、部屋中を掻き回して、「売れる物」を物色しはじめる。
 以前なら、孫子は、それらの値段にあまり意識を払う習慣はなかったが……実家から持ち込んだ服とかバッグなどの小物を売ると、かなりまとまった金額になる……ということを、学んでいる。孫子には、具体的な金額は想像つかなかったが……当座、必要のない物を全て売ってしまうつもりだった。
 鋼蔵のいうとおり、この家で、年頃の一学生として暮らすのに、高価な服や小物は必要ないし、また、孫子自身、気軽に入手したそれらに、格別の愛着もなく、手放すことに特に痛痒も感じなかった。
『あとは……出来るだけ、高く売りたいのですけど……』
 この点については、明日あたり……羽生や玉木に相談してみよう……持ち物の整理を行いながら、孫子はそんなことを思った。



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