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彼女はくノ一! 第五話 (166)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(166)

「実際のところ……どうするよ、おい……。
 ここまでのもんとは、正直……」
「どうするって……やるだけだろ、ここまで来たら……」
「……抜けるなら抜けろよ……おれは、一人でもやるぜ……」
「……能力的に劣勢でも、それをカバーする方法はいくらでもあるだろう……」
 四人組の会話が漏れ聞こえて来る中、孫子はどこかシラケた気分になってきた。
 荒野のいうとおり……所詮、たいしたことのない連中なのか……。

 少し離れた所では、ヘルメットを外したテンがパイプ椅子に座らされ、メイクカ係の女生徒に顔を直されていた。
「……いやー、まだ、パイロットフィルムを作成中、って段階だったんだけどさ……」
 いつの間にか、玉木が孫子のすぐ横に来ている。
「……ブルーバック合成用の素材とかは、この中で撮ることも考えていたので、機材や消耗品の調達とかは、前倒しでしてたんだよねー……」
「前にも少し話しを聞いていましたけど……これ、本当に作るつもりでしたの?」
「……うーん……。
 テンちゃんたちもノッてたし、近場の人たちに声をかけたら、割に感触がよくてな、これはいけるかなぁ、と……。
 あのテンの装備もな、大元の部分はテンちゃん自身が作ったもんだけど、塗装とか細かいアクセサリー類は、知り合いの知り合い、みたいな人に頼み込んでやってもらってるんだ……」
「……そんなお金……どこから……」
「そこは、それ、気は心というやつで……例えば、原型職人さんなんかは、版権とか設定資料を優先的に回す、という約束とバーターでお手伝いしてもらう、とか……後回しにできる人件費は、とことん後回しにして……」
「人件費はともかく……ツールとか機材の費用は……」
 玉木は、孫子から目を逸らした。
「その辺は……トクツー君とか……茅ちゃんとか楓ちゃんに、頼んで……英語圏のフリーソフトで、使えそうなものダウンしてインストールして貰って、簡単なマニュアルも整備して貰って……」
 孫子は、目を閉じて、軽いため息をついた。
「……それ、将来的には、採算がとれそうですの?」
「……とります!
 コンテンツそのもののクオリティについては、手前味噌を差し引いても自信があるし、関連グッズも売って見せます!」
 どうやら、玉木はそれなりにシビアなビジネスとしても、考えているようだった。
「……自信が、あると……」
「なければ、ここまで大勢の人を動かせません……」
「……わかりました。
 後で資料とか、今の時点で出来上がった映像を見せてください」
「……ええと……」
「場合によっては、わたくしがスポンサーになることも、考えます……」
「ええ!」
「……ちょうど、学生の身分でも可能な、投資先を探していたところです。今のわたくしには、せいぜい数百万単位のお金しか用意できませんが……こうしたインディーズ系の製作費として、それでも……」
「……ええ! かなり、助かります!」
「……まだ、投資すると決めた訳ではありませんので……」

「……そっちの用意は、いいか?」
 四人の中で、一番小さな少年がいう。
「こっちは、全員腹を括ったぜ……」
「……ボクは、いつでもいいけど……」
 テンは椅子から立ち上がって、周囲を見渡す。
「でも……関係ない人たちは、どこかに退避していたほうがいいと思う……」
『……放送部も才賀も、一度事務所に引っ込むといいのだ』
 スピーカーを通した徳川の声が響いた。
『どのみち、手持ちでは奴らの動きは追えないのだ。
 それに、工場内に設置したカメラを操作してくれると、助かるのだ……』
「……一時、撤退!」
 数秒考えて、玉木が決断する。
「アップは、後で撮って編集すればいい!
 機材や人を壊されたら、後が続かない!」
 玉木や孫子、放送部の面々が、ぞろぞろと事務所として使われているプレハブ内に退避する。

「……なんだか、妙な具合になりましたが……」
 四人の中で一番体格がいい少年が、テンの前に進み出る。
「……行きます……」
「いいよ。いつでも……」
 テンは、六節棍を構えた。
「……四人同時に、でも……武器を使っても……」
「……もちろん……」
 少年は、手首だけを動かし、テンに向かって、ある物体を投げつけた。
「道具をつかわなければ、太刀打ちできませんから!」
 テンは、投げ付けられた物体を、反射的に棍で払う。
 と……。
 その物体が、弾けた。

 徳川の事務所に入り、先程まで編集作業を行っていたパソコンの前に座る。徳川がセッティングしていたらしくパソコンの画面には、工場内の光景が映し出されている。
「……けむり……玉?」
 その画面をみた玉木が、ぼうぜんと呟いた。
 画面の中では、テンの周囲にだけが、白い気体に包まれている。商店街でのことがまだ記憶に新しいこの時点で、玉木にとっては、あまり愉快な光景ではない。
「……視界を、潰す……。
 相手の感覚器を無効にするのは、それなりに理に適った方法なのだ……」
 徳川が、したり顔で解説する。
 それより……。
「……カメラ、もっとアップにして!
 こんな遠くからでは、よく分からない!」
「……今……ええと、こうか……」
 初めて触れる操作系に戸惑いながら、放送部員の一人がカメラを操作して、立ちのぼった煙の周辺を、アップにする。
「……ああ!」
 玉木が、うめいた。
 煙の周辺では、四人が、高速で移動しながら、立て続けに「何か」を投げ込んでいた。
「このままでは……やられちゃう!」
 不用意に、テンに近づき過ぎるのは、危険……と判断し、遠巻きに攻撃することを選択したのだろう。
「普通なら、な……しかし……」
 徳川が、にやりと笑った。
 そしてマイクのスイッチをオンにして、叫ぶ。
「……テン、いつまで遊んでおるのか!
 装備の評価試験は後にしろ!」

『……テン、いつまで遊んでおるのか!
 装備の評価試験は後にしろ!』
 あたりはすっかり、煙で覆われ、視界はゼロ距離。
 とっさにバイザーを降ろして、密閉態勢に移ったが、ボンベを背負ってきていないので、かなり息苦しい。完全に呼吸ができないよりは遥かにマシだが、フィルターで濾してから外気を取り込むので、効率が悪いし、第一、自分の呼吸音がうるさく響く。
 煙で目を潰して、ほぼ同時に、鎖が体中に巻き付いていた。その上で、プロテクターに手裏剣や六角が当たる音と感触。しかし、楓の攻撃を見慣れているテンにとっては、それらは、とても軽やかに感じた。
『……簡単に、いってくれるよな……』
 テンは、思う。
 一族も……荒野が常々いっているように……弱いなら弱いなりに、工夫をする……。
『……でも……』
 今までは、相手の出方を確認したかったので、あえて攻撃を受け止めてきたが……。
『いくよ……』
 テンが、手首の内側にあるボタンを手探りで操作すると……プロテクターが爆発した。

 ぼんっ!、ぼん!、という音がして唐突に、煙の中から、「なにか」が複数、飛び出してきた。
「……おわっ!」
「なんじゃ、こりゃ!」
 煙……テンの周囲をぐるぐると回りながら、ありったけの武器を投げ込んでいた少年たちは、足を止め、すんでのところでそれを躱す。

「……才賀経由で、炸薬が入手できたのでな……」
 徳川が、滔々と解説した。
「前回のガクの件もあったので、いつでも装甲をパージできるようにしておいたのだ。
 ……こういう使い方をするとは、思わなかったが……」

 ……最後に、大きな固まりが、煙の中から飛び出した。
「……今度は……」
 身軽になり、棍を構えた、テンだった。
「……こっちの番!」




[つづき]
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