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彼女はくノ一! 第五話 (169)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(169)

「……お兄ちゃんたち、弱すぎ……」
 四人組に続いて、テンが事務所内に入ってきた。両手で、パージしたプロテクタを抱えている。どうやら、全て回収してきて、遅れたらしい。
「ほら。これ、観て。完全に六角とか手裏剣、弾いている。
 表面が少し削られているくらいでしょ? これ、使い捨てのつもりで作ったし、本当ならのめり込む筈なんだけど……」
「……確かに、試作品にライフル弾をぶち込んだときは、かなり深いところまで潜り込んだのだ……」
 徳川篤朗が、テンの言葉に頷く。
「……でしょ?
 そのために、これだけの厚みをつけているわけで……」
 テンも、頷く。
「これじゃあ、性能試験にもならないよ……。
 それから、ボク、三人の中で一番弱いから……お兄ちゃんたち、他の二人には手を出さない方が無難だよ……」
「……随分、大きくはないかしら、それ……」
 孫子が、テンの手元を興味深げに覗き込む。
「わたくしの知っている防弾装備は、もっと薄くて硬い素材を、特殊な繊維で包んだ形をしていますけど……」
「あの、もこもこ、っとしたヤツでしょ?
 だって、あれ、動きにくいし……。これ、嵩張って見えるけど、実は見かけほど重くないんだ。
 ボクたちの場合は、自分で弾の方を追尾できるから、全身をくまなく覆うよりは、手足とか動かし易い場所にどっしりした素材をくくりつけておいた方がいいんだ……」
 テンの言葉通り、テンのプロテクタは、二の腕、脛、胸部などを覆うだけの代物であり、それに、ヘルメットが加わる。すでに観たように、必要がある場合には、火薬によって瞬時にパージでき、身軽にもなれた。
「防御には、頼り切らない……か……」
 そういって、孫子は、考えに沈む。
「一般人の防弾とボクらの防弾は、コンセプトが違うし……普通の防弾は、外部からの力を遮断するもので、ボクらの防弾は、外部からの衝撃を自分で受け止めるためのもの。
 一般人がボクらの装備をつけても、重すぎて動けないし……」
 ……一族の人たちが、全員、今のお兄ちゃんレベルだったら、こんなもの必要ないんだけどね……と、テンは、肩をすくめた。
「……これ、刃物も防げますの?」
 孫子は、テンに尋ねる。
「もちろん。
 刃物の場合、途中で食い込んで動かなくなる筈……」
 気泡混じりのセラミックと何種類かの合金、それに、特殊な繊維を織り込んだ、複層構造になっている……と、テンは説明する。
 刃物が食い込んだ場合、目の細かい強靱な繊維が刃に絡むような仕掛けになっている、という。
「……コスト、高いんじゃありません?」
「高いけど……トクツーさんは、兵器としては安い方だ、っていってた……。
 実際、孫子おねーちゃんのライフルほどじゃあないし……」
「……あっちは、精密機械。こっちは、単なる弾避けでしょう……」
「単なる……って、結構、凝ったハイブリット素材とかふんだんに使ってたりするんだけど……」
 ……孫子とテンの会話がどんどんマニアックな方向に向かいはじめたので、玉木や放送部員たちは動画の編集、徳川はやりかけの自分の仕事に戻りはじめる。
「……あのう……」
 四人組を代表して、どこか軽薄な印象を与える青年が、誰にともなく声をかける。
「おれらは……」
「……ん? 加納の所には、行かなくてもいいのか?」
 徳川は、いかにも面倒臭そうに対応した。
「関係者なんだろ? 挨拶くらい、していったらどうだ?」
「……じゃ、じゃあ……皆さん、お忙しそうなんで、おれたちは、これで失礼しますんで……」
「……ちょっと、お待ちなさい」
 何を考えたのか、玉木が、四人を止めた。
「お兄さんたち、カッコいいこーや君のところに行くの?
 お土産とか用意している? してない。そう……。
 実はね、駅前にうお玉って安くておいしい魚屋さんがあってね、そこで何か適当なもの買っていくといいよ。なるべくいっぱい買っていった方がいいね。カッコいいこーや君、この子たちが下宿しているお隣と懇意にしてるし、そこ、大所帯でお客も多いから、食料品は多すぎるってことはない……」
 しっかり、実家の営業行為を行う玉木であった。
 すっかり毒気を抜かれ、玉木のいうままに、「じゃあ、これから手みやげ買ってから、その家に向かいます……」と頷いて出て行く四人組。
「……あ。茅? 今、どこ? 学校を出たところ? そう。ちょうど良かった。
 今から、四人組の、やや外見に不自由な方々が、商店街の玉木の家に向かうから、よろしく指導してやってくださいませんこと? ええ。一族の人間です。それで、テン一人にさんざんやりこめたところで……。ええ。慰めるのは構いませんが、玉木の家のためにも、なるべくお金を使わせて、旨いものを仕入れてくるようにし向けてくださいませんこと……」
 四人組の姿がドアの向こうに消えると、孫子は素早く携帯電話を取り出し、茅にかけはじめた。
「……今夜は、カニ尽くしだそうです……」
 孫子が通話を切ってそういうと、テンは、素直に「わーい!」と歓声をあげた。
「……カニかぁ……わたしも行こうかな……」
 玉木も呟く。
「ちょうど、ガクに、このプログラムのことを聞きたかったところなのだ……」
 パソコンの画面から顔も上げずにそういう徳川。
「食べきれないほど買わせるように、といっておきましたので、合流しても大丈夫だと思いますわ……」
「……えーと……三島先生、空いてるかな……。あの先生、料理の腕だけは確かだからなあ……」
 玉木が、自分の携帯を取り出してメールを打ち始める。
「……羽生さんにも、連絡しておいた方がいいですわね……」
 孫子も、携帯を取り出してメールを打ち始める。

 一通り、夕食関係の手配が済むと、「誰はともなく、あと小一時間ほどやって、今日の作業は終了」という合意ができた。
 徳川は、それまでしていたガクのプログラムの検証を一旦中止し、孫子とともに今までの業務内容を検証しはじめた。
「……細かい所まで目が行き届いてないから、放漫といえば放漫経営なのかも知れないが、大きくは損をしていない筈なのだ……」
 表計算ソフトにぶち込んだ会計データを孫子にみせながら、徳川は、いう。
「……大きく損はしていない代わりに……もっと儲けられる所で、儲け損ねていますわね……。
 特許やパテント頼りの経営も、開発費を必要経費として織り込めば、大きく損はしませんが……営業力をつけたり、開発したものを自社で生産すると、もっと大きな利益に……」
「利益も出るだろが、リスクも大きくなるのだ。それに、今までは良いパートナーに恵まれなかったから、一人でできることには限界が……」
「今後の展開を考える前に、もう少し現行の事業モデルに合理化の余地がないか……」
「人を雇う必要があるにしても、出来るだけ少人数で収めて欲しいのだ。特に、馬鹿はここでは不要なのだ……」
「その点は、ご安心ください。才賀グループの派遣社員は、精鋭揃いです。
 でも……そうですね。一人で一個小隊に匹敵する人材を引き抜いてきましょう。並の人材では、あなたの部下は務まりそうにもありませんから……」




[つづき]
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