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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(79)

第六章 「血と技」(79)

「……じゃあ、今朝は、才賀さんと楓ちゃんも一緒に走ったのか……」
 飯島舞花が、そういって、頷く。
「……わたしも、一緒に走ろうかな……」
「勘弁してくれよ、まーねー……」
 珍しく、舞花の隣にいた栗田精一がぼやく。
「こっちは、わざわざ遠回りしているんだから……朝、走るのなら、まーねーだけでやってくれよ……」
 栗田の自宅は、実は全然別の方角にある。
 舞花の鶴の一声で、遠回りになるのを承知でわざわざ早起きして、毎朝、自転車でマンション前まで来ているのだった。
「……それに、まーねー……。
 ぼちぼち、受験生だろ? 志望校、ワンランク上の学校に変えたっていってたし……」
 栗田は、「そんな余裕あるのか?」という意味を含ませて、舞花にそういった。
「そう……なんだけどな。
 でも、みんなで一緒に勉強すれば、なんとかなるんじゃないかな?」
 当事者の舞花の方が、あくまで呑気に構えていた。
「……ねぇ……飯島……。
 志望校、変えたって……ひょっとして、昨日、佐久間先輩に言われたから?」
 樋口明日樹が、心配そうな顔をして、尋ねる。
「うん。そう。せっかく誘ってくれたんだし、幸い、もうちょい手を延ばせばなんとかなる範囲だったし……」
 舞花は、平静な態度で答える。
「……余裕、だね……」
 明日樹は、そっとため息をついた。
「おっはよー!
 ……何、あすきーちゃん、暗い顔しちゃって? また受験の話し?」
 いつものように途中から、玉木が合流してくる。
「……飯島、佐久間先輩と同じ学校、受けるんだって……」
「ああ。その話しか……。
 わたしは、最初っから、あそこ志望だけどな……」
 明日樹が沈んだ声で説明し、玉木玉美が頷く。
「……いいよね、しっかり進路とか将来の目標、決まっている人は……」
「なん? あすきーちゃん、画家志望じゃないの?」
「……学校の部活程度で、そこまで決められないよ……」
「そんなもんかな……。
 わたしは、志望校も部活も、将来やりたいことを前提に選んでたけど……」
「……玉木みたいに、しっかりと将来の目標が見えている人ばかりではないから……」
 樋口明日樹と玉木玉美は、そんな会話を続けて行く。
「……そんなに難しい所なのか?」
 そうした事柄にあまり興味のない荒野が、二人に尋ねる。
 難関だ……ということは、以前に聞いていたが、日本の受験に関する知識など、荒野が豊富に持っている訳もなく、正直、実感が沸かないのだった。
「うちの学校からは、毎年、一人か二人しか合格者がでないね……」
 玉木が、荒野にそう教える。
 ……そんな学校に、佐久間先輩は、「みんなでいらっしゃい」とか、気軽に誘ったのか……と、荒野は思った。
「……進路指導とか、これからいやでもうるさくなるから……おにーさんも、腹をくくった方がいいな……」
 飯島舞花も、したり顔でそう頷く。
「まあ……頑張っては、みるけど……」
 科目により出来不出来はあるものの、荒野も、決して物覚えが悪い方ではない。
「……そっかぁ……そんな所に、誘われたのかぁ……」
 自分のことなのに、今更のように、そう頷いた。
「加納は……昨日、善処します、って言い切りましたもの……」
 孫子も、珍しく口をはさんで来た。
 そういう孫子は、普段から予習復習をやる習慣があるので、学校の成績はかなりいい。
「……まあ、なんとかなるだろ……」
 荒野は、他人事のように、呟く。
 実際、荒野にしてみれば、他に考えなければならない問題が山積みしているので、受験とか進路の事まで頭が回らない……という面がある。
「……大丈夫なの……」
 いつの間にか、荒野の隣に来ていた茅が、荒野の服を掴みながら、そういった。
「茅が、荒野の勉強を、見るから……。
 絶対、成績は、あげるの……」
 なんだか知らないが、茅はひどく真剣な顔をして、そういった。
「……勉強、っていえば、昨日片付けた教室、今日の放課後から使えるんだろ?」
 舞花が、さりげなく話題を逸らす。
「そうそう。
 許可はとっているし、教材もそろえてくれてるし……後は、実際にやってみるだけ、だね……」
 玉木も、舞花の誘導に乗ってきた。
「……茅ちゃんや佐久間先輩が、いろいろ頑張ってくれたから、割りといいスタートが切れそうだよ……」
 玉木の話しによると、佐久間沙織が先生方や受験が一段落した三年生を引っ張って来てくれたので、教材に関してはかなり充実して来ている……ということだった。
「本番を終えたばかりの先輩方が、知恵を貸してくれるんだもん……これは、強いよ……」
 玉木も、何だかんだいいながらも、受験対策にはそれなりに気にかかっているらしい。
「……そういや、玉木たちはいつまで部活やるつもりなの?」
 たいていは、三年になると区切りのいいところで引退するものだが、大会やシーズンなど、種目により引き際が比較的明確な運動部に比べ、文化部の引退時期は、なんとなく生徒個人の裁量に委ねられる傾向がある。
 樋口明日樹自身は、さほど成績に自身があるわけでもなかったので、三年になるのと当時に、実質的に部活動を停止し、受験勉強に専念するつもりである。
「……うちは……まだ、やりかけの仕事は山積みだし、部長とかの役職だけ後輩に譲って、下手すると、卒業間際まで現役だなぁ……」
 玉木がそう答えると、明日樹は、「余裕ねぇ」とため息をついた。
「……そういや、放送部の部長って……玉木?」
 荒野が、ふと頭に浮かんだ疑問を口にする。
「いんや。有働君。
 そういう堅い仕事は、有働君に任せることにしている……」
「……彼も、苦労だなあ……」
 明日樹に続いて、荒野も嘆息した。

