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彼女はくノ一! 第五話 (156)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(156)

『……なんか……』
 庭の方が騒がしくなってきたな、とプレハブの中で香也を見守っていた楓は思った。
 別に聞き耳をたてていた訳ではないが、もともと楓は、人の気配には敏感である。
『……テンちゃん、ガクちゃん……才賀さん、荒野様……それに、茅様、まで……』
 特に気をつけていなくても、プレハブの薄い壁越しになら、誰がいるのかくらいは察しがつく。特に、毎日のように顔を合わせている人の、ということなら、なおさらだった。
 結構長く話し込んでいるようだったが、雰囲気にあまり切迫した調子が感じられなかったので、楓は、会話の内容にまでは気を払わなかった。楓が必要な話し合いなら、そのうち、誰かが呼びに来るだろう……。

 案の定、数分後、メイド服姿の茅が、楓を呼びに来た。

「……はぁ……」
 羽生譲は、孫子の話しを一通り聞いた後、太いため息をついた。楓も、羽生と一緒にため息をつきたい気分だった。
 続けて羽生は、「それ、常識で考えたら、ソンシちゃんの伯父さんのいう通りだわ……」とか、「普通、未成年は……そんな巨額のお金、ぽんぽんと動かしたりしないし……」とかいいはじめる。
 楓も、まったく同じ気分だった。
『……何十億……だった……』
 楓にとっては天文学的……とまではいかなくとも、感覚的には国家予算にも等しい金額だった。
 つまり、「この世のどこかにあるのかもしれないけど、一生、自分には手が届かないし、縁もない」オーダーの金額である、という意味に置いて。
 それだけの金額が……孫子にとってはまるで小遣い銭のと対して変わらない……という感じであるらしい……。
 鋼蔵に資産を凍結された、といって孫子はむくれていたが、まるで親に小遣いの減額を言い渡された子供のような、可愛らしいむくれ方だった。
 孫子にとっては……その程度の財産を数年、凍結されていたとしても……。
『……その実……』
 たいしたダメージはないのだろう……と、楓は思う。
 ただ、自分の我がままが、多少、通用させにくくなるだけだ……。
 やはり……孫子と自分とでは、根本的な部分で違うな……と、楓は思った。
 孫子は自分の資産が使用出来なくなった代わりに、お金を集める方法を羽生や荒野と相談しはじめる。
 荒野は「一億くらいなら、すぐに調達出来るけど」というと、羽生は大仰に驚いていた。楓にしてみれば、荒野のレベルの術者が数年かかって貯めたにしては、少額だと思う。
 荒野にしても、おそらく、最初の数年間分は、見習い学習期間として、半端な仕事しか任されなかったのではないか……と、楓は予想した。
 荒野の貯蓄を切り崩しても、「徳川の事業にテコ入れする」のがせいぜい、という話しになった。
『……能力のある人ほど、人件費がかさむ、というのは……』
 どこの世界も同じか……と、楓は思った。
 すると、孫子は、自分の持ち物をできるだけ高く売りたい、と羽生に相談しはじめる。羽生は、「ネットオークションでも……」とか、答えていた。確かに、商品のクオリティさえ確かならば、オークションなら、値段が勝手に吊り上がってくれる……と、楓も思う。
 でも……。
『……焼け石に水、だと、思うけど……』
 服や小物、アクセサリー類なら……数万円からせいぜい数百万、の単位だろう。
 いまく処分ができたとして、全部で数千万円くらい……。
 個人にとっては十分に大金だが、まともな事業資金としては、やや心もとない。
 特に「金に糸目をつけずに、万全の態勢を引いて、殿様商売をする」という発想に慣れ切っている孫子が満足するだけの資金は、その程度では集まらないのではないか?
 ……と、これくらいのことは、楓ではなくとも、容易に予測がつくように思えた。
「万全の態勢で挑みたいのは分かるけど、ないものは、ないんだから……。
 足りない分は、工夫するしかないね……」
