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彼女はくノ一! 第五話 (170)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(170)

 茅と共に学校を出たところで、茅の携帯が鳴った。茅が出て、歩きながらしばらく話す。それから、茅のほうに向き直り、
「……才賀から。
 一族関係のお客が来るから、玉木の家で手土産を見繕ってやってくれ、と、いわれたの」
 と、いう。
「……一族関係の、お客……ですか?」
「例の、移住者みたい。テンに挑戦して、いいようにあしらわれたそうなの。徳川の工場を出て、商店街の方に……」
 茅がそういいかけた時、二人乗りの改造バイク二台が、けたたましいエンジン音をとどろかせ、二人のすぐ横の車道を通り抜けた。
「……すとぉぉっぷ!」
 後部シートに座っていた小さい背中が、大声を張り上げた。
「今、AAA監視対象と加納が保護している子、いたよ!」
 その声と同時に、二台の改造バイクが急ブレーキをかける。
 ぞろぞろと四人の特攻服が降りてきた。
「なにか……用ですか?」
 楓は、表情を引き締めて、茅の前に移動する。
「……荒野さんとこの手の者っすか?」
 四人の中で一番ごついのが、一歩前に進み出た。
 それから、不意に腰をかがめ、
「あのぉ……うお玉って魚屋さんの場所、教えてほしいんだけど……」
 と卑屈な声をだした。
 今にも揉み手をせんばかりの勢いだった。

「……はぁ……みなさん、もうテンちゃんたちと、その、接触、してきたんですか……」
「ええ。あっさりとやられてきました……」
 ゴツイの……佐藤と名乗った青年が、頷く。
「……おれら、二宮だから、自分より強い人には滅多なことでは逆らわんっす……」
「……あのおねぇさん、きれいだったなぁ……」
 佐藤の隣で遠い目をしている青年は、田中と名乗った。
「この人のあれは、一種の病気ですから、気にしないでください」
 どうみても田中や佐藤よりは一回りくらい年少の少年が、楓たちに囁く。
「……すみませんねぇ。付き合っていただいて……」
 ほっぺたが丸くて、目が細い青年が、楓たちに頭を下げる。年少の方が高橋、年配の方が鈴木と名乗っていた。
 格好はアレだけど、話してみると気さくで礼儀正しい人達だった。
「……いいえ。どうせ、商店街には寄っていく予定でしたし……」
「才賀に、思いっきり高いものを買わせろ、っていわれているの……」
「……茅様!」
「いいですよ。別に。
 幸い、金はありますし、おれたちの引っ越し祝いも兼ねて、ぱぁっーっといきましょう!」
 田中君が、軽薄な声をだしはじめる。
「……お前はすぐそれだ。
 あのな。これから加納の直系にご挨拶にいくんだぞ。もう少し気を引き締めてだな……」
 佐藤君がぶちぶちと田中君をたしなめはじめるが、当の田中君の方は、聞く耳をもった様子がない。
「……この二人はいつもこんなんだから、気にしなくていいですよ……」
 四人の中で、背も年齢も一番少ない高橋君が、楓たちにそう告げた。
「……皆さん、こちらに越してくるんですか?」
 楓が、尋ねる。
「ええ。まあ……。
 ぼくは、鈴木さんのアパートに転がり込みます」
 高橋君が答える。
「……おれたちは、しばらく近くにあるウィークリーマンションにいます。これから、適当な職と宿、探しですね……」
「……住所については、長老経由もいくつかをご紹介いただいているので、あまり心配していませんが……問題は、就職先ですね……」
 田中君と佐藤君は、そんなことをいいだす。
「……それは、たいへんですねぇ……」
 楓としては、当たり障りのない返答しかできない。
「でも……そんなにまでして……どうして、ここにやってきたんです?」
 楓の感覚でいえば……たとえ末端だといっても、六主家の血筋なら、それなりに一族経由で仕事を得ることも可能な筈であり……それをおして、このような田舎町にこなければならない理由が、楓には想像できなかった。
「荒野さんがはじめたことに対する興味……というのが、表向きの理由ですが……」
 鈴木君が、自分の右腕を見つめながら、答える。
「ぼくたちは……半端なんですよ。
 一般人の範疇には収まらない。けど、一族の中には、もっと卓越した能力の者がごろごろいる……だから、せいぜい、一般人にもこなせるような半端仕事しか回ってこない……。
 でも、それじゃあ……こんな体に生まれてきた甲斐がないじゃあないですか……」
 うにょっ、とした顔に似合わず、鈴木君のいうことは、理路整然としてた。
「……そこに、荒野さんです。
 荒野さんがやっていることは……要するに、一般人と一族の垣根を、取っ払おうっていうことでしょ?
 年寄り連中や、すでに現場で働いている人たちは、今まで維持してきた秩序を破壊しようとする動きを、冷笑的に見ている者が大半ですが……若い者を中心にして、荒野さんがみせる可能性に興味を持っている者は、今の時点でもかなり多いし……徐々に、増えています……」
 鈴木君は、話しているうちに、徐々に言葉に熱を帯びてく。
 荒野は……本人の意志はさしおいて、一種のオピニオンー・リーダーと目されているらしい。
「……今日、荒野さんの友人、何人かと話して見ましたけど……なんというか、みんな、一風変わってるっていうか、流石は荒野さんの友人、って思いましたね……」
 これは、田中君。
「ああいう人達に囲まれていたら……これならなんとか出来るのかもしれない、と思ってしまうの、分かる気がしました……」
 これは、高橋君。
「……あれ、みんな、荒野さんと同じ学校の生徒でしょ?
 あの年齢っていったら……おれ、何も考えていなかったぞ……」
 これは、佐藤君。

