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彼女はくノ一! 第五話 (182)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(182)

「……あー……」
 結局、孫子は、夕食が済んで片付けをしているところに帰って来た。
 ……おまけをつけて……。
「……ちぃーす……」
 荒野が、肩にかついでいるのが一人。
「ゴスロリ子ちゃんが一人……」
 出迎えた羽生は、とりあえず、指さしながら、数えた。
 せっかくのコスチュームをボロボロにしている孫子。その表情は、何故か晴れやかだった。
「ゴスロリ子ちゃんが二人……」
 もう一人、孫子が抱えて、いるゴスロリ少女がいた。ぐったりと全身の力が抜けている。
「ゴスロリ子ちゃんが三人……」
 荒野を除く三人は、孫子も含めズタボロで……。
「……カッコいい、こーちゃん……また、か?」
 羽生が、尋ねる。
「また、です。
 今度は夕日をバックに……では、なかったっすけど……」
 荒野も、どこかあきらめの入った表情で、頷く。
 ……猫の子じゃないんだから……新しいのが来たからって、片っ端から喧嘩してんじゃないよ……と、羽生は思った。
 ……こんな時、真理ならどうするかなぁ……と少し考え、羽生は、
「……とりあえず、お風呂、直行……」
 孫子に向かって、風呂場のある方を指さして見せた。

 風呂場の直前まで、荒野は担いで来た子を運び、孫子も、それに続く。孫子と他の二人はそのまま風呂場に入って行き、荒野は、居間に戻って来た。
「……でえ、どうなん? あの子たち、新手?」
 居間に残っていた人々を代表して、羽生が荒野に質問をする。
 居間には、夕食後、さっさとプレハブに引っ込んだ香也以外の全員が、興味深々、といった様子で荒野の返答を待ち構えている。
「……ええ。まあ……。
 移住組です、けど……詳しいこと聞く前に、才賀がはじめちゃったもんで……。
 ちょっと聞いた所では、普通の女の子としての生活がしたいとかで……」
「……ふつーの……」
 羽生が、感慨深い顔をする。
「……ソンシちゃんの叔父さんと、気が合いそうだなぁ……」
「……後の詳しいことは、当人たちとか、才賀のヤツに聞いてください。
 悪いですけど、もう一人、来客がいるもんで……一旦、帰ります……」
「……お客さん?」
「こっちは、あの二人とは違って、結構大物です。
 今、茅と一緒に食事作っていますが……食事が済んだら、本人に確認してみて、こちらにも挨拶に来ますか……」

 荒野が帰ると、居間に残った人々は騒然とした。
「……ゴスロリが……当社比、三倍……」
 羽生譲は、難しい顔をして、しょーもないことをポツリといった。
「あ! ……それよりも、あの人たちの着替え! 着ていた服は、ボロボロだったし……」
 楓は楓で、生活感のあり過ぎる心配をして、パタパタと足音を立てて居間を出て行った。
「……今度の人達は、強いのかなぁ?」
 ガクは、首を捻っている。
「あの二人はともかく……もう一人は、かのうこうやが大物っていうくらいだから……相当なものなんじゃあ……」
 テンが、ガクの言葉に答える。
「……そっかぁ……じゃあ、その、大物の人に、稽古つけてくれるように、頼んで見るかなぁ……」
「……その前に、ガクは、怪我の方をしっかり直せよ……」
 腕組をしてそんなことをいいはじめるガクに、テンが、突っ込みを入れた。
「……傷、もうだいたい、塞がっているんだよね……。
 明日診てもらって、お医者さんがいいっていったら、それでもう通わなくていいって……」
 ガクは、にへら、っと笑った。
「……今まで、フラストレーションが溜まっているからなぁ……これで完全に直ったら……もう……」
 ガクが、くすくすと気味の悪い笑い声をあげはじめる。
「……また、無茶をして……すぐに、怪我するなよ……」
 テンは、ガクから目をそらす。

