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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(77)

第六章 「血と技」(77)

『……やべぇ……』
 自分は上半身裸、茅は、布団で隠れていて見えないのだが、感触からするとすでに一糸も纏わぬ全裸、であるらしい。そういう状態で抱きつかれた荒野は、どこまで理性を保ているのか、とことん試されている気分になった。
 自分から、「今日はやらない」といいだした手前、そう簡単に屈するわけにはいかないのだが……。
 茅は、そんな荒野の心中を気にかける様子もなく、荒野の上に体を伏せて、すりすりとなすりつけている。すっかり反応している荒野自身に、茅の陰部が擦りつけられ、パジャマ越しに陰毛がじょりじょりと擦れる感触。もちろん、乳房も、荒野の胸板に直に接触している。何度となく抱いている茅の感触と体臭は、荒野にとってなじみ深いものとなっていたが、だからこそ、とても、強い誘惑を感じる。
 茅の方も、荒野が硬直して身動きしなくとも、それなりに高まってきているようで、そろそろ、息が弾みはじめている。それに、体温も上昇しはじめているし、肌の表面にも、うっすらと汗が浮かびはじめていた。乳首も、充血している感触だった。
 ……しばらくじっとして耐えていたが、このままでは、そのうち理性が消し飛ぶ……と予感した荒野は、
「……茅!」
 と叫んで、自分の上で蠢く茅の肩を抱きしめ、茅の身動きを封じた。
「いい加減、もう、寝る!」
「……むぅ……」
 荒野の腕の中で、茅が、むくれた。
「荒野……いけず……」
「……だから、な……」
 手を緩めると、また勝手にこちらを刺激しそうだったので、茅の肩をがっしりと自分の方に抱き寄せながら、荒野は、茅にいう。
 いつの間にか、荒野もこめかみのあたりに汗をかいていた。
 しかし、荒野の汗は、「汗」は「汗」でも「冷や汗」なのだが。
「えっちが悪いとはいわない。茅も嫌いになってないし、飽きてもいない。学校や他の事情が全て片づいたら、一日中やりまくってもいいと思う。でも、おれたちの年齢で、そんな毎晩やりまくっている人、ほとんどいないから。おれたちは、今、一生懸命普通の人々らしい生活に馴染もうとしているところで、ここで欲望に負けてそういうことばかりやっていたら、将来、お互いのためにならないから」
 一息に、そうまくし立てた。
 半分、自分自身にいい聞かせている。
「ましてや、おれたちは、表向き、兄弟ということになっている。仲が良すぎるのも、対外的な面で、かなりやばい。いまだっていろいろな人からくっつきすぎとか言われているし、普段からえっちばっかりしていたら、そういうの、普段の態度にもでると思うし。おれたちがこんな関係だと広く知られたら、良くて一緒に暮らせなくなり、最悪、ここにいられなくなる。近親相姦は大抵の社会でタブー視されているし、例えば、血の繋がりがないことを開示したとしたら、今度は、おれたちのような低年齢の男女が二人きりで生活していることが問題になる。兄弟、というふれこみがあるから二人きりで暮らせるわけで、そのふれこみを周囲に信じさせるには、二人きりの時も、これ以上、ベタベタするわけにはいかない。そういうのは、自然に態度に現れるものだそうだし、特に一部の女性は、そうした雰囲気に敏感だ」
 しゃべっている内容は正論だと思うのだが、口にするうちになんだかどんどん詭弁を弄している気分になってくる荒野だった。
「茅は、こんなことでこの土地に居られなくなったり、あるいは、今までの通り、二人一緒に暮らせなくなるの、嫌だろう?
 おれは、嫌だ。だから、やりたくても、ある程度は、我慢する。平日は、えっち禁止。そう決めた……」
 なんか、いいわけ臭いな……とおもいつつ、茅の体を抱きしめながら、最後まで、言い切る。
 荒野の気持ちの上では……今までに何度か体験した、命のやり取りよりも、よっぽど緊張していた。
 茅は、荒野の腕の中で「むぅ」とうめいたが、不承不承でも納得したらしく、最終的には「……わかったの……」といってくれた。
 荒野がほっとして腕の力を緩めると、茅は、逆に荒野の首に抱きつき、
「……そのかわり……」
 と、荒野の耳元に囁いた。
「荒野は……絶対に、他の女に靡いたら、駄目なの」
 ……なんでそんな心配をするのか……と、荒野は愕然とした。
 その時、荒野はよっぽど間の抜けた顔をしていたのか、茅は、すぐに、
「……今日の学校で……」
 と、言い添える。
『……あんなのを気にしていたのか……』
 と荒野は思った。
 今日、登校時に荒野に寄ってきた女生徒たちのことを、茅なりに気にしていたらしい。荒野自身は、彼女たちのことは、さほど気にしていなかった……というより、今、茅にいわれるまで、まるで意識していなかったのだが……。
「彼女たちはあれ、非日常的な存在にあこがれているだけ……すぐに、飽きると思うよ……」
 口に出しては、そういった。
「それに……こういうこと以外に……だな。
 茅は、もっといろいろな人と、触れあわなければいけない……」
 口にこそ出したことはないが、実は荒野は、茅が自分にばかり目を向けていることを、危惧している。
 いや、正確にいうと、茅は意外に観察眼がするどく、周囲の人々について、荒野が気づかなかったことをふと口にすることも、多々、あるのだが……それでも、茅が、荒野にだけ、過剰に感情移入をする傾向は、否定できない。
 そうした傾向を、荒野は危ぶんでいる。愛情とは別に意味で……茅には、もう少し広い視野を身に付けて貰いたいと思っているから、だが……そのあたりについては、茅を説得できるほど、自分の中でも整理がついていないので、未だ、茅には話せていない……。
「おれは……前にもいったけど、茅には、もっといろいろな人と知り合い、混じり合って、いろいろな経験をして貰いたいんだ……」
 茅は、荒野の首に抱きついたまま、じっと息を潜めて、荒野の言葉を聞いている。
「……おれだって、まだまだガキだけど……茅は、今までが今までだから、おれ以上に、世間が狭い。
 今は……二人きりの世界に閉じこもるよりも、もっと広い場所をいろいろ見たり、聞いたり……経験することが、大事なんじゃないかな……。
 そのための条件も、かなり整ってきているし……その流れを、ここに来て、無駄にしたくはないんだ……」
 荒野は、ゆっくりと、自分自身に言い聞かせるように、続ける。
「……わかったの……」
 茅がそういって、荒野から離れることには、荒野自身も力を失っていた。

 その夜、荒野は、久々に茅を抱かずに眠った。



[つづき]
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