 そんなことを話している間に、商店街に到着。
 商店街の人込みをみた四人は、絶句した。
 人出に、ではない。雑踏の大半を構成する人々の、ファッションに、だ。
「……な、何かのお祭りですか、これ?」
「似たようなものなの。
 バレンタインのゴシック・ロリータ・フェアなの。先週から商店街主催でやっている、人集めのイベントなの」
「これが……日を追うにつれて、人が多くなって……毎日のお買い物も一苦労で……うお玉はこの先ですからね! ちゃんと、はぐれずについてきてくださいね!」
 茅と楓は、そういいながら、すいすいと慣れた様子で人込みをかき分けて行く。遅れまいと、じたばたと後を追う四人。
 制服姿で鞄を持ったままの楓と茅、それに、特攻服の四人、という珍妙な組み合わせは、否が応でも人目を引いた。加えて、茅は、この商店街ではしっかりと顔を覚えられている。立ち寄る店、一軒一軒で背後についてくるガラの悪い一団について聞かれ、その度に、茅は、臆面もなく「荒野の手下なの」と答えた。
 四人組は、「ちょうど人数がいるから」という理由で、茅の荷物持ちとして散々、あっちこちに連れ回され、見世物にされた上、ようやく最後に玉木の実家であるうお玉に到着した。
「……この人たち、このお店で一番いいものを買ってくれるといっていたの。お金は、あるそうなの……」
 うお玉の主人、ということは、玉木の父親でもある訳だが、そのおやじさんに茅は、開口一番そういって、四人組を指さした。
「……へい、らっしゃい!
 そうだね、今日は、カニのいいのが入っているよ! まとめて買うとかなりおまけするから!」
 ……なんとも居心地の悪い時間を過ごした後だったので、四人は、うお玉の主人が、「これも、これも、こいつもおまけだ!」とカニを何杯も包むのを制止する気力も、残っていなかった。

「……これで、この辺では悪いこと、できないの。
 悪いことをしたら、荒野の顔を潰すことになるの……」
 後に、茅は、四人組を連れ回したことについて、このように語った。
 周辺住人に四人顔を覚えさせるのが、目的だった、と。




[つづき]
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