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彼女はくノ一! 第五話 (177)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(177)

 放課後、香也は帰り支度をして、一度美術準備室に寄り、常時そこに何冊かキープしてある新品のスケッチブックを取り出し、パソコン実習室に向かう。今朝、そういっていたように、樋口明日樹の姿は見えなかった。
 それから、鞄とスケッチブックを抱えて、パソコン実習室へと向かった。
 パソコン自習室は、昼休み以上に混雑している。パソコン部、放送部、自主勉強会……などのグループごとに固まって、打ち合わせをしながら、作業を続けているわけで、騒がしいといえば騒がしいのだが……活気に満ちた、騒がしさ……のように、香也は感じた。
 香也は、放送部員がたちがたむろしている方向に背を丸めて歩いて行くと、その姿に気づいた放送部員たちがさざめき始めた。
「や。や。や。どうもどうもどうも」
 そのうちの一人の男子生徒が立ち上がって、香也に向けて騒がしいと挨拶をする。ネクタイの色で確認すると、香也と同じ一年生だった。
「有働はまだ来ていませんけど、ここでちょっと待っていてください……」
 そういって、香也に、空いている席を勧める。香也は、おとなしく勧められるままにそこに腰掛けた。
「……有働がくるまでの間、例によって、ちょこちょこっとカットを描いちゃってくれませんかね……。
 これ……この子たちの、なんですけど……」
 そういって、その放送部員は、末端の画面に、何枚かの写真のスライドショーを表示させる……。
「……んー……」
 その写真を確認した香也は、うなった。
「これ……うちの……」
「はいはい。
 次期美術部長さんのおっしゃる通り、件のその子たちは、ここでは、シルバーガールズという名前になっております……」
 その放送部員は、揉み手をしながら、香也に説明した。
 にこやかな表情だったが、細めた目の奥は笑っていなかった。
「で、そのシルバーガールズですが、今度、正式にキャラクター商品などの展開も進めることになりまして、つきましては狩野君にもご協力いただき、ちゃっちゃといつものように……」
「……いい、けど……そういうのは、ぼくよりも、羽生さんのほうが向いているような……」
 実際、羽生譲は、マンガやアニメなどの既存作品のキャラを、かわいくて丸っこいディフォルメキャラとしてリファインするのが得意である。
「……それに……この子たちの服の模様……この間、玉木さんにいわれて何パターンか考えたけど……そのうち、どれが採用されたのかも、聞いていないし……塗装された実物も、まだみていないし……」
 香也は末端に表示された写真を指さしながら、そういう。香也にとって、実際に塗装されたものや、実物を自分でみていない……ということは、かなり重要な要素だった。
「……おい、鎌田。
 あんまりごり押ししても……」
 他の放送部員が、香也に話しかけた放送部員に注意する。
「急ぐ必要ねーし……それに、どうせ、今日これからゴミを見にいく予定なんだ。
 その帰りに徳川の所に寄って、ちょこっと実物を見せてもらえばいいじゃないか……」
「……そういえば、あの子たち、今日も工場にいっているって連絡あったよな……。狩野君さえよかったら、玉木に途中から合流する、って伝えておくけど……」
 さらに別の放送部員が、香也にそう告げて早速携帯をとりだした。
「……んー……。
 お願いします……」
 香也は、携帯をとりだした部員にそう返答する。寒い場所に長居したくない香也にしてみれば、ありがたい申し出だった。徳川の工場に寄れるのなら、そこを少し借りて、スケッチの整理もさせてもらおう……とか、香也は考えはじめている。
 その工場に、テンやガク、玉木のほかに、楓や茅が待ち構えている……とは、この時点では、香也は予測していない。
「……やあ。どうも、おまたせしました……」
 そんなやりとりをしている所に、香也と同じ、やぼったい学校指定のコートを羽織った有働裕作が、パソコン実習室に入ってくる。
「では……狩野君とレポート班は、出発の用意を……」

 放送部員レポート班の大半は、自転車通学組だということで校門でいったん別れ、香也と有働、それに、わずかに数名の放送部員が、バス停に向かう。歩いて行けない距離ではないが、この寒い中、とぼとぼと何十分も歩くのも……ということで、意見は一致していた。
 バス停まで歩く道程で、同行していた放送部員が、さきほどの鎌田と香也のやりとりについて、有働に耳打ちする。
「……はぁ……鎌田君が、そんなことを……」
 一通りの事情を聞いた有働は、ため息をついた。
「部活にも熱心な人なんですが……どうも、先走ることがあって……。
 どうも、ご迷惑をおかけしました……」
 有働が、香也に向かって頭をさげる。
「少なくとも、放送部内では、狩野君に対しては何か頼む時は、玉木さんを通すようにしているのですが……」
 と続ける。
 さまざまな画風で、しかもその場で絵が描ける香也は、放送部にとっては重宝する存在でもあり、だから、仕事を頼み過ぎて負担をかけ過ぎたりすることのないよう、一旦、玉木を通すことで仕事量を調節している……と、説明された。
 そういえば……玉木が「なにか描いてくれ」といってくるのは、決まって休み時間で、しかも、一回につき、その休み時間内で終わるような細かい仕事しか、頼んでこない。だから香也も、その場その場で、気軽に依頼に応じることができたのだが……。
 説明されて、はじめて、
『……そうか……調整、してくれていたんだ……』
 と、香也は気づき、感心もした。
「……鎌田のやつ……焦っているんですよ……」
 一緒についきた放送部員が、ぼそりという。
「今の二年生……玉木さんにしろ、有働さんにしろ、凄いから……。
 一年生は、人数が多いだけで、あんまり目立つやつ、いないし……」
 そういった放送部員も、一年生だった。
「……ああ……」
 いわれて、今度は、有働が感心したように、うめく。
「それは……気づかなかったな……。
 でも、その、人数の多さが、有利に働いている場面も、多々ありますし……。
 玉木さんはともかく、ぼくなんかは体が大きいから目立っているだけですよ……」
「……謙遜、ですよ、それ……。
 玉木さんだって、有働さんが足元かためなければ、自由に動けない訳ですし……」
「でも……それをいったら、一年生諸君だって……」
 香也をそっちのけで、そんなことを話しはじめる有働と放送部員たち。
 聞きながら、香也は……人数が多いなら多いなりに、いろいろな悩みがあるもんだな……と思った。実働部員が樋口明日樹と香也だけで、あとは幽霊部員……という美術部には、無縁の悩みでは、ある。
 その存在さえ忘れられがちな弱小美術部と、活発すぎる活動内容で校外にも存在を知られている放送部とでは、比較するのも馬鹿らしい……という側面は、あるのだが……。





[つづき]
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