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彼女はくノ一! 第五話 (160)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(160)

 もともと、楓は、眠りが浅い。
 だから、早朝に起きることは、特に苦にならなかった。驚いたのは、着替えて廊下に出ると、楓と同じように学校指定のジャージを着た孫子と遭遇したことだった。
「……才賀さんも、来るんですか?」
「……いけなくて?」
 何となく、緊張を孕んだ朝の挨拶だった。
 玄関に向かう途中で、スポーツウェア姿で首にタオルをかけたテンと合流する。
「ガクは、着替えてから合流してくるって……」
 テンの話しによると、ガクは、あれからずっと今でキーをタイプし続けていたらしい。
「……で、今朝、ボクが声をかけて、今、部屋に戻したところ……」
「徹夜明けで運動をしても、大丈夫ですなんですか?」
 楓が、首を傾げると、テンは、
「ガクにとっては、あのくらい、散歩程度の感覚だから、大丈夫だとは思うけど……。
 なんか……ガク、ここ数日、怪我のせいでいつもと違って激しい運動ができないから、かえってストレスが溜まっているみたいなんだよね……」
 という。
 まったく体を動かさない方が、ガクにとってはよくない……と、いうことらしい。

 そうして、楓、孫子、テンの三人で玄関を出て、マンション前に向かう。外に出ると、早朝の空気は、肌を刺すような冷たさだった。
 マンション前では、黙々とストレッチを続ける茅と、それを見守る荒野の二人が待っている。
 軽く挨拶を述べあった後、テンが荒野に「ガクは、後から来る」と告げ、すぐに出発する。荒野と茅を先頭にして、川の方に向かっていった。当然のことながら、この面子が町中を全力疾走するわけにもいかず、一般人がジョギングする程度の速度で走っていた。
「……少し前までは、この土手をずうっと走っていったんだけどな……」
 橋を昇っていくと、向こう岸には渡らずに、荒野はそういって土手の遊歩道を降りて、河川敷に向かう。
「……前では、ここで茅の自主トレとか三人組の組み手につき合っている」
 河川敷に降りると、茅は、すぐに短距離のダッシュを、何往復かしては、立ったまま少しの間休憩し、再度ダッシュの往復をする、という行為を繰り返しはじめた。
 荒野によると、メニューも、茅自身が考えているらしい。
『確かに……体力は、それなりに、つくとは思いますけど……』
 楓は、茅に体術を教える、と約束した手前、現時点での茅の能力を見極めようと、真剣に茅を観察している。
 まあ……学校の授業風景を参考にすれば……茅は、確かに、同年配の女子の中では、そこそこ、「動ける」ほうだとは……思う。
 しかし、一族の関係者と互角以上に渡り合えるレベルかというと……これは、比較する気にも、なれない。
「……ええっと……」
 そこで楓は、茅のことは後で考えることにし、テンに向かって話しかけた。
「テンちゃんは、どういう事を習いたいと思ってますか?」
 少なくともテンは、ある程度の基礎ができているし、筋力とか反射神経など、数値化できる性能でいうのなら、楓よりも上だ。
 その性能を、活かしてきれていないだけで……と、楓は、考えている。
 だから、話し合いながら、テンの資質にあった調製を行えば、それでいい……と、楓は、そう判断する。
「習えるものなら、なんでも吸収したいくらいだけど……」
 と、テンは、少し考えこみ、それから、
「じゃあ……これ、楓おねーちゃんなら、どう使う?」
 と、ポケットから折りたたんだままの六節棍を手渡した。
「……棍、ですか……。
 こういうのは、扱ったことはないんで、自己流になりますが、いいですか?」
 手渡された方の楓は、困惑しながらもそう確認し、テンから少し距離を置いて、関節を外したままの六節棍を適当に振り回してみる。
 端の棒を掴んで大きく振るうと、大きな半径を持つ、広い迎撃圏を形作る。
 途中の棒を持って両端を振り回すと、小さな半径の迎撃圏を、両手に持つ形になる。
『……なるほど……』
 扱いは、難しそうだが……。
 一通り振り回して感触を掴んできた楓は、今度は、右手で端の棒を掴み、自分の左肩に向けて、棍を振るう。
 棍は、左肩から楓の背中に当たり、右側の脇の下のあたりから、楓の前方に向かって飛び出す。背中に当たった箇所は、さほど痛くはない。しかし、楓の脇から前に飛び出した棍は、ぶんっ、と風切り音を発していた。
 背中を経由して、脇から出てきた棍の先端を、楓は左手で掴む。右手で掴んでいる棍は、すでに手放しているので、勢いを殺さずに、左手で、逆袈裟に、振り抜く。
 ぶおんっ!、と、空気を切り裂いて、棍は、楓の身長ほど半径を持つ半円と化した。
『……遠心力……と、それに……』
 派手だけど、これだどモーションが大きすぎて、見切られやすいな……と思った楓は、今度は、中間にある棒を握る。
 短く振るえば、遠心力は弱くなるが……。
『せっかくの多関節、なんだから……』
 モーションの読みにくさ、を最大限に生かすべきではないか……と、楓は考える。
 縦横に棍を振るいながらいろいろと持ち替えて、単長様々なリーチを試してみる。先ほど、自分の背中を経由させたように、手足に絡ませて、あるいは、すでに勢いのついている棍を、後押しするように蹴り、速度を変えたり軌道を修正したり、自分の体で棍を隠して、どこから出てくるのか分からないようにしたり……と、いろいろ試しているうちに、楓の動きは、どんどんアクロバティックなものになっていった。
「……な」
 いつの間にか、テンの側に来ていた荒野が、テンに話しかける。
「楓は、武器に頼らず、棍も、手足の延長としか、認識していないだろ……」
「……うん……。
 初めてで、これだけやれるのは……凄いと思う……」
 テンも、素直に頷く。
 楓は、一所に留まっておらず、絶えず体勢を変えて、棍を振り回し続けていた。おそらく、楓の脳裏では、複数の仮想敵の姿をイメージし、それを自分の四肢と棍を使用して、延々となぎ払い続けているのだろう。
 うっすらと額に汗を浮かべた楓は、少し離れてみている荒野やテン、それにテンと一緒に楓の様子を見守っていた孫子のことも、今は、意識していないように思えた。
「……あ。
 今朝は、おねーちゃんたちもいる……」
 その頃になって、ガクが、ようやく合流してきた。
 そして、楓の演舞に気づき、目を丸くし、テンに語りかけた。
「……楓おねーちゃん……棍も、使えたんだ……」
「……今日、初めて使ったんだって……」
 テンが、少し憮然とした様子でガクに答えた。
「ガクか。ちょうど良かった。お前の棍、テンに貸せ。
 テン、棍を持って、ちょっと楓とやってみろ……」
 荒野がガクに、そういった。



[つづき]
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