 荒野も楓と同じようなことを考えているのか、そういって肩をすくめた。
「……あのう……」
 いおうかいうまいか、かなり悩んだが……楓は、おずおずと自分の意見をいってみた。
「お金がなかったら……無理をせず、今ある資金や設備で、やれることからはじめるべきなんじゃないでしょうか……」
 少なくとも……人材、に関しては、それなりに優秀な人達が、集まっている……と、楓は思う。
「……徳川さんのところみたいに、具体的なモノを開発するのなら、それなりの設備が必要でしょうけど……ソフトウェアなら、最低パソコン一台あれば開発できると思いますけど……」
「……なる……」
 羽生も頷く。
「こっちには、楓ちゃんや茅ちゃんが、いるしな……。
 それに、シェアウェアやカンパウェアなら、別に学生さんが作成しても、お咎めがあるわけでもない……」
「……それって、そんなに儲かりますの?」
 孫子が、首を傾げる。
「……やりようによるけど……そんなに売れて売れてしょうががない!
 っていうふうには、ならないよ……。
 ニーズがあっても、今まで誰も手をつけていない分野をうまく見つける、とか……しないと。
 そういう、どういうソフトを作るか、というコンセプトにもよるし……そういうマーケトリサーチは、どっちらかというと孫子ちゃんの方が得意なんじゃないか?」
「極端に儲かることはないにせよ……茅や楓がいればできる。設備投資や初期投資も必要ない……っていうあたりは、重要なんじゃないか?」
 羽生と荒野が、続けて指摘する。
 荒野は続けて、
「……特に、楓にとっては……将来、一族に依然せずにやっていけるだけの、経済的な基盤を用意することにもなるし……」
 と付け加えてくれた。
 ……少しは、考えてくれるんだな……と、楓は思った。
「……例えば、だな……ソンシちゃん……」
 羽生は、孫子に語りかける。
「君たちのそのルックスも、一種の資産ではあるわけだよな。
 事実、商店街の客寄せとしての実績があるし、みんなでモデルさんのプロダクションでも作って、本格的に商売をはじめる……という選択肢も、あると思う。
 この間の貸衣裳屋さんから初めて、実績作りながら営業して行けば、それなりにいける……と、思う。
 でも、そうなれば……そっちの方が軌道に乗れば乗るほど、君達は拘束される時間が長くなるわけでな……。
 そういうの、今の状況だと、ヤバイんじゃないか?」
 現状、楓たちには……学生、という立場と守って静かに暮らす、ということと、それに、未知の敵の攻撃を未然に防ぐ、という二つの大きな目標がある。
 羽生が指摘する通り……お金になるから、といって、あんまり時間を取られる仕事をする余裕も、楓たちにはないのであった……。
「……例えば、ソフトウェアの開発でもな……一番確実なのは、どっかの開発会社から仕様書貰って、その通りにコード書いて、納期までに渡すって、外注作業だ……。
 でも、君達は……」
「……この国の法律では、雇用関係を結べる年齢に達していない……」
 羽生と荒野が、交互に語っている。
「……そ。
 いくら能力があろうが、まともな会社は、君達のような未成年と契約を結ばない。
 仮に、なんらかの伝手を使って仕事を取って来たとしても……学校にばれたら、ヤバイ訳でな……」
「……だから……おれたちが、お金を稼ごうとしたら……オークションとかソフトのダウンロード販売とか、せこい手段に頼るしかない……」
「……後は……トクツー君みたいに、自分が事業主になっちまうことだな……。名義は、彼の姉君みたいだけど……」
「徳川の所で作る製品に組み込むソフトウェアを開発して、ギャランティを貰う、という方法も、あるの。
 ……徳川も、そろそろ素材開発ばかりではなく、自社のオリジナル製品を手掛けるつもりだ、とか言っていたし……」
 それまで黙っていた茅が不意に口を開くと、テンが片手をあげた。
「……それ、ボクもやるつもりだけど……」




[つづき]
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