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彼女はくノ一! 第五話 (158)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(158)

「かのうこうや。
 ボクのことを山出しのお馬鹿だと思ってだでしょ?」
 ガクは手をとめず、呆気に取られて様子を見守っている荒野にいった。
「……単純な奴だとは、思っていたよ……」
 荒野は、毒気を抜かれた表情で、そう返した。
 狸か狐に化かされた事に気づいた時、人は、ちょうどこの時の荒野のような表情をするのかもしれない。
「……ガクの処理系は……ボクやノリと比較すると……かなり、複雑になっている……らしい。
 じっちゃんに新しいことを習った時、最初に覚えるのは、ボクかノリ。
 ガクは、学習の過程では、一番多く失敗して、試行錯誤を繰り返すんだけど……一度、覚えた事に関しては、誰よりもうまくやてみせる。
 なんていうのかな……飲み込みは悪いけど……応用に、強い、というか……。
 一見解決不能な問題にぶち当たった時に、ボクらが思いがけない解決方法を見つけるのも、たいてい、ガクだし……」
 テンが、なんとも形容のしようがない複雑な表情を浮かべてそういうと、ガクはガクで、
「その代わり……テンは、ボクなんかよりも、よっぽど頭がいいじゃなか……」
 と、口を尖らせる。
『……ああ……』
 楓は、なんとなく二人の資質の違いを、理解し初めていた。
 テンは……それに、あそらくノリも……合目的に、設定した目標に向かって突き進む。だから、なにか問題に行き当たった時、それを解決する方法も、おのずと「よりシンプルで、ロスの少ない」方法を選択しようとする。
 対して、ガクは……合目的性や合理性よりも、その場その場の興味や関心の対象に、容易に惑わされる。気まぐれで、冗長性が高く、非効率的だが……より多くの試行錯誤を経験するから、長期的に見ると、様々な状況に対処できる発想の柔軟さを、結果的に獲得している……とも、いえる。
『質が……違う……』
「……かのうこうや……」
 楓の想像を裏付けるように、ガクが、孫子と話し込んでいた荒野に話しかけた。
「……なんか、不安そうな顔をしているけど……かのうこうやは、それに、孫子おねーちゃんは……何でも自分たちだけで、解決しようとしすぎているよ。今日の話しを聞いていると……トクツーさんとか、放送部の人たち、とか……その他にまだまだ、協力してくれそうな、学校の人達が、いるんでしょ?」
 なんで、素直に、その人たちに協力を求めないかな……」
「も……求めていない訳では、ないけど……」
 荒野は、どもりながら答えた。
「今日だって……メール一つで、大勢集まってくれたし……」
「……そう、それ!
 ……その人たち、この間茅さんたちが作ってたシステム、使って集めたんでしょ?
 なんでそのシステムに手を加えて、双方向性にすることを考えないかな……。
 双方向性にすれば……そのまま、広範な作動域を持つ、警戒システムになるじゃん……」
 ガクの発想は……指摘されてみれば、それなりに合理的な方法だった。
 現在、楓と茅が基幹部を作り、パソコン部の部員たちが細部を作り込んでいるシステムは……本来の用途はさておき、ほんの少し手を加えさえすれば、確かにそのような使い方も、可能だ。
「アマチュアだってさ、一般人だってさ……怪しいヤツをみつけたら、その場でメールを打って注意を喚起する……ということは、できるんじゃないかな?」
 そう、ガクは、続ける。
 まだ、立ち上げたばかりの試用段階だというのに……ボランティア用連絡システムにメールを登録している人数は、三桁を越えようとしている……。
 今の時点では、楓たちの学校の生徒がほとんどだが……これから先、どれほどの広がりをみせるのか、予測できない。少なくとも、玉木や有働は、学校の外の、この町の人々にも、積極的に巻き込もうとしている。
『……うまく、いけば……』
 数百とか数千、という単位の、自発的な監視網を、築くことができる……。
 早期警戒、という観点でいうなら……そこに住む住人が、日常の生活の中で、自然に異変を見張る……というのは……かなり、理想的なのではないだろうか?
