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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(76)

第六章 「血と技」(76)

「やっぱり……ボクたちと手合わせしたがるかな?」
 テンも、やはり、荒野と同じことを考えていたようだ。
「……うーん……。
 全部が全部、とはいわないが……何割かは、申し出てくるんじゃないか? お前らの実力を自分で確かめたい、と思っているやつはそれなりにいるだろうし……。
 まあ、本気の潰し合いは、仕掛けてこないと思うけし……何人か相手にすれば、向こうも、お前らの実力を見定めると思う……」
「……じゃあ……。
 面倒だから、なるべく強い人、廻してもらうようにお願いしよう……。
 その人の中のトップを潰せば、後は静かになるだろうし……」
 いとも簡単にそういってのけるテンに、荒野は、激しい違和感を感じた。
「……あのなぁ……。
 お前は、簡単にいうけどな……筋力とか反射速度だけとか、直線的な要素だけが、強さじゃないから。
 スペック的には劣る術者は、その不利をカバーするための技を磨いているものだし……実際に相手にするとなると……」
 不遜なテンの態度に呆気に取られ、その自負に対する違和感の正体を説明しようとして……荒野は、不意に黙り込んだ。
「……まあ……。
 実際に相手にしてみれば、いやでも理解するか……」
 荒野は投げやりな口調で、そう付け加える。
「……なんだよ、思わせぶりに……」
 テンが、物足りなさそうな顔をして、荒野の方をみている。
「いや……お前らの三人の場合は……自分より弱い筈の相手に、一度、徹底的に負けた方がいいと思ってな……」
 案外……こいつらは、一度、こっぴどくやられた方が、いいのではないか……と、荒野は思いはじめている。
「そんなの……。
 ボクたち……本土に来てから、負け続けだけど……」
 テンは不満そうに口をとがらせる。
「でも……負けても、お前ら……負けて当然、と、納得しているだろ?」
 が、荒野は相手にしない。
「お前らは……まだ、折れたこと、ないからな……。
 蹉跌や挫折を知らないから……脆いよ」
 それに……身体能力的に、自分よりも劣る筈の相手に負け続ければ……そこから、学ぶものもある筈だ。
 そして、そうした経験は……三人よりも、強靭な肉体を持つと予測される、襲撃者たちを相手にする時、役に立つ筈だった。
『……問題は……』
 テン、ガク、ノリの三人が成長するまで……襲撃者の方が、待っていてくれるかどうか……だ。
 向こうには向こうの都合があって、今は攻撃を控えているのだろうが……攻撃が再開されるまでに、できるだけ迎撃態勢を取って置き、できれば、敵の目をこちらに引き付けておきたい……、と、荒野は思っている。
「……かのうこうやは、知っているのかよ……」
 不満顔のテンに聞き返され、荒野はげんなりとした気分になった。
「おれ……お前らより小さいころから、荒神のやつに仕込まれていたんだぜ……」
 幼少時にあんなのに「教育」を受ければ、現在、テンたちが持っているような、楽天的な全能感は消し飛ぶ。
 当時、荒野は荒神に、「逆立ちしたって勝てない相手がいる」ということを、細胞の一粒一粒に刷り込まれたようなものだった。
 その時の荒野の表情が、あまりにも真に迫っていたのか、しばらく、テンだけではなく、その場にいた全員が絶句する。
 しばらく、ガクがキーボードを打つ音だけが、響いた。
「……と、とりあえず……」
 しばしの間をおいて、孫子が「新たにやってくる一族の対応は、荒野たちにまかせる」といった意味のことをいい、荒野も素直にそれを容れた。
 実際、そっちの件は、孫子には関係がないといえば、ない。
 続いて、荒野が、テンとガク、それに茅に体術を教えることを、改めて楓に頼んだところに、プレハブで絵を描いていた香也が、母屋に帰ってきた。
 何だかんだでもういい時間になっていたので、その夜は解散、となる。

 荒野と茅が居間を後にする時も、ガクは相変わらずキーボードを叩き続けており、顔も上げようとしなかった。

 マンションに帰ると着替えてすぐにベッドに入った。食事と入浴は終えていたので、他にすることもない。茅もおとなしくパジャマに着替えて、荒野と同じベッドに潜り込んでくる。
 すっかり布団に体をいれると、茅は、荒野の体に抱きついてくる。
『……なんだか……』
 こうしているのが、当たり前になってしまったな……と、荒野は思った。
 ブラをつけていない茅の乳房が、荒野の体とに挟まれて、押し潰されている。その感触と茅の体温に、荒野の下半身が、その気もないのに反応してしまう。
「……荒野……。
 元気になった」
 茅が、荒野腋の下あたりに顔を密着させながら、呟く。
 もぞもぞとした感触が、くすぐったい。
「これは、自然現象。
 茅も、明日からは疲れることを、一杯やる筈だ。今日は、このままおとなしく寝ようよ」
「……むぅ」
 茅は、明らかに不満を含んで鼻を鳴らす。
「……このところ、毎晩やってたじゃないか……。
 たまには、静かに添い寝もいいだろ?」
 荒野はそうでもないが、茅は、行為のあと、かなり体力を消耗した様子で、ぐったりしている。そのくせ、時間が許す限り、何度でも求めてくるのだった。
 荒野の方が、自制する時を判断しなければならない……と、そう思う。
「……本気で、楓から体術習いたいのなら、生半可な覚悟ではついていけないぞ……。
 よって、これから平日は、えっちな運動禁止……」
 荒野がそういうと、荒野に抱きついていた茅が、全身を硬直させる。
「……荒野……」
 茅は、震える声で、荒野にいう。
「もう、茅に……飽きた?」
「そういう問題ではない」
 荒野は、こん、と、拳を軽く茅の頭に打ちつける。
「……何事にも、節度というものがあるだろ……。
 あと、茅の体力の問題。
 健康のため、やり過ぎに注意しましょう……って、聞いてないし!」
 茅は、布団の中に潜り込んで、荒野のパジャマを脱がしにかかっている。
「……って、こら。茅。明日は早いんだから、そういうの駄目だって……」
 茅は、聞く耳を持たず、荒野の上着の前をはだけ、荒野の胸板に頬ずりをはじめる。
「……荒野の、匂い……」
「……こらこら……」
 なにをフェテッシュなことをしているのか、と、荒野は思う。
「茅、長い間、荒野の匂いを嗅がないと、寂しくて死んじゃうの……」
「嘘をいうな、嘘を」
「でも……この温もりが欲しかったのは、本当……」
 茅は、布団の中で荒野に馬乗りになりながら、器用にごそごそと服を脱ぎ出す。
「……だから、えっちは駄目だって……」
 制止しようとする荒野の声には、懇願の色が混ざりはじめている。
「荒野は、えっちしてくれなくても、いいの」
 そういいながら、布団の中で上半身裸になった茅は、荒野に抱きついた。
「茅が、勝手にやるの」
 柔らかくて、暖かくて、好い匂いのする茅の体が、ひしと、押しつけられる。



[つづき]
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