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彼女はくノ一! 第五話 (159)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(159)

「……加納……」
 六主家の係累が、大挙してやってくる……という荒野の告知に、最初に反応したのは、孫子だった。
「それ……いつ、知りましたの?
 それに、名簿……って、……あなた方のような非常識な方々が、あと何人くらい増える予定なのかしら……」
 声が、震えている。
 現状でさえ、かなりややこしいことになっているのに……さらに加えて、これ以上、この町の状況が複雑さを増していくのを、警戒している様子だった。
「……ええと……合わせて、百人ぐらい、かな?
 それと、知らせが入ったのは、昨日の夕方……」
 荒野は、動揺を隠そうとしない孫子とは対照的に、くつろいだ様子をみせていた。
「……あなたという人は……どうして、そういう大事なことを、後回しに……」
「見解の相違だな。
 おれにとっては、毒にも薬にもならない単なる野次馬連中よりも……今、この場にいる人たちの安全を確保する方策の一つでも考える方が、よっぽど、大事なんだ……」
 詰め寄る孫子と、淡々と応じる荒野。
『……六主家の血筋が……百人も、一カ所に……』
 荒野は、「すぐにこの場に駆けつけてこれるくらいに暇なやつらだから、たいした人材ではない」と孫子に説明し、自身でもそう信じ切っているようだが……楓は、別の意味で、不安だった。
 たとえ末端の者だろうが……仮にも六主家血族、である。
 先天的な資質、という伝でいけば……楓のような雑種の、及ぶところではないのではないか……と、楓は、危惧しはじめる。
 楓とて、六主家の血筋の者に実際にまみえたのは、この土地に移って来てからだが……はやり、根底的なレベルで、自分たち雑種とは、違う……。
「ねぇねぇ……」
 楓が物想いに沈んでいると、今度はテンが、荒野には質問をする。
「どういう人達が、くるの?」
 もともとテンは、三人組の中で、一番「一族」に対して、強い興味を見せている。
「野呂系と、二宮系が半々。
 年齢は、十代から二十代……ほとんど、若いやつらばかりだったな。お前達や、それに、この土地で今、起こっていることに、興味を持って、わざわざ出向いてくる酔狂者の集団だよ……」
「……のらさんや、最強の人、みたいな人たちかぁ……」
 野呂良太と二宮荒神のことだ。
 確かに、今目前にいる荒野を除けば、この二人が、テンたちにとってもっとも身近な「一族の者」だろう。
 ただし、この二人は、当代でもトップクラスの実力者である。
「あそこまで、精鋭だとは思わないがな……」
 荒野も、楓と同じことを考えたのか、そういった。
 そのあと、
「そのうち、ひょっこりと姿を現し、挨拶にくるだろう……」
 と、言い添える。
「やっぱり……ボクたちと手合わせしたがるかな?」
 テンが、荒野に尋ねる。
「……うーん……。
 全部が全部、とはいわないが……何割かは、申し出てくるんじゃないか? お前らの実力を自分で確かめたい、と思っているやつはそれなりにいるだろうし……。
 まあ、本気の潰し合いは、仕掛けてこないと思うけし……何人か相手にすれば、向こうも、お前らの実力を見定めると思う……」
「……じゃあ……。
 面倒だから、なるべく強い人、廻してもらうようにお願いしよう……。
 その人の中のトップを潰せば、後は静かになるだろうし……」
 炬燵にあたりながら、テンは、平静な声で不遜なことをいう。
「……あのなぁ……。
 お前は、簡単にいうけどな……筋力とか反射速度とか、直線的な要素だけが、強さじゃないから。
 スペック的に劣る術者は、その不利をカバーするための技を磨いているものだし……実際に相手にするとなると……」
 そこまでいいかけて、荒野は首を振って黙り込んだ。
「……まあ……。
 実際に相手にしてみれば、いやでも理解するか……」
「……なんだよ、思わせぶりに……」
「いや……お前らの三人の場合は……自分より弱い筈の相手に、一度、徹底的に負けた方がいいと思ってな……」