 そんなことをしゃべっている間に、学校に到着する。
「……今日、早速、一回目の自主勉強会やるんだけど、みんなも来る?」
 校門をくぐったあたりで、玉木がみんなに聞いた。
「おれ、部活」
 荒野が、片手をあげて答える。
「わたしらは、今日はクラブないから、行く」
 これは、飯島舞花。
「……えっとぉ……まーねーがこういっている時は、拒否権ないです」
 と、栗田精一。
「……わたしは、パソコン部の方次第ですね……様子見て、いけそうなら、行きます」
 これは、楓。
「今日の放課後は、用事がありますので……」
 孫子はそう答えた。
「……才賀さんも、今日は部活だっけ?」
「いいえ。部活ではなく、ビジネスです。
 徳川と話し合わなければならないことが山ほどありますので……しばらくは、そちらで手一杯になるかと……」
 孫子は孫子で、なにげに闘志を燃やしているのであった。
「あー……なるほど。
 そっちかぁ……」
 玉木は、納得した。
 なんとなく……徳川と孫子、の二人がタッグを組むと、予想外のことをおっぱじめそうな気もしてくる……ので、玉木は、なんとなくわくわくしてくる。
「そっちのほうも、面白い動きが出て来たら、こっちに情報流してね。
 即効取材にいいって、場合によってはタダでPRするから……」
「ええ。その時は、是非お願いします……。
 徳川はあれで、抜けている所がありますから、こちらがしっかりとフォローしてあげないと……」
「分かります、分かります。
 何とかと紙一重、な人だから……しっかりと手綱を取って、儲させて上げてください……」
 性格も育ちもまるで違う二人だが、「金儲け」という要素が絡むと、意外な程意見の一致をみる、孫子と玉川だった。

 そうやって北叟笑む二人をみて、荒野は、
『……こいつら……。
 まるで学生らしくねぇ……』
 と、思った。




[つづき]
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