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彼女はくノ一! 第五話 (187)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(187)

 何かと噂の酒見姉妹は、楓、孫子、ガク、テンがランニングから帰ってきて順番にシャワーを浴び、着替えて居間に集まるころ、ようやくのろのろと起き出して来た。
「……こんだけ人数がいれば、あと一人二人増えても手間はさして変わらないし、材料も、いつも余分に買ってあるから、よかったら食って行けば?」
 昨晩は夕食を断った二人だったが、今朝、羽生にそう勧められると、さすがに空腹をおぼえたのか、ばつが悪そうな顔をしながらも、楓と香也、孫子の三人は学校の制服姿、双子はパジャマ、羽生はどてら……といった、外見上、かなり変な組み合わせで、朝食を一緒に食べることになった。
「……今日は、午前中にお医者さんにいって……」
「買い出しも、人が増えない早い時間にいっときたいから、羽生さん、買っておくものあったら、家出る前にメモしておいて……」
 これは、ガクとテン。朝食の時、今日の予定を羽生に簡単に告げるのが、ここ数日の日課になっている。
 掃除や洗濯、買い物……といった家事に加え、ここ数日は、徳川の工場に出入りもしているので、楓や香也、孫子が学校に通っている時間帯も、ガクとテンの二人はそれなりに忙しい。
「才賀さんは、放課後は、徳川さんの工場に行くといってましたよねぇ?」
 楓がそう尋ねたのは、昨日、香也は、珍しく部活をせず、野外写生に出掛けていたからだ。
「……香也様は……今日は、どうするのですか?」
「……んー……。
 美術室で、昨日のスケッチを、整理しようと、思っているけど……」
 つまりは、通常の部活を行う、ということだった。
「わたしは、茅様のお供で学校に残りますから……では、一緒に帰れますね……」
 楓は満足そうな顔をして、頷いた。
「……ちょ、さ、才賀……さん?」
 双子の片割れが、露骨に狼狽えている。
「その……放課後、行く予定の、工場って……」
「学校での知人で、徳川という変人がおりまして……」
 孫子は、何食わぬ顔をして、説明した。
「この男と、新しい事業を開始するにあたって、必要な打ち合わせがありますので、立ち寄る予定です……」
 その言葉を聞いた途端……双子は、落ち着きなく顔を見合わせたり、視線をあらぬ方向にさまよわせたりしはじめる。
 無理のない話しではあったが……双子は、昨夜の一件以来、孫子に対して苦手意識を持っていた。
「……ね、ね……」
 孫子に話しかけたのとは、別の双子が、小声でそばに座っていたガクに話しかける。
「昨日、約束した工場って……まさか、同じ場所では……」
「……うん。
 同じところ。
 トクツーさんの、工場!」
 ガクは、無邪気を装って、あっけらかんと答えた。
「そこにね……玉木っておねーさんとか、その他、撮影班の人とか、いっぱい来て、ボクたちのこと撮影するの!」
「……さ、撮影!?」
「それ……聞いていないんだけど……」
 双子は、今や覿面に度を失っていた。
 二人でそんなことをいい合いながら、微かに震えはじめている。
「……あら?」
 孫子が、双子に向かって、にっこりと微笑んだ。
「わたくし……あなたがたが、喜んで撮影に協力することを、承諾してくださった……と、テンとガクから聞かされましたけど……それは、何かの間違いだったのかしら?」
「……ううん。
 それで、間違いじゃないよ……」
 テンが、声を張りあげる。
「……このおねーちゃんたち……昨日の夜、ボクたちとやりあいたいって、確かにいったもん。
 だから、ボクたち、慌ててトクツーさんとか玉木おねーちゃんに連絡して、話しを通したんだ……」
「……あら?」
 孫子が、実に芝居がかった仕草で、目をみはる。
「それでは……確かですわね。
 玉木の撮影には、わたくしも私財を投資する予定ですから、こんなつまらない所で躓いて欲しくありませんし……」
 その「撮影」とやらは……なんだかよく分からないが、孫子も一枚噛んでいるいるらしい……と知った双子は、ますます引き気味になった。
 しかし、孫子が係わっている以上……今更、前言を撤回したり約束をすっぽかすことも、できない……。
「……た、確かに、約束しましたぁ……」
「ちゃ、ちゃんと……午後三時に、その工場にいきますぅ……」
 気分は、ドナドナだった。
「かーわいそーなこうしー、うられていくよー」というフレーズが、双子の頭の中でリフレインしている。
 どうやら……悪質なトラップに、引っ掛かったようだ……と、ここに至って、ようやく双子たちも理解しはじめていた。
 楓、香也、羽生の三人は、そうしたやり取りには、「我関せず」を決め込んで、黙然と朝食をかき込んでいる。

「……そうそう。
 撮影も、いよいよ本格的になってきましたなぁ……」
 登校時、途中で合流してきた玉木は、そういって「にしし」と笑った。
「……キャストにも恵まれ、うちの放送部以外に、CGとか撮影で協力してくれる人たちも、ぼちぼち現れて……思ったよりも、本格的な内容になりそうな予感……」
 玉木の説明によると、一部、外部に頼んだ造形関係の人たちから、口コミで「シルバーガールズ」の噂が広まっていて、近県で自主制作をしている人たちが、何名か、協力を名乗り出てきている……と、いう。
 多くは大学生やフリーターだが、中には、ちゃんとした社会人もいる、という話しだった。
「……蛇の道は蛇、マニアの道はマニアに通ず……」
 そういって玉木は、ケタケタ笑った。
「……お金の方は、もう少し待ってくださいね……」
 ご機嫌な玉木に向かって、孫子は報告した。
「今、手持ちの、お金になりそうなアイテムを、オークションに出している最中ですから……。
 もう少ししたら、落札して現金化できると思います……」
「そっちは、ゆっくりやてください……。
 今のところ、手弁当で何とかいけていますから……。
 一番、お金を食いそうだった特殊効果とか画像処理は、あのお子様たちが、いいソフト開発してくれる、とかいってたし……」
 玉木がいう「あのお子様たち」とは、テンとガクを指す。玉木は「あの気難しい徳川が、この二人のソフト開発能力を認めている」という一事をもつて、全幅の信頼を置いている。
「……そういう作業なら、茅も協力するの……」
 珍しく、茅が自発的に玉木に話しかけた。
「……おー。
 ありがとー、茅ちゃんー……。
 愛しているよー……」
 茅が特撮物のファンであることを知らない玉木は、軽く受け流した。
「……今までに編集した映像は、予告スポットとして、今日からオンエアするからー……」
 ネット上と、商店街に設置されたディスプレイで……という、極めて限られた、ローカルな場所でしか放映されない訳だが……最初のうちは、それでいい……と、玉木は、思っている。
 クオリティ的には、かなり自信を持てる出来になっているので……最初のうちは小出しにしていっても、徐々に口コミで話題になるだろう……と、計算をしていた。
「……ノリちゃんも、今週末には、一足先に帰ってくるそうでし……」
 楓が、そう付け加えた。
「真理さんは、もう一週間、いろいろと回ってくるそうですが……」





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