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彼女はくノ一! 第五話 (188)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(188)

 学校が、以前よりもざわついているような気がした。
 学校全体が、ということではないし、それに騒がしくなった……というのとも、ニュアンスが、違う。
 活発になってきた……というのが、一番、しっくりとくる表現だろう……と、香也は、思う。

 例えば、昼休み。
 給食を食べ終えると同時に、パソコン実習室に向かう生徒が、増えた。以前から頻繁に出入りしていた、堺雅史、柏あんな、楓や茅……のようなパソコン部員や、正式な部員でなくとも、半ば関係者といっていい、以前からの常連以外の生徒が、入れ替わりたちかわり、パソコン実習室に出入りしはじめている。
 一番多いのが、自主勉強会の執行部(という呼称が、徐々に定着し始めていた。もちろん、部活で同好会でもないし、また、正式な生徒会活動の一環でさえない。しっかりとした組織ではないが、現在の所、前生徒会長の佐久間沙織がトップとみなされている)に掛け合って、勉強や進学の相談に行く者。それ以外にも、ボランティア活動への登録や資料の閲覧……とか、しっかりした目的がある場合、あるいは、はっきりとした目的はなくとも、なんとなく様子を見るために、定期的に足を運ぶ生徒も、多い。
 今週に入ってから、毎日のように行われている自主勉強会の方も、当初、空き教室を使用して行われていたものが、稼動しはじめてわずか二、三日で希望者増大により、用意した教室の収容量を越えてしまい、結果、あぶれた生徒たちが、そこいらの教室を適当に使用する……という風景が、日常化している。
 そこでは、たまたた居合わせた上級生が、例え初対面であっても下級生を指導する……という流れが発生しはじめており、それまで学年が異なるせいで面識のなかった生徒同士が知り合う機会も、増えた。
 また、自分たちの学習のためにまとめたノート類を「資料」として自主勉強会に提出する、ということも、日常的に行われるようになっている。多くはノートやレポート用紙に、授業の教科書、参考書の内容を手書きでまとめたものだが、パソコン実習室に持っていけば、その場でスキャナで取り込んでくれる。取り込んだ内容は、ネットに接続できる誰にでも参照でき、注釈や質問をつけ、わからない部分の解説を求める……ということもできるようなシステムも、学校のサーバ内に構築されつつある。そうやって重複する内容のノートを参照し合う環境が整備されたことで、「要点を的確にまとめていて、内容を理解しやすいのは、誰のノートか?」ということを競い合う、ということも、徐々に行われるようになっていた。
 ただ単に「いい成績を」とかいう即物的な効果のみを求める生徒も少なからず存在したが、それ以上に多かったのは、そうしたシステムを「コミュニケーション・ツール」として利用し、ゲームや新手の遊びに参加する生徒たちの方が、数の上では優勢だった。
 それらのシステムを開発したのは、茅や楓、徳川をコアに、パソコン部員たちが周りを固めた有志の生徒たちで、パソコン実習室でともにすごす時間が長く、打ち合わせをする機会も多い放送部員や自主勉強会執行部の生徒たちとは自然に中が良くなり、連帯意識が生まれはじめている。
 パソコン実習室は、今や、所属や学年を越えた生徒たちの溜まり場として機能しており、そこに行けば、役にたつ情報や役に立たない噂話にありつけるし、仕事を持つ生徒たちに何か簡単にできる用事を言いつけられて、それを手伝うこともある……。
 そんなわけで、香也のクラス内でも、半数以上の生徒が、時間がある時にふらりとパソコン実習室に足を向け、そこで得た何年何組の生徒が誰それとくっつきそうだ、とか、また玉木たちが何かたくらんでいるらしいぜ、おれ、今、変な格好して棒振り廻している女の子映像、玉木が学校のパソコンで編集しているのみた、とか、うちのクラスの加納さん、どうやら、佐久間先輩のお気に入りらしいな、とか、有働先輩、いよいよごみ掃除作戦、今週末あたりに発動するらしい、とか、有用無用ごたまぜの情報を教室に持ち帰っては、級友たちに吹聴して回る……という光景も、珍しいものではなくなっている。

 香也自身は、そういった動きにあまり興味はないし、用事がなければパソコン実習室に足を運ぶこともないのだが、その香也の耳にさえ、さまざまな噂が勝手に飛び込んでくるわけだから、やはり生徒全体が少しずつヒートアップしているのだろう……と、香也は思う。
 香也自身の変化はといえば……時折、休み時間に来客があり、「こういう絵を描いてくれ」というリクエストをもらい、その通りの絵を仕上げる……という行為が加わったことに以外に、学校生活に目立った変化はなかった。いや。そもそも、楓たちがこの土地にくるまでは、香也に声をかける生徒さえ、ろくにいなかった状態だったわけだから、それはそれで大きな変化だった……というべきなのかも、知れないが。
 こうした「依頼」は、はやり玉木自身が足を運んで直接伝えに来ることが多かったが、何か用事があって来れない時は、代理の放送部員が来て香也にオーダーを伝えにくる。
 誰がやってこようが、香也の対応と態度は変わることなく、「……んー……」とひとしきり唸ってから、その場でスケッチブックを広げ、オーダーされた通りの絵を即座に書き上げて、相手に手渡す。
 香也の絵の腕、については、三学期に入ってから、香也のクラスでは周知のものとなっている。
 それ以前、香也は、クラス内でもかなり存在感の薄い生徒で、いや、存在感の薄さは今現在もまったく変わらないのだが、現在ではそれに加えて、「絵がうまい」、「何故か美少女が寄ってくる」という評判が付加されている。特に、同じクラスの楓と二年生の孫子と同居しており、その二人にべったりと言い寄られていることは、この時点では隠しようもなく知れわたっており、そのせいか、香也に話しかける男子生徒は、堺雅史などの例外を除くと、ほとんどいなかった。
 女性関係の嫉妬ややっかみも多少はあったのかも知れないが、それ以上に、香也のように「一芸に秀でている」というタイプの存在は同学年はおろか、全校的にも珍しく……要するに、嫌われているとか疎まれている、というよりは、「一目置かれている」というニュアンスで、香也は、級友たちに「あいつの邪魔はできるだけしないでおこう」的な目で見られ、好意的に放置されていた。
 二学期までの香也と現在、クラス内での香也のポジションは表面上、変わらないようにも見えたが、その内実をみると、「はじめから意識されていなかった」前者に比べ、現在は「香也の存在と人となりがある程度理解されており、その上で、そっとされている」ということになり、意味合いがかなり変化している……のだが、香也自身は、そうした周囲の微妙な変化には、あまり興味も関心もない……ように、見えた。
 そんなわけで、時間があれば香也のそばに寄って来る楓を除けば、同じクラス内で香也に声をかけてくれるのは、堺雅史と柏あんなの二人、それに、牧本さんと矢島さん、くらいなものだった。
 堺雅史は例のゲーム関係で話すことが多いし、それを別にしても、同じインドア派同士ということで、香也とは馬が合う。牧本さんと矢島さんは、時折、休み時間などに持参した漫画本やアニメ、ゲーム関係の雑誌を見せて、「このキャラとこのキャラのツーショットを描いてくれ」などといってきて、香也は、例によってその場でその要望に応える。この二人は楓とも仲が良かったが、香也のことは、他のクラスメイトとは違った意味合いで尊敬しているらしかった。




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