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彼女はくノ一! 第五話 (183)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(183)

「……何を、他人事のようにいってやがる……」
 楓の言葉を聞いて、荒野が苦笑いをする。
「……長老の、秘蔵っ子……」
「……最強の、二番弟子……」
 酒見姉妹が同時にそういって、楓に視線を注いだ。
「……え? え? え?」
 他人に注目されることに慣れていない楓が、途端に、狼狽える。
「……生きる災厄……」
 ぼつり、と孫子が呟く。
「……実家にいる時、二宮荒神には、近寄るな……。
 敬して、遠ざけろ……と、聞かされていました……」
「楓……お前もな……その、生ける伝説に見込まれて、仕込まれているんだから……立派な有名人なんだよ……」
 荒野は、楓に向かってそういってから、そっとため息をつく。
 それから、
「……これだから、天然は……」
 とか、ぶちぶち口の中で呟いた。
「……意外と凄い奴だったんだな、楓ちゃん……」
 羽生は、素直に感心している。
「……お茶が、入ったの……」
 その時、台所からやってきた茅、テン、ガクの三人が、全員に暖めたカップを配り、ポットの紅茶を注いで回る。
「……あっ……」
「……これも……」
 一口、口をつけた途端に、酒見姉妹は、そういって絶句した。
「……け、結構な、お手前で……」
 二宮静流は、そういって、紅茶を注いだ者に向かって、頭を下げている。
 茶道か何かと勘違いしているのかも、知れない。
「……そちらの二宮さんも、見た感じ、あまり不自由しているようには見えないけど……」
 羽生が、指摘する。
 す、っと迷う事なく、紅茶が注ぎ終わったタイミングで手を伸ばした……ように、見えた。
「……あっ……。
 こ、これは……熱とか、音とかは、ひ、人様よりも、敏感に感じ取れる性質なので、近くにあるものや動くものは、大体、分かるのです……」
 そう説明することに慣れているのか、静流は、流暢に説明する。
「……それで、近距離の……」
「……ああ。
 近場では、実質、健常者以上……だという話だ……視覚以外の知覚は、かなり鋭いっていうことだし……」
 そう答える荒野とて、人伝に話を聞いただけ、なのだが……。
「……そ、それほどでも、ないのです……」
 静流は、紅茶のカップを傾け、「ん……おいし……」といった。
「こ、紅茶も、ちゃんといれると、おいしいのです……」
 どうやら、茅の紅茶に興味を持ったようだ。
「……それは、よかったの……」
 茅も、賛辞を受けて、まんざらでもないらしい。先程、静流のいれたお茶にかなり衝撃を受けていたから、なおさら、嬉しいのだろう……。
「……ね、ね……もう、ケーキ、いいかな……」
 ガクが、期待を込めて、誰にともなく、尋ねる。
「……いいけど……。
 お前ら、メシ食った後なんじゃないのか?」
「「「……別腹!!」」」
 テン、ガク、茅が、声を揃えた。

「……そういや、香也君は呼ばなくていいのか?」
 箱からケーキを取り出しながら、荒野が尋ねる。
「……甘いもの、苦手な方ですから……」
 楓が、答える。
「それに……それよりも、邪魔をされるのを、いやがるかと……」
「……それも、そうか……」
 香也が絵に取り組んでいる時の様子を思い浮かべ、荒野は一瞬、納得しかける。
「……それでも……」
 と……茅が、楓に向き直った。
「今日は、絵描きを呼んでほしいの……。
 頼みたいことが、あるから……」