「そんなの……。
 ボクたち……本土に来てから、負け続けだけど……」
 野呂良太には三人がかかりでも、いいようにあしらわれた。
 荒神は、そもそも、戦おうという気にも、なれない。実力差が、ありすぎる……ということが、対面しただけで、ビリビリと伝わってくるような相手だ。
 秦野には、実際問題として「勝てなかった」。
 そして、荒野。
 楓と、孫子……。
 井の中の蛙的な視野の狭さは、今や、否応なく、改善をせまられている……と、テンは、思っている。
「でも……負けても、お前ら……負けて当然、と、納得しているだろ?」
 荒野は、涼しい顔をして、テンに応じる。
「お前らは……まだ、折れたこと、ないからな……。
 蹉跌や挫折を知らないから……脆いよ」
「……かのうこうやは、知っているのかよ……」
「おれ……お前らより小さいころから、荒神のやつに仕込まれていたんだぜ……」
 荒野は、やけに哀愁を滲ませた、しみじみとした口調でいった。
「……あいつ……野郎相手だと、本当、手加減しないからな……。
 今のお前らのように、のほほんとしていたら……おれ、とっくの昔に死んでいるよ……」
 これで荒野も、昔はかなりシビアな生活を送っていたようだ……と、納得しない訳にはいかない、口調と表情だった。
 しばらく、誰も何もいわない。
 しばらく、ガクがキーボードを打つ音だけが、響いた。
「……と、とりあえず……」
 沈黙に耐え切れなくなったのか、孫子が、少し慌て気味に話し出す。
「その、新たにやってくる一族の対応は、あなたたちに一任いたしますわね……」
 できるだけ係わりあいになりたくない、と考えているのが、モロ分かりなリアクションだった。
「……当然、そうなるな……。
 ま、おれも、できるだけ三人に任せるつもりだけど……」
 荒野は、孫子に、そう答えた。
「……おれや楓は、それなりに忙しいし……」
「……え?」
 思わず、楓は、荒野に聞き返す。
「なんだ、楓……。
 今までどおりの生活をしながら、テンやガク、それに、茅にまで、体術を仕込むんだぞ、お前が……。
 しばらくは、十分、忙しいと思うけどね、おれは……」
「そう……でした」
 楓は、首をすくめる。
「でも……誰かに教えるって、初めてなんですけど……」
「じゃあ……荒神方式でやれば?
 実戦に近い形で向き合えば、嫌でもおぼえるだろ……」
「……ああ……はい。
 そう、ですね……」
 荒野にそう返され……楓は、ますます小さくなる。
 自分の経験からいっても……確かに、短時間のうちに、何度も死ぬような目に合えば……嫌でも、必死に、対策を講じるようになる。
「……でも、あの……」
 楓は、上目使いに、荒野をみやる。
「テンちゃんたちは、問題ないと思いますけど……茅様の、方は……」
「手加減無用」
 荒野は、ぴしゃりと即答した。
『加納様は……本当に、茅様を止めたいんだな……』
 と、楓は思った。
「……楓……」
 それまで黙っていた茅が、不意に、楓に声をかける。
「大丈夫なの。
 茅……楓には、勝てないけど……負けることも、ない……。
 荒野のいうとおり、手加減は必要ないの……」

 それからしばらくして、香也がプレハブから母屋に戻って来た。話し込んでいるうちに、いつの間にか、いつもなら就寝する時刻になっていた。
 明日も学校があるので、その夜は解散、となった。

「……あの……」
 楓は玄関まで見送りにいき、帰りかけた荒野に、確認をする。
「明日の朝から……わたしも、一緒に走っても、いいですか?」
「……別に……おれに断る必要はないんだけど……。
 その方が都合がいいことは、確かだな……」
 荒野は頷いてそういいながら、
「茅やテンたちに仕込む件は、お前の裁量に任せるから……いちいち、方法を確認しにくる事はないぞ……」
 と、楓にいい渡した。
『好きにやっていい……っていうのが、実は、一番困るんだけどな……』
 楓は、内心ではそう思ったが、口に出してはなにもいえなかった。



[つづき]
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