 荒野がしきりに気にしている、「人手の不足」も……異常察知、という点だけをみれば、それなりに……。
『……カバー、できる……』
 と、楓は思う。
「……ボクらが全員でかかれば……打撃力は、そこそこあるんだから……後は、敵の動きを察知してから、どれだけ速やかに、迎撃する態勢に移ることができるか、という、問題だよね……」
 ガクは、手を休めずにそう続けていたが……じきになにもいわなくなり、手だけを動かすようになった。
「……はいっちゃった……」
 テンが、肩をすくめる。
「こうなると、ガクは……回りのいうこと、聞いていないし、見えていないから。
 一度没入しはじめると……ガクは、長いよ……。
 集中力も体力もあるから……作業が区切りのいいところまでいくまで、ずっとこのまま……下手すると、一晩でも何日でも、飲まず食わずで続けているから……」
 テンは、「ガクには構わず、他のことをした方がいい」と言い添えた。
「じゃあ……別の話しな……。
 いいそびれていた事が、いくつかあるから……」
 気を取り直して、荒野が、いった。
「……楓……。
 お前、これから一週間、茅に体術を教えてやってくれ。
 テンやガクと一緒に、しごいてやって構わない。茅がついていけなくなるくらいで、ちょうどいいから、遠慮せずにしごいてくれ。
 一週間、茅がリタイアせずにいたら……その時は、テン。悪いが、茅と模擬試合、やってくれないか?」
 楓は……茅自身から、体術を教えてくれ、とは、頼まれていたので、とくに意外にも思わず、素直に「はい」と首肯する。荒野の許可があるのなら、楓としては特に断るべき理由はない。
「……ええー!」
 大声を上げたのは、テンである。
「なんで、そんなことに……」
「茅は……体術を、習いたがっているが……おれは、本心では、反対なんだ……。
 半端に動ける方が、いざという時、かえって危ないからな……」
 荒野は、真面目な表情で、テンに懇願する。
「……だから、楓にしろテンにしろ、特に手心を加える必要はない。茅がお前達について行けないようだったら、まだ時期尚早だ、ということだろうからな……」
 楓がみるところ、荒野は、茅が自分であきらめることを願っている……のを、隠そうともしていなかった。
「……で、一週間、茅が楓の課す習練に根を上げなかったら……テン、お前と勝負させて、茅に、自分の限界をわきまえさせるつもりだ。
 茅は、身体能力的には、ようやく一月やそこいら、多少運動してきた……という程度の、ただの女の子だ。
 そんな相手に、遅れを取るお前ではないだろう?」
 そういわれたテンは、むっ、として、明らかにと不機嫌な顔になる。
「……当たり前だよ……」
 押し出すように、テンはそう答えた。
「だから、お前が、茅に引導を渡してやってくれ……」
 荒野がそういうと、テンは、不満な表情を隠そうとはしなかったが……しぶしぶ、といった感じで頷いた。
 自分のことが話題になっているというのに、茅は、特に興味のなさそうな顔をして、成り行きを見守っていた。
「……あと……は……。
 そうだ。いい忘れるところだった。
 これから、一族の、若くて暇を持て余した奴らが、この町のきて、おれたちの動向を見学するそうだ……」
 次に荒野がもたらしたニュースは、茅とガク、荒野の三人を除く全員に、少なからぬ波紋を呼んだ。
「……わざわざ、これから引っ越してくるやつらの名簿を作成して送ってくるほどだから、敵意や害意は、ないと思う。
 たぶん、本当に興味本位。ただそれだけ、だ。敵でもないし、味方でもない……いわば、やじ馬、だ。
 おれは、できればこいつらも、味方に引き込みたいと考えている……」


[つづき]
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