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彼女はくノ一! 第五話 (175)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(175)

 次の日の朝、香也は、目覚ましがなる寸前に、自分で目を覚ました。
 以前ほど自堕落な生活をしていないせいか、香也の体内時計は、かなり正確になっている。目が覚めるか覚めないかのうちに、枕元で騒がれるのが嫌だから、時間が来れば否が応でも自分で起きるような習慣になってしまった。
 ぼけらーっとした顔をして、パジャマのまま、洗面所に顔を洗いに行く。
 洗顔を済ませて居間に行き、速攻で炬燵に手足を潜り込ませ、背を丸める。この季節の朝は、寒い。
 居間に入ると、台所から羽生譲が顔を出し、声をかけてきた。
 挨拶をすると、「卵焼きと、豆腐とわかめの味噌汁」と、メニューを告げてくれた。狩野家の朝は、和食であることが多い。人数分のトーストを用意するよりも、時間がかからないからだ。休日の朝は、起きる時間にばらつきが出てくるので、その限りではないが。休日の朝は、だいたい、住人各々が、好きに台所の食材を使用して、自分の朝食を用意する、ということになっている。香也の分のみは、誰かしらその場に居合わせた人が用意する。でないと、何も食べずにそのままプレハブに向かって、夜まで平気で絵を描いていたりするからだ。
 香也が炬燵で丸くなっていると、どやどやと楓、孫子、テン、ガクの四人が入ってくる。楓と孫子はすでに制服に着替えていたが、四人とも、頬が上気して、赤くなっている。二、三日前から、みんなで一緒に朝のジョギングだかランニングにでている、ということは香也も聞いていた。おそらく、ざっとシャワーでも浴びて、身繕いをしてからこっちに来たのだろう。早起きが苦手な香也には信じられない苦行に思えるが、彼女たちにとっては、どうということもない行為らしい。
 ……彼女たちと自分では、根本的な所で違いがあるのではないか……。
 と、香也は、時々、思う。
 香也自身に比べれば、彼女たちは、容姿にしろ、身体能力にしろ、頭の出来にしろ、総じて「出来過ぎ」なのだ。特に劣等感にさいなまれる、ということもないのだが、香也は、「基本的な能力の水準値に、相違がある」という認識を持ち、淡々と受け入れている。彼女たちとの比較、ということだけではなしに、香也は、同級生たちと比較しても、自分は、大抵の面で劣っている、と自認している。また、それでよい、とも、思っている。
 賑やかな朝食がはじまる。
 昨夜のカニ尽くしも誠に結構な食事であり、香也も、いつもよりも食べ過ぎた口なのだが、それでも一晩を過ごせばそれなりに空腹にもなる。香也だけではなく、他の皆も育ち盛りであり、それぞれに旺盛な食欲をみせる。が、香也以外は全員が若い女性ということもあり、賑やかな中にもどこか華やいだ雰囲気が漂っている。
 ……香也自身は、あまりそういうことには留意しないが、例えば香也の同級生男子がこの中に混ざり込んだら、感涙にむせぶ者の方が多いに違いない。

 いつものように、いつものメンバーで登校するのだが、最近では楓や孫子もかなり顔が広くなってきたので、以前にも増して登校中、様々な人に声をかけられている。一緒に登校する面子の中で、一番故知が少ないのは、他ならぬ香也であろう。他の連中が部活関係とかクラスの友人とか昔からの腐れ縁とか、それなりに「知り合い」と呼べる人間がいくばかいるのに比べ、香也自身は、家族とこの場にいる人々くらいしか、「知り合い」と呼べる者がいない。また、香也も、対人関係については極端に淡泊な性質だったので、それで特に不都合は感じていない。
 そんな淡泊な香也も、用事がありさえすれば自分から他人に話しかけることもある。
「……え? わたし?」
 合流してからすぐに香也が声をかけられたので、玉木珠美は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
 周囲に連中に混ざっていることが多いので、香也ともそれなりの頻度で会話をするようになっている。仕事として絵やデザインを頼んだことも、ある。しかし、香也の方から話しかけられる、というパターンは、極めて少ない。というか……これが、はじめてなのではないだろうか?
「……んー……」
 香也は、玉木を呼び止めてから、どうやって自分の意志を伝えるべきか、考えはじめた。
「……有働さん。放課後、空いてるかな?」
「……あっ。
 うどー君の方かぁ……」
 玉木は、腕組みをしてふむふむと頷いている。
「……どうかねー。彼も、ボランティアの準備とか、かなり方々かけずり回っているし……」
「……んー……。
 その、ボランティア……ゴミ置き場になっているところを、誰かに案内して貰いたいんだけど……」
「おー……そっちの用事かぁ……なるほどぉ……。
 でも、だったらちょうどいいや。うどー君たちは、この寒い中、毎日不法ゴミ置き場のマップ作りに勤しんでいるよ……。ちょっと声をかければ、それに便乗すんのは問題ないと思うんだけど……。
 うー……でも、わたしからいうよりかは、直接声をかけてみたら?
 昼休みでも放課後でも、放送室かパソコン実習室にいけば、誰かしらうちの連中がたむろしていると思うし……」
「……んー……。
 そうする……」
 香也は、答える。
 放送室は敷居が高いので、昼休みにでもパソコン実習室に出向いて、放送部員の誰かしらに声をかけてみるつもりだった。
「香也様……ゴミ置き場、いきたいんですか?」
 側で聞き耳を立てていた楓が、尋ねる。
「……んー……。
 土曜日にほんの少し、スケッチしただけだから……ポスターは、すぐにでも描かけるけど……自分の絵にも、したいし……」
「そういえば……この間も、そんな絵を描いていましたわね……」
 孫子も、会話に加わる。
「……んー……なんか、ね。
 気になるんだ……ああいう、野ざらしになった廃棄物が……」
 間延びした口調だけを聞くと、ちっとも熱を感じないのだが……香也にしては、多弁だ。
 楓と孫子は、飄々とした態度とは裏腹に、香也が、かなりやる気になっているのを感じた。
「……あの……温かくしていってくださいね。
 また、風邪を引かないように……」
 茅との先約がある楓としては、そういうよりほか、ない。
「今日は狩野君……来ないのか……。
 じゃあ、部活の方も、開店休業だな……。
 一人でやってもつまんないし、わたしも、休んじゃお……」
 樋口明日樹も、そういった。
 もともと……毎日部活を行わなければならない必要性も、ないのであった。




[つづき]
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