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第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(168)
「……戦闘開始から、三分かかってないよ……」
玉木の目は、点になっている。玉木は、テンが本気で動くところを見るのは、はじめてだった。
「最初の煙のところだけ、もたもたしてたけど……あとは、しゅばばっ! って感じで、動き、早すぎ……」
「……時間を、かけすぎなのだ……」
玉木とは対照的に、徳川は不機嫌な顔をしている。
「テンのヤツ……こんなところで、性能試験などしおって……」
「やっぱ、最初のは……わざともたもたしていたの?」
玉木が、徳川に尋ねる。
「様子見、でしょうね……。
装備の性能も、ですけど……一族の者が、どれくらいやるのか、確かめてから片をつけにいきました……。
徳川のいうとおり、テンは、慢心しています……」
徳川の代わりに、孫子が玉木に答えた。
「……楓の例で考える限り……彼らは、一族の中でも下流の者でしょう……。
三流に勝っても、なんの自慢にもなりません……」
孫子は、楓や荒野以外の一族の者を、あまりよく知らない。しかし、特に何度か対戦してことのある楓のことはよく知っている。だから、たやすく比較することもできた。
「……楓? 松島のことなのか?」
「楓ちゃん、そんなに凄いの?」
徳川と玉木が、ほぼ同時に孫子に聞き返す。
そういわれてみれば……ここにいる者の中で、楓の真の姿を目の当たりしたことがあるのは、孫子自身とテンくらいなものだ……。
「……え、ええ……まぁ……」
孫子は、珍しく言葉を濁す。
孫子にしてみれば……今までの成り行きがあったから、こうした場面でも、素直に楓のことを褒めることができない。
「……あの方々よりは、多少、マシですわ……」
そこで、そのような微妙な言い方になる。
このような時孫子は、素直ではなかった。
「ま……それは、それとして……」
玉木は、孫子の様子から、「話題を変えた方がいい」と判断する。
どのみち……このまま事態が推移すれば、楓や、今目の前にいる孫子自身、それに荒野などの勇姿も、カメラに収める機会が来るだろう……という、かなり確実な予感が、玉木にはあった。
「この映像も……使えるな……」
玉木は、様々な角度から捕らえたビデオ映像を、パソコンの画面に再生してみせる。徳川が工場内に多数設置したカメラはそれなりに高感度のものだったが、四人とテンの動きが早すぎるのか、ほとんどブレている。そうした部分が、かえって迫力を生み出している……ように、玉木には思えた。
玉木の頬は、自然に、ほころんでいた。
「……使え、使えいっ!」
徳川も、何故か喜んでいる。
「……イメージ戦略、というわけですか……」
二人の様子をみて、孫子は、玉木たちが何を考えているのか、段々と理解してきた。今までは、「商品としてのコンテンツ作成」の話ししかしていなかったが……。
「そうなのだ。
この間の商店街でのように、衆人環視の環境下で、少なからぬ被害を出すような局面も、今後、予測できる……だから、事前に、どちらが敵でどちらが味方か、刷り込んでおくのだ……」
徳川が、孫子に笑い返す。不敵な、笑いだった。
「シルバーガールズを……正義の味方にするのだ!」
「それで、お金も稼げれば、申し分なし!」
玉木も、はしゃいでいる。
二人とも、同時に四人を相手にして圧勝したテンの様子をみて、ハイになっていた。
「……それで……ボランティアや商店街のマスコット・キャラにも、すると……」
二人ほどお気楽になれない孫子は、腕を組んで考え込む。
「イメージ的な相乗効果は……見込めますわね……」
「見込めます、見込めます!」
玉木がかぶりを振る。
「カッコいいこーや君……確か、そういうの、かなり気にしてたでしょ?」
……そうなのだ……。
孫子にしてみれば神経質に思えるほど……荒野は、自分たちの存在が、周囲から疎まれる可能性を……気にしている。
「それで……あらかじめ、プラスのイメージを、広範に……」
「……そうそう。
カッコいいこーや君には、このあたりのこと伏せておいた方がいいような気もするけど……」
「そうですわね……。
あの子、意外に……」
「他人を、当てにしようとしない……」
孫子が明言しなかったことを、玉木は、ズバリと断言する。
「他人の意見を聞くことはあるから、頑固というのとは、ちょっと違うんだけど……。
大抵のことは自分でできちゃう子だからかなぁ……。
イマイチ、わたしらを信用しきっていない、っていうか……」
「わかりますわ……」
孫子は、頷く。
実は、玉木が指摘したことは、孫子自身にもある程度当てはまるのだが、孫子には、その自覚はない。
「……だからこの件は、あくまで欲得ずくで、わたしたち主導で行う、ということで……」
「……いいですわね。
その代わり、数字の方はわたくしがしっかりと見させてもらいますけど……」
ここで孫子がいう「数字」とは、「会計」つまり金銭の動きである。
「適所適材、ということなのだな……」
徳川が、けけけ、と笑った。
「みんな、好きにすればいいのだ。
あいつらが来てから、学校周辺がかなり楽しい場所になってきたのだ……」
徳川の言葉に、放送部一同がうんうんと頷いた。
「……あのう……」
いつの間にか、事務所内に入ってきた四人組が、後ろから声をかけてきた。
「……加納の荒野さん……皆さんに、その、随分、好かれているんですねぇ……」
「好かれている……っていうより、生きたネタ?
弄り甲斐があるっていうか……」
振り返った玉木がそう返答したので、四人組の目は点になった。
六主家本家の直系を「ネタ」扱い……。
「お前たちにとってどれほどの存在かは知らないが……われわれにとっては、多少毛色の変わった友人、という程度のものなのだ……」
徳川篤朗は、そういう。
この瞬間、四人は、荒野がいう「一般人との共存」が、理論先行のものではないことを、実感した。
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つづき]
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