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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(96)

第六章 「血と技」(96)

「……じゃあ、住む所なんかも、自分で……」
「「はい! 引っ越しは、昨日、済ませました!」」
 酒見姉妹は、ユニゾンで答える。
「「……親元を離れて、晴れて二人暮らしです!」」
「あの……親御さんは、反対……しなかったのか?」
 荒野は、弱々しく抗弁する。
「「しましたけど……お母様は野呂の出ですし、いうこと聞いてくれないと、暴れちゃうぞっていったら、お父様がこの町のことを教えてくださって……。
 加納の若様のお膝元なら、大きな間違いもないだろうって……」」
 野呂……とは、術者個々人の気骨や能力に見合う分だけ、欲望を充足させることを是、とする気風がある。よく言えば実力主義的、悪くいえば力任せの実力行使や我が儘を容認してきた。
 そうした気風が、六主家の中で一番「技」に重きを置く野呂の文化を形作っている面もある。事実、六主家の中で、一番職人気質が強く、技の研鑽に熱心なのは、「我が儘で協調性のない」野呂、でもある。
『……つまり……』
 こいつらの両親は……こいつらの我が儘をいなすのに疲れて、こっちの方に押しつけてきた、と……。

 一般人社会とは違い、一族には「一定の年齢に達すれば成人」とみなすコンセンサスが存在しない。年齢よりも、実務に出た経験の有無、で、社会的な責任を取れる人格であるのか否かが、判断される。
 その伝でいえば、何年も前から一族の仕事をこなしていた酒見姉妹は、立派な「大人」なのだが……だからとって、彼女らが好き勝手に暴れて周囲に迷惑をかけたら、それなりに両親にもそれなりに類は及ぶ。
 親の、子に対する管理責任、という文脈ではなく、一族の内部での心証が悪くなったり恨みを買ったりすれば、それだけ自分たちの今後の仕事に差し支える。
 いまだ、バリバリの現役である酒見姉妹の父母にしてみれば……。
 彼女たちは、押さえつけておきたい。
 しかし、姉妹は、自分たちの手には、そろそろ余りはじめている。
 という、微妙な時期だった訳で……ちょうどそんな時期、荒野がこの土地で、一般人社会との共存を目指している、というニュースを拾い、双子をこっちによこした……。
 二人の話しを総合して、荒野の想像力で補完すると、大体、そんな次第であるらしい。
『……頭、いてぇ……』
 少し前までの楓や孫子も、十分に問題児だと思ったが……酒見姉妹も、少し違った意味で、扱いに難渋しそうな予感が、ひしひしと、した。
 荒野が、内心で頭を抱えはじめた時、荒野の携帯が、鳴った。

「あ。茅。
 そう。もうすぐ帰るか。実は今。え? そう。商店街で一緒にいた三人。あ。例によって一族関係だから、誤解のないように。
 え? え? って……ちょっと待て、どうしてそう……。
 いや、確かにあの恰好だと、遅いか早いかの差はあれ、才賀となんかあるのかも知れないけど……その、けしかけるような真似は……。
 してない? ならいいけど。うん。うん。
 って、こっちの人たちも、その、才賀に負けず劣らず……あー。扱いに、慎重さが必要となる人たちだから……その、な。
 冷静に。冷静に。
 うん。うん。あ。ちょっと待って。今、聞いてる……」
 荒野は一度携帯から顔を放す。
「……皆さん。メシ、どうします?
 もうすぐ茅が帰ってくるし、用意するの、これからだし……。
 なんだったら、一緒に食いますか? ここら辺、まともなメシ屋が少ないし、まだ準備とかしてなかったら、時間が時間だし、うちで食べていくのが……」
「はあ……。
 しょ、初対面で御馳走になるのも気が引けますが……確かに、何も用意していませんし、か、茅様にも、お会いしておきたいので……」
 野呂静流がそういって、こくん、と頷いた。
「「……わたしたちは、不要なのです。
 すでに、新居で準備を整えておりますので……」」
 双子は、そう声を重ねる。
「……あ。人数は、おれたちプラス、一人分ね。
 昨日、買ってきた材料で、全然足りると思うけど……。
 うん。うん。そうれじゃあ、また、後で……」
 荒野は電話を切って、双子の方に向き直った。
「で……さっきの話しの続きなんだけど、君たちがどういうつもりでここに来たのか、その経緯は、理解した。
 でもさ……今日の夕方の、殺気のは……どういうつもりだったの?」
 荒野は、にこにこと笑みを浮かべながら、二人に詰め寄る。
「……この間も、学校で……一般人の観ている前で、一族の若い衆に絡まれてさぁ……。
 もちろん、軽く撃退したわけだけど、本当、迷惑なんだよね……本家の血筋ってだけで、名を上げるためだけにつけ狙われるのって……わざわざ対戦しなくとも、こうして対面すれば、実力差は大体、見当がつくだろうに……いちいち相手にするのも、面倒でさぁ……」
 にこにこと微笑みながら、荒野が双子に向けてそんな話しをしていると、荒野の携帯が、また鳴った。
「……え? 才賀? なんで才賀が、今頃……。
 ベランダに出ろって? なんで? 出れば分かる?
 なにいっているんだよ、お前? 挨拶って……。
 いいよ。ちょっと待ってな……」
 荒野は、三人に向かって頭を下げた。
「……すいません。
 知り合いからの連絡で、ちょっと込み入った話があるとかで、一旦席を外します……」
 そういって荒野は、ベランダに出るために、サッシを開けた……途端、シュン、と、「何か」が荒野の頬をかすめ、室内に飛び込んだ。
 同時に、どがん、と何物かが床に叩きつけられる音がする。
『……軽い、ご挨拶ですわ!』
 荒野の持っている携帯電話から、孫子の声が聞こえ、そのあと「……ツー、ツー、ツー……」という音に切り替わる。孫子の方から、通話を切ったらしい。
 ……つまり、これは……内部を狙撃しやすいように、おれに、窓を開けさせた……。
 荒野がぼんやりとそんなことを考えていると、
「……なんじゃこりゃぁあ!」
 双子の片割れが、起きあがりつつ、叫んだ。
 純の方なのか、粋の方なのか、荒野には、判別できないが……手に持った山刀に、見覚えのあるゴム弾が、食い込んでいる。
 孫子の、スタン弾だった。
 どうやら……咄嗟に飛来したスタン弾を視認し、隠し持っていた武器で受け止め……でも、運動エネルギーまでは殺すことができず、派手に椅子ごと後ろに倒れ込んだ……と、いうことらしい……。
 直撃を食らわなかっただけ、流石……というべきなのだろう。
 小柄で華奢な彼女たちが、座った大勢であんなものを食らって、派手にぶっ倒れる倒れる程度で、済んでいるのだから……。
 その時、荒野の携帯が、みだび、鳴った。
「……あ。楓か……。
 今、そっちに才賀、いないだろう?
 出て行った所? 心当たりないかって?
 あるよ、ある。おおあり。
 いやね……たった今、才賀の挨拶が、うちの客人に命中したところでな……。
 いや、一族の関係者だから、大事には至らなかったが……」
 荒野は、軽くため息をついた。
「……問題なのは、こっちの客人も、才賀に負けず劣らず、血の気が多いってこったな……」
 楓に向かって説明しながら、荒野は、
『……なるように、なれよ……もう……』
 内心……かなり投げやりに、なっていた。




[つづき]
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