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彼女はくノ一! 第五話 (176)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(176)

 昼休み、給食を食べ終えた香也は、楓や茅についてパソコン実習室に向かう。そこに、何人かの放送部員が常駐している、という話しだった。香也は特に用事も無いので、滅多にパソコン実習室には足を踏み入れない。
 だから、予想外の喧噪に、少し面食らった。
「ああ……香也様は、あまりこっちに来ないんでしたね……」
 楓は、棒立ちになった香也を一度怪訝な顔で見返し、それから、不意に納得した表情になった。
「……なんだか毎日のように、人が増えちゃって……。
 最近では、放課後とか昼休みとか、いつもこんな具合ですよ……」
「……んー……」
 香也は、パソコン実習室が人いきれができるほどの混雑ぶりをみせているのに、少し引き気味になっている。
「……大丈夫ですよ。
 これだけ人がいれば、もう一人くらい増えたって、誰も気にはとめませんから……」
 楓に後押しされる形で、香也は混雑するパソコン実習室に入る。ここで香也がぐつついて自分で動かなければ、楓なら、文字どおり、「背中を押す」くらいのことはやりかねない……と思ったので、香也は自発的に足を進めた。
 これだけの人込みのなかで、目立つ行為はしたくはなかった。
「……今日は、放送部の人達は……あ。あのあたりにいますね……」
 楓が指さす方向に、香也も顔だけは記憶している放送部員が、確かに何人か、固まっている。
 香也は、人の名前を記憶するのは不得手だが、顔を覚えるのだけは、得意だった。
 荒野は、末端が設置された机と人の間を縫うようにして、そちらに向かう。
「……あの……。
 有働さんとかは、来てませんか? 一年の、狩野ですけど……」
 香也は、放送部員たちにそう声をかける。
「……有働さんがいなければ、別の、ゴミ関係のことが分かる人でも、いいんですけど……」
「……ええと……あっ!
 君、絵の人じゃないかっ!」
 香也に声をかけられた男子生徒は、一瞬怪訝な顔をしたが、不意に大声をあげた。
 すると、回りにいた放送部員たちも、次々と、
「ああ……あの……」
 とか、
「ども。いつもお世話になってます……」
 とかいいながら、香也に頭をさげはじめる。
 香也の顔はあまり知られていないが、香也の存在と仕事は知られている……という反応だった。
「有働さんは、まだ来てないけど……もうじき、来ますから……まあ、ここにかけて……」
 ある放送部員が、「いつもうちの玉木が無理いってすみませんねー」とかいいながら立ち上がり、自分で空けた椅子を香也に勧める。
 香也は弱々しく抵抗したが、強引に肩を押されて、結局、その椅子に座った。
 香也にしてみれば、彼ら、あまり親しいとはいえない放送部員たちの妙に親切で愛想の良い様子が不審でもある。
「……あ、あの……ぼく、不法ゴミ置き場の場所を……」
 知りたいだけだから……と続けようとする香也の言葉を、手近な場所にいた放送部員が遮った。
「……はいはい……。
 それはね、今、こういうのが出来ています……」
 その放送部員は、慣れた手つきで目の前にある末端の画面にブラウザを立ち上げ、アドレスバーにURLアドレスを打ち込む。
 駅や橋、主要な道路などをシンプルな線で描いた、学校周辺の略図が表示された。
「……はい、これ……ここいらの、地図っすね……って、これも、前に狩野君に頼んで、ざざっと描いて貰ったのを取り込んだもんなんですけど……」
 ……そういえば、時折、休み時間に玉木がやってきて、求められるままに、その場で絵を描くことが、ままある。香也は、そうしたその場限りの依頼された絵の内容は、大抵忘れ果てているのだが……こんな絵も、先週あたりに描いたような気もしてきた。
「……で、この絵、クリマカブルマップになっていましてね。
 この、旗の所にカーソルをあてて、クリックすると……。
 ほら、出た……」
 その放送部員のいうとおり、画面が、別ページに切り替わる。
 ふんだんに写真や文章が入ったページで、ある不法投棄ゴミの集積場になっている場所の、詳細なレポートだった。ざっと文面を斜め読みすると、近所の人やそこの地主さんの談話なども入った、かなり本格的な内容に思えた。
「……今は、こういう場所をリストアップして、順番にレポートしているだけですけど、ぼちぼち人数も集まりそうなんで、そしたら今度は、お片付けレポートになっていく訳ですわ……。
 これ、とりあえず、ブログに写真とか文章をみんなでぶち込んでから、後で番地や項目毎にカテゴリを設定して分類しているんすけど……」
 などと説明してくれたのだが、その手の事柄にはとことん疎い香也には、何が何だかよくわからない。
 そんなことを話しているうちに、有働勇作が大きな体を機敏に動かして、パソコン実習室に入ってきた。
「あ……来てたんですか? 狩野君……」
 入ってくるなり、香也の姿に気づき、にこやかに声をかけてくれる。
「彼、有働さんを訪ねて来たんすよ……」
「……ああ。それはどうも、お待たせをいたしました……。
 ちょっと、他にもいろいろ雑用が入りまして……」
 有働勇作は、言葉遣いと物腰が丁寧、ということの他に、大柄なわりにきびきびと動き、鈍重な印象がない。有働は、体の大きさでいったら、おそらく在校生の中で一番大きい筈だが……それでも、近くにいて威圧感を感じることが、ほとんどない。
「……んー……。
 ちょっと、用があって……」
 香也は、急いで要件のみを伝える、ということが得意ではない。だから、ついつい間延びしたしゃべり方になるのだが、有働は、せかしたりすることなく、自然体で香也が話し終えるのを、待っている。
「もう一度……今度は、じっくりと時間をかけて、ゴミ放置場所のスケッチを、したいんだけど……」
「わかりました」
 香也の要件を呑み込んだ有働は、その場で即答した。
「今日の放課後も、幾つかのレポート部隊が出向きますので……その時にでも、ご案内します……。
 ぼくも、出来る限り同行するつもりですが……他の用事が入るかも知れませんので、そういう時は、他の放送部員に頼んでおきます。
 放課後、このパソコン実習室に集合、ということで、いいですね?」




[つづき]
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