 しばらくして、孫子たち三人が風呂から上がった頃、荒野が茅とサングラスの女性を伴って、再度尋ねて来た。
「……ど、どうも。は、はじめまして。
 の、野呂、静流なのです……」
 玄関先で頭を下げる女性。年齢は……羽生譲と、同じくらいだろうか?
「……のろ、っていうと……年末の帽子のおにいさんと同じ姓だな……」
「……ぼ、ぼうし?
 り、良太のおにいさんが、こちらに来たのですか?」
 静流、と名乗った女性が、荒野の方を見る。
「……ああ……年末に、様子を見に来た。
 それと……売り込みだな……自分を傭えって……。
 そういや、一族の関係者でこっちに来たのは、のらさんが初めてだ……」
 荒野がそう答えると、
「……お、おにいさん、らしいのです……」
 その女性は、感慨深げな表情を作って頷いた。
「失礼ですが、あの帽子の方と、ご兄弟か、なにかで……」
「きょ、兄弟ではないですけど……と、遠い親類で、一時期、一緒に育てられていたのです……」
 羽生は、「あ。そうっすか……」とあっさり頷いて、中に入るように勧めた。
 ティーセットの箱を抱えたメイド服姿の茅が、とことこと静流の脇を通って、台所の方に向かった。
 荒野は、
「……ほれ、お土産……」
 と、マンドゴドアの箱二つを、テンとガクに手渡す。一つは学校からの帰りに、荒野が持ち帰ったものの、残り。もう一つは、双子を回収にいき、この家に送り届けた帰りに、ひとっ走り取りにいったものだ。
 荒野が、
「今日は二度目だし、売れ残りを適当に包んでください」
 と注文すると、マンドゴドラのマスターは複雑な笑みを浮かべた。

 静流も良太も、野呂本家の英才教育組だった、というわけだ。野呂本家は、素質がありそう子供は、かなり早い段階で一カ所に集めて、徹底的に仕込む。そして、成人した後の行き先は、本人の意志を優先させ、当人がフリーになることを望めば、あっさりと手放す。それでも、なにかと優遇されるので、あえて野呂の為に働くこと選択する者は、少なくはない。
 また、良太のように「組織の一員」であることを選択しなかったが、その後の働きで名を馳せる、結果として「野呂」の名をアピールし、そのイメージを強くした者も、決して少なくはない……。
 テンやガク、茅や孫子などもその辺の事情には、真理通じてはいない、と思い、荒野は、炬燵に当たりながら、羽生に答える形で、少し詳細な説明をした。
「……で、こちらが、その野呂のお姫さまで……あのお兄さんが、傍流だけど見所があるってことで、本家で一緒に教育を受けた人、なわけか……」
 羽生は、素直に感心した。
「……ニンジャの世界も、いろいろあるんだな……」
「お……お姫様、というのとは、ぜ、全然違うのです……」
 静流は、弱々しく抗議する。
「本家の出だから、っていうだけで、大事にされる程、甘い世界ではないのです。
 それに……わ、わたし……これ、だから……」
 そういって、静流は、コツコツと、自分のサングラスを指先で叩く。
「でも……その、それでも……英才教育を受けたってことは……ハンデを跳ね返すだけの、凄い才能をもってたってこと……なん?」
 羽生が、何げない口調で、するいどい指摘をする。
「……近距離の、女帝……」
「……最速……」
 それまで会話に参加せず、借り物のパジャマ姿で濡れた髪の手入れなどをしていた、酒見姉妹が、同時に呟く。
「……はぁ……これで、二つ名の姉さんなのかぁ……」
 羽生譲が、楽しそうに静流の方をみた。
「最強の二宮と、最速の野呂……。
 師匠と並んで、当代の血統を代表する、術者といっても、いいかと……」
 楓が、深々とため息をついた。楓のいう「師匠」とは、当然の事ながら、荒神を指す。また、静流ほどの有名人ともなれば、楓のような下っ端にも、名前は聞こえてくる。
「加納様……この町、本当に……どうなっちゃってるんでしょうね……」
 加納荒野、二宮荒神、野呂静流……六主家のうち、三家の本家筋が、一度に同じ土地に住むことになる……なんて……考えてみなくとも、十分に、異常なことといえた。



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