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彼女はくノ一! 第五話 (192)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(192)

 テンとガクが徳川の工場に到着した時、時間が早かったせいもあって、徳川とか玉木とか放送部の人たちは、まだ到着していなかった。
「あ。ども」
 代わりに、テンとガクを出迎えたのは、田中君、佐藤君、高橋君の三名だった。鈴木君は大学に講義があるとかで、今日は来ていない。
 この三名は、「どうせ暇でしょ」ということで、すっかり放送部と孫子、テン、ガクたち共用の雑用係と化していて、本人たちも、別段、それを嫌がる風でもない。
 今日も、撮影の手伝い、ということで、喜々として呼び出しに応じている。
 昨日、孫子と一緒に、商店街へ挨拶まわりにいった後、こっちの工場にも寄って、放送部員たちにビデオカメラの扱いをレクチャーされた、ということだった。
 テンやガクの立ち回りを、近場から撮影するとなると、一般人のカメラマンでは動きに追いつけないし、それ以前に危険すぎる。また、田中君たちにとっても、自分たちの能力が人の役に立てることを喜んでいる風でもあった。
「……今、二十名くらいの、多分、一族の人たちが気配を隠さないで、ボクたちの周りをこれ見よがしに付きまとってたんだけど……」
 三人の顔を見るなり、挨拶も抜きにして、テンが、一気にまくしたてる。
「……そういうことする理由って……何か、思いつく?」
 三人は顔を見合わせた。
「それ……気づかれないように尾行してた訳ではないんですよね?」
 おずおずと、田中君が問い返した。
「うん。
 どちらかというと、ボクたちに気づいて欲しいみたいだった」
 テンが頷く。
「おにいさんたちみたいに、挑戦してくるのなら……なんらかの形で接触してくると思うんだけど……それも、ないし……」
 ガクも、首を捻った。
「……挑戦でもない、尾行でもない……。
 とすると……」
 佐藤君も、考え考え、自分の推測を口にする。
「……牽制、かなぁ……。
 二十名くらいのチームってことは……これだけの人数、動員できるんだぞって脅し半分の……」
「……脅し半分、にするくらいだったら……直接、接触してくるんじゃないか?」
 田中君が、それに反駁する。
「だって、牽制……っていたら、抑止力ってことだろ?
 実効的な戦力を持いるぞ、ってことをアピールできなかたら……牽制になんないじゃん……」
「……お前ら……そいつらを、みて……」
 高橋君が、テンとガクに尋ねた。
「やばいな、とか、危機感とか……そういうもん、感じた?」
「ううん」
「全然」
 テンとガクは、即座に首を横に振る。
「……だって、相手がおにいさんたちクラスだったら、二十人いてもそんなに変わらないよ……」
「むしろ、あの中に、少しくらい強い人、混じってないかなぁって、わくわくする……」
「……ほら。こういうやつらだ。
 脅せばびくつく、どころか、戦意を高揚させるような相手に……牽制、はないだろ……」
 高橋君は、肩をすくめた。
「火に油を、注ぎこむようなもんだよ……」
「……それとも……二人のこういう性格が、正しく伝わっていないのか……」
 佐藤君が、腕を組んで考え込む。
「それは……無いんじゃないか?」
 田中君が、佐藤君の仮説を一蹴する。
「こっちの情報、かなり早くから、リークされていたし……だって、おれたちに伝わってくるくらいだぜ? あれだけのチーム組めるほど影響力のあるやつらが、知らない筈はないだろうし……」
 暗に、「自分たちは、一族の中ではまったく影響力を持たない下っ端だ」と認めているような発言だったが、特に鬱屈した様子でもなかった。
 彼らは淡々と、自分たちの地位を、「現実」として受け止めているらしい。
「……じゃあさ、じゃあさ……」
 ガクが、妙に嬉しそうな顔をした。
「あの人たち、逆に挑発して……全員、ぶちのめしちゃっても、いいかな?
 全員の戦意を喪失させてしまえば、背後にいる人も、なにんらかの動きをするよね?」
「はやるな、ガク……」
 テンが、冷静にいなす。
「怪我が治っていろいろ試したいのは、わかるけど……せめて、玉木さんたちが揃ってからにしようよ」
 止めるのではなく、「あせって撮影の機会をふいにするのがもったいない」ということ、らしかった。
「あの……あの人たち、締め上げても、別に構わないよね?」
 最後の確認は、ガク以外の三人に向けたものだ。
「構わないっていうか……そういうこと、おれたちに聞かれても……」
 三人は、顔を見合わせる。
「常識で考えれば……多人数で、たった二人の女の子をつけまわすようなやつらは、ぶちのめされても構わない……」
 その中で、最年少の高橋君が、妙に断定的な口調でいった。
「……ちょっ……」
 その高橋君の言葉に、田中君が軽くのけぞる。
「おま……少し、先走りすぎだぞ……。
 こっちの二人だって……一般論を土台にして語っていいほど、軽い存在ではないし……」
「一番確実なのは、加納さんに指示を仰ぐ、ということですが……」
 佐藤君が、慎重な常識論を唱えた。
「……ボクたち……かのうこうやの部下でもなんでもないんだけど……」
 即座に、ガクが口唇を尖らせる。
「じゃあ、こういうのは、どう?
 玉木のおねーちゃんたちが、学校からこっちについたら、つけてきた人たちに声をかけて、工場内に誘いこんでみる。
 それで誘いに乗るようだったら、撮影しながら、戦闘開始。
 誘いに乗らなかった、それまで……」

 楓が靴箱の前までたどり着いた時、茅からのメールが着信した。
荒野の靴を、調理実習室に持って来て。
『……あっ……』
 楓自身も、失念していたことである。
 もちろん、上履きでも外に出ることは可能だが、激しい運動をするのが前提なら、足回りはしっかりした方がいいに決まっている……。
 楓は、荒野のクラスの下駄箱の前に移動し、荒野の靴を捜し当てると、それを抱えて調理実習室に向かう。すぐに反対側から来た茅と出くわし、二人して「はい!」といいあって、荒野のスニーカーを手渡し、すぐに踵を返して、楓は一階に、茅は調理実習室に向かった。
 二人とも、気配を絶って移動したので、廊下を走っていても見とがめる者はいなかった。
 靴を履き替えて、改めて外に出ると、調理実習室の窓から飛び出した荒野の姿がみえた。
 楓は、それを追いかけ、荒野に声をかけると、「孫子に武器を届けろ」という意味のことを命じられた。茅がいったことと同じ内容だった訳だが、打ち合わせをする時間もなかったので、二人して同じ判断を下した、ということになる。
 荒野はすぐに楓と別れ、テンとガクが数十人の刺客に囲まれている、という、徳川の工場に向かった。
 残された楓は、孫子に、現在位置を確認するための電話を入れることにした。




[つづき]
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