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彼女はくノ一! 第五話 (173)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(173)

「そういえば、あたな方……ここでの職をさがしている、というお話しでしたわよね……」
 孫子が、新参の四人のうち、田中君と佐藤君に話題を振る。
「……はいっ!」
 田中君が、その場でシャン、と、背筋を延ばした。
「もう少し……あと一週間ほど待ってくだされば、職場をつくって差し上げますけど……。
 あなたがた、普通免許くらいは、持っていますわよね?」
 孫子は、田中君の気負い込んだ返事は華麗にスルーして、事務的な口調で続ける。
「そっか……運ちゃん、か……」
 玉木も、頷いた。
「確かに……こういうのに勝手に歩き回られるよりは、手元に置いといた方がいいだろうし……」
「そういうことです……」
 孫子も、頷く。
「……何の話しっすか?」
 佐藤君が、聞き返す。
「いやな、孫子ちゃんが、商店街の商品をデリバリーする会社を立ち上げようとしているらしくてな……」
 前から話だけは聞いていた羽生が、横合いから口を挟む。
「でも……孫子ちゃん、会社ってそんなすぐ、立ち上がるもんなんか?」
 羽生は、今度は孫子に話題を振った。
「所在地と連絡先くらいあれば、登記だけならすぐにできますけど……」
 孫子は、説明する。
「……今回の場合は、車両や駐車場、荷物のプール場所、それに配車に必要なシステムやマニュアル一式などが必要になりますから……それらを手配するのが、先決ですわね……」
「そういった、立ち上げのために必要な期間が、一週間前後……か……」
 玉木が確認すると、孫子も頷く。
「幸い、最初の運用資金は加納が出資してくれるというので、その辺の心配はなくなった訳ですけど……そういった手配関係は、わたくし学校帰りにわたくし自身ですることになります……」
 事務所や倉庫、駐車場などの不動産探し、と、システム回りの整備、実家経由で、必要な車両やオフィス備品を安く調達する……などなど、孫子は、明日からはかなり多忙になるという。
「……ま、孫子ちゃんも、商店街では顔だしな……」
 玉木が、茶々をいれる。
「……明日と明後日あたりは、予算調整や書類の整備。それが一段落したら、備品や不動産の手配と、挨拶回り……」
 年末のイベントと、そして、今回のバレンタイン・イベントの立役者である孫子の顔を知らない商店主は、いない。がからこそ、商店街の店舗を一軒一軒回っての挨拶回りも、あまり抵抗はない。
「……ちょうど週末にかかりますから……せいぜい盛装して、みなさまの目を楽しませようかと思います……」
 ようするに、例のゴスロリ・スタイルで練り歩きながら、営業活動も行う、ということらしい。
「……で、おれらはなにを手伝えばいいんでしょうか?」
 田中君が、揉み手をしながら孫子にお伺いを立てた。
「事務仕事……は、無理でしょうから、挨拶回りをする時に、ついていらっしゃい。後は、肉体労働は、任せます。仕事をした分は、正規の報酬を支払います……」
「はいはい。それくらいならお安い御用で……」
 にやけながら答える田中君。
「……うっすっ!」
 迫力のある返事をする佐藤君。
「ま、本人たちが納得しているんなら、別にいいけどな……」
 我関せず、といった態で呟く荒野。
「出資させる以上、確実に儲けを出す仕組みを作り上げて見ますわ……」
 そんな荒野ににっこりとほほ笑む孫子。
「最初は、スクーター数台から始めますけど……徐々に、手を広げて行く予定です……」
「……ソンシちゃんは、そっちの方で……タマちゃんは、シルバーガールズか……」
 羽生が、今度は玉木に話を振る。
「はいはぁーい!」
 玉木は、元気よく片手を上げた。
「製作快調、っす! 素材もどんどん溜まっているし、編集作業も、すいすいーって……」
「あの……基本的な質問なんですけど……」
 楓が、おずおずと片手をあげる。
「……テンちゃんやガクちゃんの映像を作る、っていうのは、理解できましたけど……。
 そういうのって、発表場所あるんですか?」
「最初は、ネットとか、あと、商店街の液晶ディスプレイから、開始だね……。
 数十秒とか、せいぜい数分のスポットを、予告編としてどんどこ流しておいて……話題的に暖まってきたところで、長めの本編を発表する。
 いずれは、上映会もやるし、DVDパッケージやダウンロード販売も、考えているけど……当面は、わたしらも学校があるわけだし、長いのは無理だね……」
 ……今度の春休みにでも、少し本格的な製作期間が取れるといいんだけど……と、玉木は肩をすくめた。
「まあ……そこいらが、現実的な線だよな……」
 荒野も、頷く。
 そっちらに関しては……営利目的、というよりも、町おこしのシンボル・キャラクターとしての側面の方が、大切だと、荒野は思っている。
 テンやガクたちが演じるキャラクターにいい印象を与えて、普段から流布しておけば、万が一、この先、彼女らが人目の多い場所で市街戦でもやらかした時……ひょっとしたら、排除されなくてもよくなるかもしれない……。
 このあたりの計算は、打ち合わせた訳でもないのに、荒野は、孫子や玉木と同じような結論を出していた。
「……それから……」
 それまで黙って殻から身をほぐして与えたり……といった浅黄の面倒を見たり食事をしたりしていた徳川が、不意に発しゃべりだす。
「才賀が、特許関係に強い法律屋を何人か紹介してくれるというのでな。テンやガクたちが作ったソフトも、どんどん知財として押さえていくのだ……」
「……茅も、なにか作るの……」
 徳川の言葉に続けて、茅も頷いた。
「この先……お金が必要になる側面も、多くなっていく……。
 財源は、多様であるほどいいの……」
「ハードとソフトの違いはあれ、こちらも、もともと、開発稼業の人間だから、売り込み先にはいくつか心当たりがあるのだ……」
「……ってか……売り物に、なるのか?」
 荒野は、徳川の態度に、露骨に不審な顔をしている。
「……なるな……。
 昨夜、ガクが組んだプログラムを一通りみてみたが……実にエキセントリックな代物だったのだ。
 パターン認識とかデータ圧縮など、あれ一つの中に、国際的に通用する独創的なアイデアがざくざく入っている……。
 テンや茅はいうまでもなく……こうなると、ノリがどういうプログラムを組むのか、知りたくなってくるのだ……」
 ……全員が一丸となったら……下手すると、量子コンピュータでも作りかねん……と、徳川は大仰なしぐさで頷いた。
 そういわれても、荒野や楓は、それがどれだけ凄いことなのか、実感できないのだが……。
 荒野は、そちら方面に関してはあまり造詣が深くなかったし、楓にとってコンピュータは、実用的なツールでしかない、先進的な部分に関しては、あまり興味や知識がなかった。
「……なんとなく、凄い……ということは、わかった……」
 荒野としては、半信半疑の表情で、そう頷くより他、なかった。
「だが……そっちは、数カ月とか数年という長いスパンでの儲け話になるな……短い期間で利潤を上げるとなると……孫子や玉木の方法のが、妥当なのだ……」
「……お金がすべて、とはいいませんけど……」
 徳川がそういうと、孫子も頷く。
「あって困るものではありませんし……それに、そちらの方も、地元で働く人が増えれば、それだけこの土地に根付くのが容易になるのではないかしら?」
「……ああ……はい……」
 田中君はあ、孫子の顔を見つめて、ぼんやりと頷いた。
「なんか……」
 佐藤君は、その場にいた全員の顔を見渡し、最後に、荒野の顔をじっとみる。
「すごいっすね……ここの人達……」
 半ば呆れている口調で、そういった。




[つづき]
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