 茅に即されて、楓がプレハブに香也を呼びにいく。
「……なんだ、頼みたいことって……」
 荒野が茅に尋ねる。
「絵描きに頼むのは、絵を描くこと……」
 茅が答えると、
「……ああ……あれ……」
 と、孫子も頷く。
「あれって……何なに?」
 ガクが、孫子に聞き返す。
「……元はといえば、あなたが作ったシステムでしょう?」
 孫子は、軽く眉を顰めた。
「……ボクが? あ。顔の、識別システム、かぁ……」
「……そう。
 汎用防犯カメラの量産体制も整ってきたので、ここいらで、茅の似顔絵を、香也様にリファインしてもらおう、ということでしょう……」
 茅が、こくこくと、頷く。
「……あの……話が、見えないんだけど……」
 酒見姉妹の一方が、恐る恐る、といった感じで、荒野に尋ねる。聞いてきたのが姉の方なのか妹の方なのか、識別できるものは、この場にはいない。
「……お前ら、佐久間現象がこっちを襲撃してきた件について、どの程度知っている?」
 荒野は、逆に聞き返し、姉妹が全く同じ角度で首をひねるのをみて、返事を待たずに先を続けた。
「……まあ、いい。
 とにかく、茅が現象の記憶を覗いてな、黒幕らしいやつらの顔を、見たんだ……」
「……って、それ……」
「佐久間の、能力じゃ……」
 酒見姉妹は、揃って絶句した。
「茅と、テンは、佐久間の資質を色濃く引き継いでいるようでな……他の二人も、部分的には継いでいるようだが……詳しいことは、まだ不明だ……。
 これから、育って行くに従って、新たに発現して行く、というパターンもあるだろうし……」
 そういって、荒野は、ちらりとガクをみた。荒野の視線に気づいたガクが、ガッツポーズを取る。
「……ま。
 将来が楽しみであり、怖くもあり、って所だな……鬼が出るか蛇がでるか……」
 いいながら、荒野は、ふと「そういや、佐久間の長からは、まだ連絡がないな……」と思い出した。
 茅たちに佐久間の技を仕込んでくれる指南役を派遣してくれるよう、要請して、思いがけず快諾してくれたのだが……もともと、ダメモトで頼んでみたことだし、向こうも、かなりの人手不足だという話しは聞いていたので、特に焦ることもない。
 そんなことを話している間に、楓が、香也を伴って戻ってきた。
 あまり風采の上がらない香也をみて、双子が露骨に失望した顔をする。
「……この子たちの顔を、見やすいように描き直して欲しいの……」
 茅が、ポケットの中からゴソゴソと折り畳んだ紙を数枚、取り出して、香也の前に広げる。
「……んー……。
 いいけど……」
 香也は、事無げに頷いた。
「どういう絵が、欲しいの?」
「いろいろな角度からみた顔とか……できれば、正面から見た時の顔と、横から見た時の顔、とか、できるだけ、いろいろなパターンが、欲しいの……」
 茅が、答える。
「……後、何歳か成長した時の想像図なんかも、描ければ……もっと、都合がいいの……」
「……んー……。
 分かった……」
 香也は、そう頷いきり、腕を組んで動かなくなってしまった。
「……香也様……。
 あの、どうかしましたか?」
 不審に思った楓が、香也に聞いた。
 こと、絵に関することなら……いつもの香也なら、即座に動き出す筈だった。
「……んー……。
 この子たち……女の子? 男の子?」
 香也は、そう疑問をぶつけた。
「……現状、このままをリライトするのは、問題がないけど……成長した姿を描くとなると、性別が分からないと……」
 香也はしばらく考え込んでみたが、「……ま、いいか。とりあえず、描ける所から……」と一人で結論し、スケッチブックを取り出して、しゃ、しゃ、と鉛筆を走らせはじめた。
「……この顔だと、正面から見た時は、こうなって……真横から見た時は、多分、こんな感じ……」
 とかいいながら、あっという間に、数枚の線画を仕上げてみせる。輪郭線だけの簡単な絵だったが、手の動きに迷いや滞りがないので、ものすごく早く見える。
 はじめて香也が絵を描くところをみる酒見姉妹が、目を丸くしている。
「……これなら、3Dデータ、起こせるかも……茅さん、これ、正確だと思う?」
 ガクが、香也の絵を指さして、尋ねる。
「……誤差は、少ないと思うの……ほとんど、問題にならないくらい……」
 茅も、ガクの質問の意図に気づいて、頷いた。
「……おにいちゃん。これ、髪の毛を取り除いたバージョン、描いてくれない? それから、各人について、男女の二パターンで、成長した時の予想図……そうだね、二歳刻みで、十年たったところまで……」
「……んー……。
 わかった……」
 香也は手を休めもせずに、いつもの調子で淡々と答え、「まずは、この子ね……男の子だった時の、成長パタン……」とかいいながら、二人の子供の、男女別成長予想図をちゃっちゃと描き続けた。
 酒見姉妹は、瞠目するだけでは足りず、口もぽかんと開いている。
 テンが、出来上がっり、香也がスケッチブックから引き破った紙を集めて、羽生の部屋に走った。早速スキャナで取り込んで、3Dデータとして生かすつもりだった。




[つづき]
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